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      瑠辺斯岳(659.0m) 

  /25000地形図「瑠辺斯岳」

荒れ模様の根北峠、気分も萎縮気味である。
地吹雪のために白くなった標識
まずは無線中継所へ
まずは無線中継所へ

 瑠辺斯岳(るべすだけ)は659mの低山ではあるが、知床半島最南端の山であり気象条件は厳しい。今回の計画は「大好き!Mt.Onne」のMarboさんが、愛すべき斜里岳を別の角度から眺めたいとのことで、正月山行を道東と決めていた我々がその計画に乗った形である。東ヌプカウシヌプリを終えた段階で、敢えて天候の悪い山域への移動することにはメンバーから異論があったが、例え山が中止となっても約束した以上は現地へ行かなければならない。これは、効率的ではないと思われるかもしれないが、私の信条である。断続的に雪の舞う夜の阿寒横断道を越えて、何とかMarboさんの実家へなだれ込む。山ヤの常識を通してしまい、Marboさんのお宅には親族団欒の中、大変迷惑をかけてしまった。この日の根北峠は荒天のためにゲートが閉まり、Marboさんが計画した根北峠から東斜里岳に登る計画は中止となっている。

エビのシッポは厳冬期を感じさせる

 翌朝、根北峠のゲートが開き、きれいに除雪もされている。峠へ向って行くが、天候は今ひとつであまり好転はしていないようである。とにかく進めるところまでは進もうと、山行の準備にかかるが、吹き付ける北風に気持ちも萎縮気味である。とりあえずは樹林帯へ逃げ込めば風も弱まるのではないかと、無線中継所への管理道を使わず、峠から中継所を目指す。中継所までは約10分、しっかりと地形図を見ていなかったこともあり、施設の左側のへりへ登ってしまう。どこを見ても続く尾根は見当たらず、逆側のヘリも登ってみるがやはりない。今度は地形図を取り出して、真剣に地形図片手に下降尾根を探す。地形図を見ていればすぐに判ることであった。進行方向は90°右側で、だらだらと尾根が続いている。心のどこかで読図を人任せにする気持があったのかもしれない。

稜線上は強風が吹き荒れているが、稜線から10mも風下を進めば、ほとんど風もなく快適である。コンタ500m付近からは急下降となる。正面には485mのコブが見えるから間違ってはいないようだ。笹が出ていて何となく滑りづらいが、仮に雪がたっぷりと積もっていた場合の方が雪崩れる危険性があり恐い気がする。 コルは広く、風下側へ少し移動すれば快適そのもので、タバコに火を付けることも十分に可能なほどである。あとは緩い尾根を登りきれば瑠辺斯の頂上であるが、ここからが長い。風下側を選んでルートを取るが、やはり比較でいえばその分だけラッセルが深くなる。強風を選ぶか、ラッセルを選ぶかでは、やはりラッセルとなるだろう。だらだらとした長い登りが続く。雪の少ない先月末にこのルートを辿った「秘境日高三股へようこそ」の高柳氏、よく登ったものだと思う。ましてやこの上、頂上部のハイマツ漕ぎも加わったとあっては、私であれば止めてしまうだろう。

最初の急斜面を下って一息 先頭を行くMarboさん
後続も到着 強風に耐えながら頂上に到着

  コンタ620mで斜面が緩くなり頂上到着かと思うが、しっかりと地形図を見ていたMarboさんは、頂上手前の平らになった辺りとの読み。これも地形図をよく見ていれば判ることであった。最近では文明の利器であるGPSを見ることが多いため、行動中の動作が少々怠慢になったと反省する。風下側にルートを取り、潅木帯の中を進んで頂上へのアプローチとする。少し進んで行くと今度こそは緩い台地状の頂上が見えてくる。ただし、頂上を踏むためにはどうしても突風の中へ飛び出して行かなければならない。ここは意を決して上り切る。予測通りで、ストックを使っての三点支持でバランスを保つのがやっと。少しでも体勢を崩そうものなら、簡単にひっくり返されそうだ。エビのしっぽも発達していて、正に厳冬期といった感じである。楽しみにしていた斜里岳の雄姿だが、残念ながらMarboさんに昨夜見せてもらったカシバードの展望図を目前のホワイトアウトのキャンバスに思い描くよりほかに仕方がない。直ぐに後続を迎えに行くと、地吹雪の向こうから人影が現れる。彼らはバランスを必死で保ちながらも稜線上を真正面から進んできたようだ。

 頂上から風下の樹林帯へ逃げて大休止、少し下っただけで別天地である。正月でもあり、今年最初の登頂を祝い、頂上ビールとする。根北峠はオホーツク海からV字状に入っていて、峠は扇の要、北風の日には風の通り道となっていて特に荒れ様が酷いようだ。コルも同様で、風上側では突風となっていた。この場合、風向きが重要なポイントである。これに地形を加味してルートを考えれば、冬期ツアー山行では鬼に金棒といえる。今後、山域やルートを決める上での重要な要素と思えた。

 あとは下るだけだ。今シーズン初なのかMarboさんとsyuuさんはシールを剥がす。貼り付けシールの私は、上り返しの急斜面で再び貼るのが億劫で、シールを付けたまま下山することにする。昨年のシーズンオフの山行以来、貼ったままとなっている私のシール、この日もとうとう剥がさず終である。山行を内面から余裕あるものにするには、やはり身の回りの細かなこと一つ一つを億劫がらずに、むしろ積極的にこなして行く姿勢こそが大事である。そう考えてみると、最近の私は随分と不精者になってしまったものと、反省させられることしきりであった。(2009.1.3)

 Marboさんの瑠辺斯岳山行記へ

【参考コースタイム】 根北峠 P 8:50  →瑠辺斯岳頂上 10:30、〃発 11:00 →  根北峠 P 12:40 (登り 1時間40分、下り 1時間40分)

メンバーMarboさんsyuuさん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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