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      ルコツ岳(532.1m)・坊主山(544.1m)

 
登山口からルコツ岳を望む

登山口からルコツ岳を望む

    1/25000地形図「ルコツ岳」「美利河」「黒 岩」 

除雪終点に車を置く
朝日を背に行動開始
ルコツ岳に誘われて、林道を前進
林道から植林地へ突入
縦走の途中から見る坊主山

  内浦湾沿いには展望の良い山が多い。室蘭岳に始まり、稀布岳、伊達紋別岳、有珠岳、サミット会場となったウインザーホテルの建つポロモイ山、昆布岳、蘭越・幌内山、写万部岳…等、どれも第一級の眺望を誇る山ばかりである。黒松内低地を隔てた次の一山が今回のルコツ岳である。当然のことながら、その眺望への期待は膨らむばかりである。532mと、ほぼ札幌・藻岩山と同程度の標高ではあるが、山域面積が比較にならないほど広く、実に雄大な山といえる。山名の由来はルコツ川の水源の山ということになろうが、この川が直接頂上へ突き上げているわけではない。ただし、山域全体をルコツ岳として捉えれば、決しておかしなことではない。“ルコツ”はsakag氏(一人歩きの北海道山紀行・管理人さん)によると=道、コツ=窪んでいる所、で「足跡」という意味だそうである。いずれにしても、当時の道内にあっては人口密度が比較的高く、そもそもがヒグマの生息密度が濃い地域でもあり、命名の経緯は十分に頷ける気がする。

  ルートはsakag氏の山行記を参考にさせて頂く。前の晩は同地域に道の駅が一つも無いことから、トイレ対策を考え、無人化したJR国縫駅を利用させてもらう。この駅も以前は瀬棚線の起点となって賑わっていたが、同線が廃止となり、国鉄からJRへと民営化され、完全に人々の流れから置きざりにされてしまった感じである。山への出発地点は高速道路脇の林道入口で、整体の治療院がある。その長谷川宅には一言ことわりを入れ、そこの除雪スペースに車を置かせてもらう。

  例年よりも暖かなこの冬、3月ともなると日中との温度差のためか雪面が硬くなり、ほとんどラッセルなしで歩くことが出来る。内浦湾の青い海を背にして、林道上を快適に進んで行く。前方には目指すルコツ岳が朝日に映って美しい姿を見せている。ルコツ岳の雄姿に誘われ約1時間ほどで、地形図上の送電線と林道が交差する地点に到着する。ここからが本当の山登りである。どのルートを進むのか、メンバーが集まって相談となる。右手の小沢を越えれば頂上までは一直線、とりうえずはルート偵察で近づいてみるが、小沢とはいえ思いのほか深く切れ込んでおり、一見して大変そうと感じる。

内浦湾の向こうには駒ケ岳が見える ルコツ岳頂上はあと少し
ルコツ岳頂上を示す「大切にしましよう・・・」の棒杭 ルコツ岳頂上にて

 ここはやはり正攻法で、sakag氏の取ったコンタ330mで囲まれたポコを通過するルートである。Ko玉氏と私、いかに上手に無駄なくルートを選ぶかは、彼と知り合った当初から両者ともにかなりの拘りがある。当然のことながら、ポコを上手に巻いてその先の稜線上を目指すことになる。ところが、対岸の広い尾根が意外に近く、結局はその魅力に負けて小沢へと下ってしまった。小沢の両岸はずり落ちそうな急斜面となっており、帰路はおとなしく尾根上を下ろうとつい本音も飛び出す。…が、ここは強気である。この日は珍しく、後続パーティのあったことが下山時に判った。彼らは我々のトレースを忠実に辿ったようである。沢底まで付き合ってくれたのは大変ご苦労さまなことである。 ラッセルなどしなくてもよいこんな時期、先行者のトレースを辿るメリットなど何もない。

  広い緩やかな斜面は青空に映え、緩やかに標高を上げて行く。背後の大パノラマは立体的に変化し、内浦湾の向こうには駒ケ岳、八雲付近の平野の向こうには野田追山、横山、砂蘭部岳、さらには三角山、雄鉾岳など、道南の山をよく知らない私でさえ山座同定の材料にはこと欠くことがない。伐採されずに残ったと思われる針葉樹林帯の上部から左に針路を変え、最後は広々とした頂上へのひと登りで「大切にしよう三角点」の棒杭が半分顔を出すルコツ岳頂上に到着する。前述の山々に加え、内浦湾はもとより、一気に360°の視界が広がる。ひと回り大きな遊楽部や狩場の山塊、北に目を転じれば後方羊蹄山を初めとする札幌周辺の見慣れた山々までも見渡すことができる。さすがの眺望である。

  ピークハンターのKo玉氏、出発の時点から、さらに遠いピーク・坊主山(544m)の登頂をもちらつかせていたが、私は山行中これを敢えて断り続けてきた。仮に坊主山登頂に快諾でもしようものなら、彼のことでもあり、どんな状況であろうとも二山登頂を完全に果すまで、決してこの山行が終わることはなくなってしまうだろう。しかし考えてみれば、結果的には10時前早々にルコツ岳頂上に到着しており、しかも今日の晴天を考えれば、最初からKo玉氏の術中にはまっていたようである。結局、止める理由などあろうはずも無く、この日二山目の坊主山へと向けて出発となる。

  西側に伸びる尾根の急な下りは雪面が硬く、ほとんどずり落ちるような横滑りでの下降となる。帰路、再びここを通過する時間帯には気温も上昇、雪面はきっと腐っているだろうとの希望的観測である。次のコブは、出来るだけ効率がよいようにと雪庇の下を巻こうと考えるが、標高が低いとはいえ固い雪面の上には10p程度の新雪が乗っかっていて、その積雪状態の不安定さに、たまらず尾根上へと逃げ戻る。コンタ480mのコブは、距離はあるが風上側の斜面を大きく巻くことにする。巻いたとはいえ、斜面を大きく下ることになるが、登り返しのことはそのとき考えることにしよう。帰りの登りを今から考えても疲れるばかり、何の益にもならないことは十分に判っている。

  さらにポコを一つ巻いて、いよいよ坊主山への最後の登りへと入る。いつのときも同じだが、その斜面へ入ってしまうと対岸から見ていたほどの傾斜はなく、意外に見た目ほどではないことが多い。いわゆる錯覚である。どんな時でも取り越し苦労はせずに、とりあえずは斜面に入ってから考えるのが最良の策といえる。最後は快適にシールを効かせ、意外に簡単に広い坊主山のピークへの到着となる。思った通りであった。眺望はルコツからのそれとあまり変わりないが、その中に通過してきたルコツ岳が見えるところが何とも嬉しい。あわよくば立ってみようと考えていたピークに首尾よく到達、絶対に踏もうとこの機を狙っていたKo玉氏の執念に負けた形ではあるが、当然のことながら達成感、充実感は比較にならぬ程大きなものとなったことは言うまでもない。あとは帰路の安全対策をじっくり考えながら、ゆっくりと引き返すのみであった。(2009.3.1)

 

険しい雄鉾岳(右)とその周辺…ルコツ岳頂上から
坊主山頂上から内浦湾越しに雲がかかった後方羊蹄山と昆布岳、知別岳
坊主山頂上からルコツ岳を振り返る

【参考コースタイム】波動気功整体P 7:00 送電線 8:10 ルコツ岳頂上 9:40 坊主山頂上 11:10、〃発 11:30 ルコツ岳頂上 13:00 波動気功整体P 14:20  (登り 4時間10分、下り 2時間50分)

メンバーKo玉氏、Matuna氏、saijyo、チロロ2

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