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      屏風(989.6m)

大川林道入口から望む屏風山

 1/25000地形図ポンネアンチシ山」

滝ノ沢川出合に車を置く
樹林帯からは屏風山が姿を覗かせる
余別岳とポンネアンチシ山も見える
ガニマナコも同じ目線に姿を現す
ガニマナコも同じ高さで姿を現す
いつも元気なKo玉さん
主稜線まであと一息、頂上も手が届きそうな位置に

この時期の積丹の山々は“春たけなわ”ならぬ“春山たけなわ”といった感じで、スキー良し、ワカン良し、ツボも良しといった具合に、最も身近に春山登山を楽しませてくれる山域である。特に半島先端部に位置するこの付近には豊富な雪渓が遅くまで残っていて、海の青さとのコントラストが実に美しい。原色に近いこの光景はやがて日を追うごとに白色から淡い緑色へと変わり、北海道の秋の風景とは全く正反対の彩を見せてくれる。最近、話題となっている地球温暖化問題であるが、残念ながら今回の山行でも、微妙にその兆候が感じられた。同じ時期に何度も付近の山々を訪れてきたが、アプローチとなる大川林道の積雪量がこんなに少なかったことは一度もなかった。年によってのばらつきは当然のことだが、明らかに積雪量も気温もいつもの年とは違っている。我々山ヤは縮小して行く積雪には特別の悲衰感を持ち、けっこう敏感である。この日の様子はGW一歩手前といった感じで、季節がひと月くらいは進んでしまったようにさえ感じられた。この状況では今年の沢シーズンの訪れは、意外に早いかもしれない。

半月ほど前に大川林道を偵察した折には、入口付近は中途半端な積雪で埋まっていて、滝ノ沢川出合の林道分岐まで入るのは難しく感じられた。ところが、前日に逸早く現地入りしたKo玉氏によると林道の積雪状況は全く問題なしとのこと。予定していた寿都・天狗岳を急遽取り止め、前々から気になっていた屏風山へと山域の変更を決める。林道上の雪渓はまるで無くなっていて、屏風山の雄姿を林間に眺めながら車を進めて行く。所々に春先特有ののり面崩壊による角礫岩が散らばっているが、走行にはさほど影響はない。到着した滝ノ沢出合いには既に先客が一台駐車している。スキーキャリアは開放されていて、彼らは足回りにスキーを選んだようである。ポンネアンチシか珊内か、付近の素晴らしさはWeb上でも広く紹介されていて、以前に比べ入山者は確実に増加しているようだ。

 林道からはワカンを付けてと思っていたが、気温上昇前とあって雪面は硬く、ツボでも十分である。川の出合いとなっている149m標高点のある橋からは屏風山への取付き地点を目指し、急登を繰り返しながら川沿いに進む。途中、川が大きく蛇行して行く手を塞いでいるため、急な沢形を利用して尾根上へと抜けることにする。ある程度登ってからはトラバース気味に進み、コンタが広くなっている平坦な地形へ出る。目的の取付き地点までは尾根また尾根といった感じであるが、冷静に考えれば、せいぜい落差10〜20mくらいのアップダウンである。樹林上には雪渓をまとった迫力ある屏風山の姿が迫っている。ふと見ると、どこにでもある雪面の凹み。獣の感を持つと言われているKo玉氏の解説によると、一週間くらい前の大パーティのスノーシューによるものとのこと。改めて見てみると確かに我々の目指す方向へと続いているようにも見えてくる。この山は意外に登られていて、皆同じルートを辿っているのかもしれない。

二本目の尾根は枝尾根で、そのまま屏風山への登りとなる。途中からは傾斜が増し、キックステップを効かせて、どんどん標高を上げて行く。天候にも恵まれ、予想外の快調さに、700m以上の全山登頂を目指すKo玉氏は、間違いなく彼がまだ登っていない珊内岳登頂をも視野に入れてしまったようだ。膝の故障中で無理は出来ないと分っているチロロ2さんはそんな空気を察してか、逸早く屏風山での待機を申し出る。私としては、いきなりの申し出であり、思わず断るが、珊内岳登頂への可能性もついつい考えながら、登る速度も自然と増して行く。コンタ580mで一旦傾斜が緩み、主尾根上となる。一息ついて振り返ると、山並が地平線まで続き、まるで3D映像でも見ているかのような光景が広がっている。その光景は一息つく度ごとに高山的なものへと変化し、さらにダイナミックな広がりへと変わって行く。コンタ720m分岐点で左に方向を変えると目指すピークが現れる。吸い込まれそうな青空に映える白いピークは、直ぐにも到着しそうな感じであるが、まだまだである。左方向にはコンタ1000m、通称:赤石山が大きく白い姿を現している。

この山の語源となった「屏風」は頂上西側の岩壁か 頂上は晴天、360度遮るものはない

尾根の詰めは、雪庇を左から回り込んで主稜線上へと上がる。今まで見えなかった日本海や既に雪が融けて黒々とした珊内周辺の山々が、まず目に飛び込んでくる。その中には痩せて険しい鉞山の姿も見られるが、ここの角度からではどこといった特徴は見られない。鉞の刃そのものといった見応えのある姿は、やはり余別岳付近から俯瞰した時のものが一番である。また、先日登った大天狗山も見えるが、白い突起といった程度で、広がりも険しさも何もない。さて、目指す屏風山である。標高差こそないが、西側は切り立った崖となっていて、これがこの山の語源かといった感じで姿を現す。屏風の上へ上がるには最後の急斜面を登りきらなければならず、先導する二人はなぜか私の到着を待っている。

雪庇を踏み抜かぬよう、雪面上に続く小動物の足跡を追うように登り詰め、最後は緩い斜面から頂上に飛び出す。頂上はグラウンドのような広い雪面の高まりで、到着した地点は隅ではあるが一番高く、三角点もこの位置でほぼ間違いないだろうと思われる。雪面の向こうには通称:ガニマナコ(積丹沖の漁船から付近を眺めると、カニの目のように見えるらしい)と呼ばれている二つの岩峰が頭を覗かせている。両岩峰をつなぐ痩せ尾根の右側には雪庇が残っており、左側は地形図上で崖マークとなっている。珊内岳へはこの難所を通過しなければならず、最初からの計画であれば現地まで行って様子を見るところだが、そもそもは計画外の話しであり、無理をしても仕方がないとの結論となる。

 改めて頂上ビールで無事の登頂を祝う。それにしても、山頂からの眺望は余別岳やポンネアンチシ山、積丹岳、泥ノ木山など、半島部の大方の山々が手に取るようだ。晴天下のこんな光景を眺めていると、屏風山がどこのどんな山よりも素晴らしい山に感じられるから不思議である。

 下りは一気である。温暖化とはいってもやはり三月であり、気温の上昇と共に腐りかけてきた雪面での最後の一手はやはりワカンやスノーシューの登場であった。ただし、陽の射す林道にはふきのとうが、空いた沢の周辺には水芭蕉もちらほら見られた。(2008.3.30)

【参考コースタイム】 滝ノ沢出合 P 7:15 尾根取付き 8:30 → 主稜線 10:30 → 屏風山頂上 10:50、〃発 11:20 尾根取付き 12:05 滝ノ沢出合 P 13:20  (登山道ルート;上り3時間35分、下り2時間)

  【メンバー】Ko玉氏、saijyo、チロロ2

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