<戻る

       札幌岳(1293.0m)…ガマ沢から

 1/25000地形図「札幌岳」「定山渓」

林道入口から歩くのが無難なところ 定山湖を渡るが、入渓地点はまだ先
入渓地点で釣りが始まる。私とチロロ2さんは一足先に出発 私が吊り上げたイワナ。撮影後、川へ戻ってもらう

  ガマ沢については以前から興味があったが、今回が初めての遡行である。豊平峡・定山湖へ下る林道は入口で施錠されていて、開いてる場合でも閉じ込められたという話は何度か聞いている。そんなこともあって、我が家からはほど近いにもかかわらず、なかなか計画実行とはならなかった。しかし、よく考えてみればアプローチとなる林道は歩いたとしてもたかだか5〜6kmくらいのもの、愛犬の散歩で毎日4〜5km歩いていることを考えれば、恐れる程の距離ではない。今年の沢初めを躊躇している時にmarboさん(大好き!Mt.Onne管理人)から何処かへ行こうとの誘いがあり、とりあえずは近間ということでこの沢に決定となる。私としては、札幌岳は先月にも夏道登山で踏んだばかり、距離感をつかんでいるだけに入りやすかったというのが本音である。

 集合場所である札幌岳登山口駐車場へ行ってみると、既にハーネスを付けた大人数のパーティと出会う。marboさんが尋ねたところ、やはり彼らもガマ沢とのこと。ガマ沢は今や人気の沢となっているのかもしれない。この時期“初級の沢”として無意根山の白水沢川が定番となっているが、距離が長いうえに中岳との踏み跡もかなり怪しくなってきており、利用者は徐々に遠のいているようである。こちらガマ沢は白水沢よりは短く、下りも楽だ。ただし、Web上の昨年の記録によれば、源頭付近でヒグマに遭遇したというのがあり、小心者の私としては少々びびっていた。先行する彼らはクマ避けになってくれるだろう…私の本音を言えばこんなところで、彼らには悪いが内心ほっとした。

核心部のF2…この手前の左岸に巻きルートもある
この沢にはナメが多く、美しい景観を作っている
プールのあるF3…ここで主だった滝は終了する

  林道ゲートに彼らの車はなく、開いた林道の奥まで入って行ったようだ。我々は前例の轍を踏まぬよう、ゲート前からのスタートとする。ぐんぐん下って行く林道は帰路には通らないので、心理的にはそれほど苦にはならない。一年間で最も陽が長い今の時期、時間的にもたっぷりである。ゲートへ向かう車中の会話で冗談半分のように直登沢が話題となったが、この面々を考えればコマが出ても決しておかしくない話である。それは藪ヤの流儀であり、今流行の差別化戦略にも適っている。何より先行パーティと一線を画する山行が現実のものとなり、頑張り具合によっては二時間近く出遅れてスタートした我々にも先陣を切るチャンスが出て来る。首尾良く成功すれば、そんな痛快さはこの上ない。競ってもしょうがないと言えばそれまでだが、藪ヤのちっぽけな見栄とはこんなものである。

入渓地点でmarboさんがフライ・フィシングの準備を入念に始める。仲間を裏切るようだが、良かった!というのも本音。我々“地図がガイドチーム”にとっては沢初めであり、不安度にすれば100%である。フライを楽しむmarboさんとキンチャヤマイグチさんを尻目に、恐る恐るのスタートを切る。彼らは速い、そのくらいのハンデイはあって然るべきと思っていた。流れの底の岩は意外にヌメリ、そのためかフリクションが今一信用ならない。思うように足が運ばないのには参ってしまった。何度か後を振り返るがこれも形だけ、追いついて来ないことには内心ほっとしていた。それでも、いつまで経っても姿が見えないのでさすがに心配になって大休止とした。

 魚止めの滝。この先に魚影は見られなかった  

 息せき切って追っかけて来たmarboさんによれば、彼も竿をしまってあわてて追っかけてきたとのこと。さすがに釣りをしていてはなかなかカメにも追いつかないようである。それでも、休憩しながらも釣り糸に疑似餌を付けて流している。であればと私も遊ばせてもらうが、なんと20cmくらいのイワナが竿もないのに簡単に食付いてきた。これは凄い! こんな体験は久々である。もっともフライフィッシングはその時期や場所に合った疑似餌次第とのこと。時や天候も考えなければならないようだ。このあたりはその道ならではの奥深さがありそうだ。イワナには川へと戻ってもらい再びスタートとなる。

 案の定ではあるが、地図がガイドチームは直ぐに遅れ始める。それでも澱みの多いこの沢ではmarboさんもキンチャヤマイグチさんも疑似餌を流してそれとなく時間調整をしてくれている様子。途中で車中の会話が蒸し返される。さすが藪山愛好メンバー、それぞれが意識しているのだろう。私であれば一番手前の南西面直登沢が効率的で良いと思うが、それをやってしまっては別にガマ沢でなくてもよくなってしまう。結局、marboさんの意見により、核心部を過ぎたあたりが出合の南東面直登沢に決定となる。marboさんの藪心には完全に火が付いてしまった格好だ。もともとひょうたんなど最初から在って無いようなもの、我々のコマは何時でも自由奔放である。

 出合の小沢を見落とさぬことへと主眼が移り、遡行の醍醐味ともいえる核心部通過の興味は全く影を潜める。当然と言えば当然だが、有名どころともいえるガマ沢では、どこのサイトでも主だった滝は写真入りで全て紹介されており、つい解答を見て臨んでしまった私としては未知という意味でのこの沢の興味は最初から薄かった。ネット時代の弊害とはこんなところにもあるようだ。それでも、この沢唯一のゴルジュでは気持を新たにする。登攀系のmarboさんは右岸をへつって上部へと抜けるが、これはWeb上には載っていない。しっかりと動画に記録、我々は抜け道へと回る。そんなこんなで徐々に沢床にも足底が馴染んで来た。私の沢初めとしては上々のスタートといえる。

 札幌岳頂上と金麦

次のプールを持った大滝? ここの動画も滝の水際から大迫力で納涼用にゲット、上部へと上る。皆が待っていてくれたのかと思いきや、小沢の出合であった。大きく右に方向を変えていた地形は確認済み。キンチャヤマイグチさんが階段状を上がって沢の様子を見に行くが、入ってすぐに藪が被っているとのこと。この時点では南面の直登沢であると信じて全く疑いはなかった。ところが次に現れるはずの南東面の小沢出合まで進んでみても、チョロチョロと藪から水が流れ出ている程度、これではない。さらに進むと逆側から小沢が一本現れた。ここで行過ぎたことに気が付く。考えてみれば、先ほどの階段状の小沢出合が正解だったようだ。marboさんは納得いかない様子で地図を眺めているが、さすがに戻ってまで藪漕ぎをする気にはならず、時既に遅しの感があった。

 980m二股でなぜか先行パーティが休憩している。彼らの目的は初心者に沢の入門を行っていたようである。我々はこの小沢から縦走路へと抜けるだけだ。諦めきれないmarboさん、小尾根を何本乗り越えてでも直登沢へ向かおうと提案してくるが、ここまで来てしまっては縦走路の方が遥かに近いし、そんなルートは正気の沙汰ではない。もっとも正気の沙汰ではないルートに粋を感じるのも藪ヤの特徴といえば特徴で、当然といえば当然である。最後はほとんど藪漕ぎすることもなく縦走路へと飛び出す。クマの気配などまるで無く、またしても自分の頭の中に恐ろしい人食い熊の亡霊を作ってしまったようだ。今年もそろそろ“臆病風”から卒業しなければ… つい反省せずにはいられないこの日の山行であった。(2012.7.8)

【参考コースタイム】林道入口 6:45 入渓地点 8:15 → 990m二股 11:50 → 札幌岳頂上 13:40、〃発 14:20 札幌岳登山口 16:40     (行動時間 9時間55分)

メンバーmarboさん、キンチャヤマイグチさん、saijyo、チロロ2

<最初へ戻る