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      辺蘂山(858.7m)

丸子山から瑠辺蘂山を望む (2015年2月 撮影)

 1/25000地形図辺蘂山」

ラッキーなことに、北沢川出合まで車を乗り入れる
715m標高点からはなだらかな登りとなる
途中のコルからは美瑛付近の平野が広がる

道内に「るべしべ」の名が付く山は多いが、今回登った山は幌内山地の瑠辺蘂山(858m)である。頂上部が平らで穏やかな山容の山であるが、地形図を見る限りでは、一見どこから攻めたら良いのかが分からない。ことの発端は半年前、HYML(北海道山メーリングリスト)の飲み会で知り合った、山岳ガイドをされている高山さんとなぜかこの山へ登る約束をしていたことである。標高こそないが地形図を見ると班渓幌内山と共に山域内では目立つ山で、いつかは登ってみたいと思っていた。高山さんの人あたりの良さに、つい飲み会の席で口に出していたのだろう。日程まで決めていたこともあり、実現の運びとなった。

雪原には立派なトドマツが点在する

ルートは高山氏が選んだ、北沢川林道から尾根に取付くルートである。私が考えたのは、EIZI@名寄さんとOginoさんが以前に取った台ノ下山を越えるものと、芦別側の右の沢川・大滝からのルートであるが、どちらも時間を要しそうであった。入口は那英山と同じ美瑛町・美馬牛からで、峠を越えて二股共栄から瑠辺蘂川沿いの道を進む。ここ数日間は除雪されていないようで、車高の高い高山車で精一杯といったところである。引き返そうにも回転場所が無く、そうこうしているうちに北沢川出合まで車を進めてしまう。アプローチがこの山の核心部と思っていただけに、怪我の功名とはいえ、ここまで入れたのはラッキーであった。付近は現在も伐採作業が行われているようで、いつのものかは判らないが、轍が残っている。

スキーを付け、いよいよスタートである。轍は北沢川沿いの林道にも続いており、ラッセルもなく快適にスキーを滑らせて行く。尾根取付きまでの約2km、約50分で林道終点となる。登りとしては少々ハイペースであるが、ウォーミングアップと考えれば丁度良いくらいかもしれない。尾根の取付きから715m標高点まではキックターンの繰り返しで、林間を縫うようにぐんぐん標高を上げて行く。密度の濃い樹林帯の急斜面で、高山さん曰くは、ガイド登山ではキックターンが出来ないお客さんもいて、こんなルート取りはありえないとのこと。確かに雪が固まる春先であったら、たとえ慣れていても下降にはかなり神経を使うことだろう。私も高山氏も日頃からラッセルする機会が多く、先頭に立ってラッセルする方が何となく落ち着き、二番手で付いて行くのは苦手なようである。ことラッセルに関して言えば十分におつりが来るパーティと言える。

715m標高点を軽く巻いて、平らな稜線上となる。途中、コル付近にはアモイ像のようなモンスターも見られ、視覚を楽しませてくれる。また、美瑛付近の平野の広がりも見られ、晴れていれば大雪山やトムラウシ山付近の大パノラマも楽しむことができるだろう。雪面に先週のものと思われるスキーのトレースが薄っすら見える。この山を目指す登山者が他にもいるようで、驚きと共に時代も変わったものだとつくづく感じさせられる。その跡を辿ってみて、下部の雪が踏み込まれているせいか、何もない雪面よりはかなり歩きやすいように感じられた。付近は平らな雪原で、背の高い立派なトドマツが点在し、ところによっては一見防風林のような木々の連なりも見られる。

紙製の撮影用頂上標識を置いて 夕張中岳をデジタルズームで

広く平らな平坦地の頂上では最高地点を特定することは難しく、ましてや三角点を発見することなど至難の業といえる。最近、保険代わりとして持ち歩くことが多くなったGPSであるが、こんな時にこそ利用する価値がありそうだ。読図により、ここと思えた頂上であったが、100mほど北東側にずれていたようだ。GPSにて修正、およそ半径10m以内のどこかに確実に三角点が埋まっていると思われる雪原に到着する。

潅木によって飛び出した雪面があったので、「大切にしよう三角点」の棒杭かと、高山氏がストックを入れてみるが、根元まで完全に入ってしまい、それでもぜんぜん足りないようである。付近の積雪は2m以上はありそうで、ここで三角点を掘り出すことなど、とんでもないことなんだと知る。何はともあれ、無事に頂上到着である。木々の間に三角垂の鋭峰が見えるので、確認できる位置まで移動、夕張中岳であることを確認する。位置をずらさなければ望む展望は得られないが、付近全体を頂上と考えれば当然と言えるだろう。工事撮影用黒板ではないが、高山氏が撮影用の紙製頂上標識を持参する。だれの迷惑にもならず、残すのは足跡だけといったところだ。

下りは頂上出発後、すぐにシールを外す。登り返しもあり、シールがあった方が便利ということで取り付けたままであったが、距離のある平地ではやはり外した方が遥かに効率は良さそうだ。715m標高点までは平地とはいえ、快調にスキーを滑らす。ここからがこのツアーの真骨頂である。密度の濃い樹林帯の急斜面、高山氏は林間を縫ってあっという間に消えて行く。日頃のガイド山行ではこんな斜面をこのスピードで滑ることはないとのことで、“水を得た魚”とはこの場面にこそ相応しい表現なんだと実感する。

 細やかな心使いを絶やさぬ高山さん、最近の山行では少々雑になっていた私であるが、メンバーへの気配りは大切なことと改めて感じさせてくれる一日であった(2008.2.7)

【参考コースタイム】 北沢川出合P 8:40 尾根取付き 9:30 → 715m標高点付近 11:00 → 瑠辺蘂山頂上 11:40 、〃発 12:05 尾根取付き 13:00 北沢川出合P 13:40  (上り3時間、下り1時間35分[途中の休憩時間も含む])

  【メンバー】高山氏、saijyo

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