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     察来山(589.8m)

薄っすら姿を現した察来山

 1/25000地形図「四番川」

林道入口は情報通り除雪されていた
深雪の林道を進む
大きな滝の上部を通過
林道の上部へ飛び出す

 察来山は増毛山地・東側の低山群の一山で、北海道雪山ガイド(北海道新聞社刊)に登場してからその手頃感からか有名になった山である。山名「サク・ル」は夏の・道という意味で、道内各地に見られるアイヌ語地名とのこと。大方は林道歩き、最後が急登というのは下山後にネットを見て判ったこと。当サイトの趣旨を考え、地形図を頼りにこの山へと向かう。ちなみに、この時期の駐車スペースは以前に北の別狩岳で苦労したこともあり、フライングかもしれないが、これだけは予めネットを調べて現地へと向かった。

日は差しているが北西風が冷たい
頂上は近い、一路頂上へ

  途中、当別付近はホワイトアウト状態、前を行く車のテールランプすらよく見えない。山登りなど正気の沙汰ではない。チロロ2さんは「そこのセーコーマートでUターンしよう」と主張。そうは言っても簡単に引き下がる訳にも行かず、ダメもとだったが除雪が遅れている道道28号線を雪煙を上げながら北へと向かう。岩見沢付近はここのところ豪雪地帯となっているが、日本海から延びる雪雲の筋が当別付近を通過しているようで、四番川到着の頃には打って変わったような穏やかな空模様となりホッと一息。青山トンネル手前の入山口には情報通りの除雪スペースがある。有名どころとはいえ、さすがにここ数日間の入山者はまるでないようだ。トレース跡は何もないので、スタートから膝くらいまでのラッセルとなる。“林道”を追いながらのラッセルであるが、林道が続いている様子は何となく判る。途中で林道を外し、送電線の鉄塔下に出てしまう。良く見れば判ることだったが、林道のみを追って周りの地形をほとんど見ていなかった。ひょっとして後続パーティでも居れば… と思い、間違ったトレース分岐には雪面に大きく×印を付ける。

 ところが、雪の積もった林道を辿って行くうちに、またまた林道のみを追ってしまった。一度送電線から離れるのは判っていたが、その送電線がいつまで経っても見えてこない。そうこうしているうちに崩壊箇所が出現、少々怪しげな状態となり、積雪に埋まった滝が現れる。見える部分はわずかだが、大きな滝のようである。林道はその上を通過、地形図上に描かれた林道とは、どのような見方をしても合っていない。察来山は正面に見えるピークのようだが、なぜか右側にもそれなりの高みが見える。察来山の右側にそんな高みはないはずとチロロ2さんの弁。確かにそうだった。ここで、確認の意味もあってGPSを取り出し、正面のピークに向かって進んでみる。GPSに入れてきた察来山は1m、2mと遠ざかって行く。…残念、間違えたようだ。 右側の高みこそが目指す察来山であった。とりあえず、途中で渡った沢地形まで引き返すことにする。冷静に考えれば、この沢を渡ること自体がおかしかった。

 林道を何処かで外していた、というか、地形図にない林道が存在していたことに拠る失敗であった。地形図にない林道など縦横無尽に存在しているのは常識。今さらながらだが、自分の読みの浅さは大いに反省すべきところ。ラッセルの深いこの時期、間違えた地点まで戻っていては頂上へは届かない。山の位置や方向が判ったのであれば、そのまま手近な枝尾根に取り付きさえすれば、予定していた林道の上部へは出れるはず。沢を渡ってすぐの察来山方向へと向かう小尾根に取付く。取り付きは急だったが、登ってしまえば緩くなる。そのまま進んで行くうちに、遠くに送電線が走っている様子が見えた。やはり、完全にルートを外していた。そこからは程なく予定していた林道上部へと飛び出す。負惜しみかもしれないが、結果的にはショートカットとなったこちらのルートは速い。後は察来山の南西の肩を回り込み、西側の緩い斜面から頂上を目指すだけである。

最後の急斜面を登って頂上到着 頂上からこの日唯一見えた富士形山

 林道上を、北西風をまともに受けながら進んで行く。疎林帯となって視界が良くなった分だけ風当たりが強くなったのだろう。天候は晴れたり雪雲で暗くなったりと目まぐるしく変わっている。大きく右側へと回り込んだあたりで右側の斜面が緩くなり、いよいよ頂上への登り、右手に稜線を見ながらトラバース気味に斜面を上がって行く。ふと、前方の樹木の上に白いものが見える。雲だろうか? よく見ればそこには樹木も生えており“丘”である。地形図からは想像もつかなかった頂上丘がいきなり現れた格好だ。さて… と考えたが、左側の樹林帯からなら登れるはずと近づいて行く。斜面に入ってみると、急は急だが、大きくジクをきりさえすればどうにかなりそうだ。樹林帯から大きく右にトラバース、スキー登高に良さそうな樹木のない斜面へと入る。所々で硬い氷となってエッジの歯が立たない。結局、再び樹林帯へと逃げ込んで木々につかまりながらも上部へと抜ける。頂上は20〜30mくらい先に一目でそれと判るような白い雪面となっていた。

 今の時期は時間との競争ということもあって、ルートの間違えは山行の成否に大きくかかわる。言うなれば致命的とも言える。間違えた時点では遥か遠く感じられた頂上である。そんな効果もあってか、“簡単”と侮っていたにもかかわらず、こうして頂に立てば嬉しさはひとしおである。雪雲に霞んで遠くの山は見えず、北西風が吹きすさぶ頂上から確認できる山は距離的に近い富士形山のみ。長居は無用、頂上写真を撮ってすぐに下山とする。スキーを得意とはしない地図がガイドチーム、しかし急斜面等での斜滑降&キックターンは日常茶飯事でお手のもの。ここも2度の切り返しで難なく頂上丘を下る。格好良く滑るだけがスキー技術ではない。要はスピーディな行動と安全性である。後はシールを付けたまま、間違えてから慌てて取付いた尾根末端まで一気に戻る。頂上からはわずか15分足らずだった。やはりどんなに滑りが下手でも下りは速い。

 後で判ったことだが、この山は展望の山となっているとのこと。やはり、天候の安定する3月、4月が旬のようである。地形図を見る限り簡単と侮った山ではあったが、フェイントをかけるかのような地形図にない林道の出現や深雪など、この時期特有の様々な登頂への阻害要素が潜んでいた。チロロ2さんには何時も山をなめてかかるとろくなことはないと窘められる。それは解かっているが、それでもなめてかかってしまう自分がいる。そんな構図の中、その都度それらの障害を克服することは山行の醍醐味であり、山登りが魅力的であり続ける理由でもある。3月、4月の晴天の日、ぜひともこの山をすっきりと再訪したいものだ。(2013.1.13)

【参考コースタイム】林道入口 P 8:40 小尾根取付き 10:45察来山頂上 12:10、〃発 12:15 小根取付き 12:30、〃発 12:45 → 林道入口 P 13:30   (登り3時間30分、下り1時間)   

メンバーsaijyo、チロロ216:15 山の手温泉(入浴)

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