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            三段(1748m)

1/25000地形図白金温泉」

吹上温泉・白銀荘の駐車場から
三段山の二段目を上がる
頂上までもう一息

美しい十勝連峰の中にあって、スカイラインの一角ではないが、そのスカイラインの良き展望台といえる場所に位置するのが三段山で、頂上からは連峰の迫力あるパノラマが展開する。この山はかなりメジャーな山で、吹上温泉とこの山の組み合わせはアプローチが良く、簡単に十勝連峰の懐深く入れるところに人気の理由があるものと思われる。温泉に浸かって、スケールの大きい冬山へ入る。山好きには堪えられないものがある。ただし、過去には雪崩による遭難事故も発生しており、1500mを超える標高で、しかも厳冬期という条件下では安易な入山は控えなければならないようである。今回はネット仲間同志がネットを通して決めた計画であるが、それぞれが離れた地域で活動しており、一同に会する機会が得られたことは何にも代えがたい楽しさがある。特に掲示板を通して日頃から意思疎通している仲間が、さらに交流を深めることができたことについては大変意義深いものがあった。

三段山を初見と言えば道内在住の山ヤとして少々恥ずかしいが、私としては今回が初の入山となる。厳冬期の十勝連峰としてはめったにない晴天で、白銀荘のロビーからは鋭角的な美瑛岳のピークが顔を覗かせ、この日の平穏な登山を予兆させる。いきなり標高1017mの白銀荘からのスタートとなるが、日頃登っている山で考えれば既に頂上付近の標高で、白銀荘周辺は既に高山の趣である。昨日の明瞭なトレースが針葉樹林帯へと続いており、この日のラッセルはほとんどなさそうだ。であればと、自然の素顔に少しでも触れてみようとの思いにいち早いモード切換えである。スタートしてからしばらくは、昨夜からの薄っすら積もった雪によるタンネの樹林帯に歓声を上げながらの登高となる。真っ白な樹林帯の中を歩く時、厳冬期ならではの張詰めた景色にいつもの事ながら感動し、これを見るために冬山に来ているのだ…とさえ思えてしまう。三段山の一段目を過ぎる頃には朝陽に輝く大雪山が顔を出す。日頃見慣れた山容ではあるが、凍てついた朝の空気の中ではやはり新鮮そのものだ。

大雪山方面の遠望 噴煙を上げる前十勝
藪山仲間、全員集合!(三段山頂上にて) 富良野岳の華麗な姿

二段目手前からは十勝連峰の中では険しく均衡のとれた富良野岳が顔を出し、数年前に大麓山から見た華麗な姿を思い出す。真っ青な空と真っ白な山とのコントラストは抽象画のモチーフともなりうるインパクトがあり、その純潔さは厳冬期の冬山でなければ決して得ることのできない感覚である。こんな瞬間に冬山登山の感動があるのだと私は理解している。二段目を登りきり、全体像が徐々に姿を現し出すと、視覚はダイナミックなものへと変化して行く。いつもの藪山と山岳景観といった視点のみでの比較をすれば、こちらに分があることは火を見るより明らかである。やはりメジャーな山にはそれなりの感動があると実感させられる。

広い緩やかな斜面は遮るもの一つない世界である。先頭を行く二人(道東から参加のお二人)は既に次の登りへと差しかかっている。日頃の樹林帯で考えると時間差は僅かであるが、見通しが良い時には視覚的な開きがあることを改めて感じさせられる。ここは前を意識せず、マイペースを守ることがベストであると自分に言い聞かせながら着実に歩を進める以外にはなさそうだ。そうこうしているうちに気が付けば自分も先頭グループの中にいた。これは決して私が速いのではなく、景色も何も見ないで、マイペースだけを心がけた結果である。おかげでこの区間は足元のスキー以外は何も見ていない。何時もの山行の中で、地形図も見ないでこんなことをすれば、自分の現在地すら判らなくなることだろう。晴天に恵まれ、トレースもしっかりついているメジャーな山だからこその甘えといえる。

最後はトレースが風のために消えてしまったため、いつものラッセルが戻ってくる。頂上は近いがなかなか標高は上がらない。息を切らし大きくジグを切っての一登りで安政火口側が切れ落ちた頂上到着となる。盟主・十勝岳がひと際高くそびえている。上ホロカメットク山の壁、富良野岳の華麗な山襞など、さすがの展望である。風は弱いが、長くじっとしていると手袋の中まで凍えてくる。全員の到着を待って下降開始となるが、この素晴らしい頂上で山仲間と過ごせる幸せは、山をやっていて良かったと思えるひと時でもある。もちろん頂上ビールは最高の味わいである。

下山開始から間もなく、続々と後続の登山者が現れる。一パーティや二パーティではない。さらに標高を落とすと、まるでゲレンデ状態となる。そこには既に数時間前の張詰めた厳冬期の冬山はなくなっていた。(2007.1.21)

今回同行して頂いた ■熊ぷ〜さんの山行記へ  ■Luckyさんの山行記

【参考コースタイム】 白銀荘P 8:10 → 三段山頂上 10:05 、〃発 10:45 → 白銀荘P 11:40

  【メンバー】熊ぷ〜さん&エル嬢、網走・伊藤さん、中標津・すがわらさん、Yamaさん、あまいものこさん、Luckyさん、saijyoチロロ2さん、チロロ3(旧姓naga)さん

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