札幌岳(1293.0m)…冷水沢コース
|
![]() |
1/25000地形図「札幌岳」「定山渓」
朝に夕にいつも目にする札幌岳だが、この山に登るのは8年ぶりである。8年前は1月の特に寒い日で、冷水コースをスキーで登っている。その前にも何度かスキーでは登っているが、登山道を歩いて登るとなると実に28年も前のことになる。山岳会に入会した年の新人歓迎会と清掃登山がこの山で行われ、山岳会の楽しさというものを初めて知ったのがこの山であった。当時は二十台の後半でまだまだ若かったが、山の経験が少なかったこともあって、頂上への道程もかなり遠いものに感じられた。人生でその倍もの年月を積み重ねた現在、おそらく当時の体力には到底及ばぬだろうが、逆に札幌岳は遠い山ではなくなった。その間、数々の山々を登り続けてきたせいか、この山の規模と自分の体力との相関関係が潜在的に理解できるようになったからであろう。山は年齢と共に遠くなるとよく言われるが、この辺の関係さえ理解していれば決して遠くはならないのも山である。
![]() |
登山届けを出す小屋 |
![]() |
この時期はニリンソウが美しい |
![]() |
針葉樹林の中を進んで行く |
新緑が眩しい季節へと衣替えして、冷水沢沿いに続く登山道のかたわらにはニリンソウが咲き乱れていた。つい先日だが、このニリンソウを食べようとして、間違ってトリカブトを食べてしまい、二人が死亡するといった事故が報道されていたが、私も旬の野草を食したい気持は十分に理解できる。四季折々それぞれの空気を五感いっぱいに感じることが出来る楽しさは生きている証でもあるからだ。ただし、間違ったものがトリカブトでは少々相手が悪かった。花が付いていればそんなことにはならなかったのだろうが、若葉の頃であれば区別が付きづらいらしい。食べるのであれば花が咲く今の時期の方が美味しいとも言われている。ともあれ、私としてはこの花は食べるよりは見ている方が良い。この白い花に囲まれながら歩く沢沿いの道は、豊かな自然に囲まれた大都会・札幌ならではの贅沢さと言えるからである。
登山道は途中で林道を横切って続くが、この林道は頂けない。冷水沢はエンビ管の中を潜っており、せっかくの清涼感漂う清新な雰囲気もここでぷっつり途切れてしてしまう格好だ。情報のない奥深い藪山で出くわす林道にはほっとさせられることもあるが、自然をゆっくり楽しみたいこんな山行では出来れば出てきてほしくない代物といえる。登山者の気持を率直に書けばこんなところだが、8年前の山行ではこの林道を利用してここから尾根筋にルートを変えている。白一色の積雪期であれば全く気にもならない程度のものということだろう。
![]() |
![]() |
冷水沢沿いに登山道は続く | 回りの景観にマッチした冷水小屋 |
![]() |
![]() |
頂上台地上には豊富な雪渓が残る | 札幌岳頂上は展望が良い |
登山道は右岸側を高巻き、沢を渡って左岸側から冷水小屋へと続いている。深い森林の中に建っているこの小屋は、周りの景観としっかりマッチしていて貫禄さえ感じられる。この冷水小屋は近年少なくなった札幌近郊の貴重な“生きている小屋”の一つである。昭和27年に建てられて約60年にもなるが、北海学園大学の適切な管理のもと一般登山者にも一夜の宿を提供している。ここに小屋があるということでの登山者の心理的な安心感は大きく、札幌岳という山自体を身近で登りやすい山としているようだ。登山道はこの小屋の後から尾根筋へとルートを変えて急登となる。チロロ2さんによれば“心臓破りの登り”と言われているとのことだが、それほど大袈裟なものでもない。要は登頂タイムを意識しないことである。
残雪が豊富に残る無意根連山の左側には後方羊蹄山も雲間から姿を現し、ついそれに見とれつつ斜面を横切るように進んで行と頂上台地上の広い笹原の中の一本道となる。残雪が豊富に残っているため、登山道は春の小川のような流れとなっている。我々はスパイク長靴を履いてきたこともあって、そのまま流れの中を進むことができるが、行き交う登山者は軽登山靴、これでは効率が悪いし、疲れも倍増しそうだ。日帰り登山=軽登山靴といった“間違った常識”が未だに登山界では支配的なのだろう。特に、踏み抜きそうな雪渓を恐る恐る下って行く登山者は、見ているだけでこちらの方が疲れてしまいそうだ。軽登山靴がその軽快さを発揮するのはやはり山開き以降ということになるだろう。
頂上は意外に開けた展望台であった。大きく開けた眺望の中では、漁岳初め支笏湖周辺が特に良い。この周辺は直近の山行で歩き回っていたこともあって知らず知らずに思い入れが深くなってしまったようだ。8年前に訪れたこの頂上はあいにくのホワイトアウト、こんなに素晴らしい展望が広がっていたとは知らなかった。この時の帰路では北西風の向かい風をまともに受けて四苦八苦した記憶のみが残っている。購入したばかりのGPSによって事なきを得たが、下山後はとにかく寒くて、車に乗ってエンジンをかけてから靴を履き替えている。今考えれば低体温症の一歩手前といった状況だったのだろう。
そんなことを考えながら頂上でのんびりしていると、いきなり後から声を掛けられる。見れば12年も前に所属していた同人TのメンバーだったSさんである。途中、林道で休憩している時に追い抜かれたのは知っていたが、まさか彼女だったとは思わなかった。当時の会では若手のホープともいえる存在だった。解散後のメンバーとのつながりや近況等、ついつい話し込んでしまう。未だに我々を覚えていてくれて、声をかけてくれたのは嬉しかった。
同人Tは解散したが、私はこのホームページを通して、この同人を立ち上げた当初の未知の山に対する熱い想いやその楽しさを発信し続けて行くつもりでいた。今回は誰でも知っている札幌岳の登山道コースをUPしてみたが、もはやネット上ではどの山も四季を通して多くのサイトで取り上げられる時代となった感がある。私も今後は近郊の定番ルートも歩き回り、感動のあった場面の1コマ1コマを拙文ながら紹介して行きたいと思っている。(2012.5.27)
【参考コースタイム】札幌岳登山口 6:45 → 冷水小屋 10:20 → 札幌岳頂上 12:55、〃発 14:45 → 冷水小屋 15:45 → 札幌岳登山口 17:00 (登り6時間40分、下り)
【メンバー】saijyo、チロロ2