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     留辺蘂(1000.9m)

/25000地形図  「二岐岳」

チロロ橋周辺の千呂露川周辺は美しい
この沢一番の滝、磨かれていて滑りやすい
源頭周辺の様子

留辺蘂山は日高町・千呂露川林道の途中にある、1000mちょうどの山である。林道付近の標高は約500mで、標高差500mでは登山の対象としては少しもの足りなく感じるが、この付近の地形は急峻であり、日帰りの沢歩きとして考えれば時間的にも十分余裕をもって楽しむことが出来る。以前、大雨の直後に千呂露川林道に入ったが、この山の近くで寸断されてしまい、どこか登れる山はないかと周辺を探し、距離が短く三角点もあるこの山を登ることにした。選択した沢は、今回のルートの一本下流の枯れ沢であったが、大雨の直後だけに水量も多く、それなりの沢歩きが楽しめた。小沢を詰めて、コンタ990mから東へ下る尾根上へ登りつめ、そこから頂上までは藪漕ぎで登った。この日は以前所属していた山岳会「童人チロロの風」の数パーティがそれぞれの山行を予定していたが、登れる山はここくらいであったこともあり、急遽合同登山となった。

 今回のルートは千呂露橋から留辺蘂山の東面へ真直ぐ突上げている、直登沢を辿る。この付近の千呂露川は大きな函となっていて、渓谷の景色を眺めるだけでも一見の価値がある。枯れ沢の入口はしばしば人が入っているのか、踏み跡になっている。出合は水流が伏流となっていて、全く水はないが、直ぐに流れが出て来る。約30分登ると650m二股となる。頂上へ突上げているのは右股の方であり、入って直ぐに滑滝(45m)が現れ、左岸を階段状に登る。そこを通過後まもなく現れるのが、結果的にこの沢一番の難所となる函滝(5〜6m)である。見たところ左岸側からバンドが水流を横切って上部に伸びているようにも見えたが、取り付いてみると寸断されていて、上部の小テラスには一歩届かなかった。岩面が水流で磨かれていることもあって無理は出来ない。一度降りて作戦を立て直すのが良さそうだ。右岸側は手がかりに乏しいが、3m程登れば小テラスに手が届きそうである。結果的にはこちらを登り両手を小テラスに掛け体重移動で膝を乗せ、何とかここを乗りきる。両ルートともあと一歩が足りないが、右岸側に水流の横断がないぶんだけ分があるように感じた。体重移動の際、だましだまし足を掛けた泥のスタンスを落としてしまったため、sakag氏が登る時点では少し難しくなっていたかったかもしれない。

右岸側の潅木には懸垂下降で使用した真新しいシュリンゲが掛けられており、最近どこかのパーティがこの沢を下降したことがわかる。コンタ640mで再び二股となり、当初予定していた左股へ進むことにするが、直ぐに45mのゴルジュの滝が行く手に立ち塞がる。左側の水流のあるチムニー状に両手を掛ければフェルトのフリクションで登りきることは可能と思ったが、何分狭いためザックが引っ掛かりそうだ。ここは無理をせず、ルートを右股へ変更することにする。右股は滝らしい滝が一つもなく、やがて源頭へと消える。

sakag氏、藪の中のピークに立つ

源頭からは笹薮の急斜面であるが、潅木が混じっていないので歩きやすい。標高をぐんぐん上げて行く。左股を進む予定でいたため、ルートをこころもち左寄りに取るが、進行方向の左側は明るく、コルが左側であることを感じさせる。そう考えると頂上は右寄りの樹林帯ということになり、進路をやや右寄りに変え樹林帯を目指す。やがて斜面が緩くなり頂上付近に到着するが、三角点を確認するため一番高い地点を探すことにする。藪の中でも少し高くなったところに測量で使った古い櫓を発見、その下に三角点を確認する。3年ぶりの留辺蘂山頂上到着である。見晴らしの利く頂上も当然素晴らしいが、目的地点に到達できた喜びはそれ以上に素晴らしいものである。藪の中の三角点は過去何度も踏んだが、展望の利かない頂上にがっかりしたことは一度もない。Sakag氏とお互い頂上確認の写真を撮り、そそくさと藪中の頂上を後にする。下降ルートは3年前と同じ東へ下る尾根上を進むことにする。途中、東側に見える春別岳の姿をカメラに収めようとしばし立ち止まるが、頂上部のガスはなかなか晴れそうにはなかった。

東尾根の頭である、コンタ990m付近のルートファインデイングが難しい。往路でここを踏んだ3年前には確かここで赤布を残した記憶があるが、今回は何もないため東尾根へすんなり降りる難しさを感じる。地形図上は単なる等高線に囲まれた地点であるが、地形図では表現されていない(10m未満のアップダウン)地形を考慮して読図しなければならなかった。付近の一番高い地点から真東にコンパスをきったが、急斜面の下降となり明らかに違うように感じた。その後、やがてこの尾根が東へ向かうことを期待して北に針路を取るが、しばらく下ってコンパスを見ても、sakag氏のGPSを確認してもますます北へ向かうばかりである。Sakag氏のアドバイスで、東側の斜面をトラバース気味に戻ることにする。進むうちに東尾根がはっきりしてきて、予定のルートへ戻ったことを確認する。コンタ990mピークからは進んでみた2方向の中間を選択するのが正解ということになる。藪尾根下降はある意味では、冬期の尾根下降よりもより難しいと実感する。

明瞭な尾根の下降であるが、地形図上の尾根の空白で少し広くなった部分には、意外に難所が待ち受けていることがある。以前にトレースしていたため、コンタ820mで小岩峰が出現することは知っていた。この時は岩峰手前で右側の沢形を下ったが、今回はミニ岩稜を越えてそのまま東尾根を下降することにする。岩稜への登りは鹿の踏み跡がしっかりしていて、以前と比べて登りやすくなった。しかし、ここの下りは樹木がなければとても下れないほどの急傾斜である。その後も崖上に飛び出したり、木々にぶら下がったりしながら着実に高度を下げる。Sakag氏のGPSが間もなく往路へぶつかることを知らせてくれる。飛び出した沢形は枯れ沢となっていて、車も見える地点であった。

地形図上では単純で、とても登山の対象とはならない一山であるが、実際登ってみると意外に変化に富んだ面白い山だった。残雪期に簡単に登ってしまうには少々もったいない一山だと思う。(2003.7.21)

「一人歩きの北海道100名山」留辺蘂山へ

 【参考コースタイム】 千呂露川林道チロロ橋 7:34 → 650m二股 8:03 → 源頭 9:43 → 留辺蘂山頂上 10:23、〃発 10:43 → 千呂露川林道チロロ橋 12:58

メンバー】sakag氏、saijyo

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