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     老根別山(910.6m)

老根別山は南北に細長い

/25000地形図 夕張岳」「石狩金山」

トンネル手前の除雪スペースから取付く
トンネル手前の除雪スペースから取付く
尾根筋の左側には作業道跡が続く
作業道跡終点付近の様子

老根別山は夕張岳東側の前衛峰的な存在の山である。南北に細長く特徴ある山容であるが、標高が900m程度と山域の中では低山であり、人里からはほとんどその姿を望むことができない。地形図上では国道237号・金山峠からほど近く、北見峠のチトカニウシ山のような、絶好の日帰りツアー向きの山との印象があり、以前から私の山行予定リストの中で暖めていた計画である。ただし、最後の詰めでは急斜面を登りきらなければならず、登るのであれば積雪が安定する春先がベストシーズンと考えていた。今回は標高の低さから、問題の急斜面は樹林に覆われているであろうという前提での入山であった。

ルートは雪崩斜面なので要注意
雪崩の破片には毟り取った根曲がり竹が絡みつく

  金山トンネル手前には除雪車の回転のためのものなのか、駐車可能なスペースが確保されていている。除雪しなくてもよい分、取付き地点としては恵まれている。トンネル上の稜線へ上がり、稜線上をトレースすることも考えるが、老根別山の頂上へ登ることを第一の目的とした場合、余計なアップダウンは避けた方が効率はよく、744m標高点を通過する南側の尾根からのアプローチで考える。駐車地点の尾根は、一本南側の尾根よりは取付きやすそうであるが、地形図上では詰めが痩せている。他を見たところ、雪崩防止用の柵があったりで一長一短であり、まずは取付きやすそうなところからということで話はまとまる。

  一登りするとラッキーなことに、作業道跡が現れる。この作業道跡はあまり続かないようにも思われ、そのまま尾根上を進むが、意外にも続いているようであり、少し下ってこの作業道跡を進んでみることにする。作業道跡とはいえ潅木がうるさく、無雪期であれば完全な藪漕ぎとなるだろう。作業道の標高が落ちればいつでも尾根上へ逃げることを考えながら進んで行くが、結局は目指す744m標高点の近くまで登ってしまう。さらにラッキーなことにこの標高点をトラバースするように右方向へ枝道が伸びていて、金山トンネルからの主稜線と合流する地点まで続いていた。途中、枝道からは目指す老根別山の南北に長い山容が正面に現れる。コルまでの標高差は30m、ここは出来るだけ最小限の労力で切り抜けたいところであるが、下手に急斜面のトラバースも出来ず、コルへの起点となる、コンタ740mの小ピークまでいったん登ってから下ることにする。キツネと思われる小動物の足跡が転々と続いている。動物の足跡は本能的にか、安全なルートを行く場合があり、この小ピークも足跡を辿ってうまく巻くことが出来た。

  小ピークからは頂上へ続く稜線上の全容が望まれ、途中には比較的大規模な全層雪崩の痕跡も認められる。両側の樹林帯へ逃げるのがよいのか、真中に転々と続く小動物の足跡を辿るのが安全なのか、しばし思案に暮れる。とりあえずはコルへ下り、考えるのはそれからである。下って行く斜面上からは老根別山が圧倒的な姿で迫ってくる。コルからの登りは緩い斜面が続くが、手前の樹木の枝先の、さらに上に頂上部が見上げるように見え、詰めのキツさをひしひしと感じさせられる。傾斜は徐々に強まり、スキーに自信がない我々はコンタ810m付近でスキーを諦めることにする。

  遠くからずっと見えていた頂上からの斜面に残る足跡の主はウサギのようである。デポ地点からは意外に雪面が硬く、キックステップで快適に標高を上げることができる。全層雪崩の痕跡と思われる地点まで到達すると、突然雪面が途切れる。この急斜面はどうやら一面根曲がり竹で覆われているようであり、雪渓は地滑り的にずり落ちたようである。ずり落ちた雪渓から一歩踏み出すと、積雪1020pほどの新雪の層となっていて、その直ぐ下は根曲がり竹が剥き出しである。全層崩の破片と思われる大きな雪塊(高さ34)には根こそぎ毟り取られたと思われる根曲がり竹が巻きついており、その破壊力の凄まじさには足が竦む思いである。直ぐ先の急斜面はウサギも転がったのか、足跡もシリ滑り状態である。

老根別岳頂上にて 登りの苦労が嘘のよう

  北側の樹林帯へのエスケープを考えて脆そうな斜面へ足を踏み入れるが、思っていたよりも積雪は深く、根曲がりに新雪が積もった状態の斜面でトラバースを続けることは正に自殺行為のようにも思われてくる。慎重に引き返し、正面のウサギのトレースを辿るが、さすがにシリ滑り状態の斜面は登れない。結局南側の樹林帯へ活路を求め、ここは斜め下へのトラバースで無事切り抜ける。後は樹林帯へ逃げ込むが、樹林帯付近の雪面は往々にして埋まることが多い。頂上は頭上間近に見えるが、腰までのラッセルでは一進一退が精一杯である。雪渓は2030pのところに弱層があり、かき分ける雪もブロック状に剥がれ落ちる。樹林帯でなければとてもこの状況には耐えられず、即刻撤退となろう。あと2030mで頂上と思われる赤布が結ばれている地点へ到達できそうであるが、こんな斜面ではほとんどラッセルは進まない。しかし後を振り返ると二番手は意外にも退屈そうである。急斜面のラッセルでは先頭と後続の間には天と地ほどの違いがあるようだ。

  スキーをデポして約1時間、待望の頂上に到着する。期待していた夕張岳の山容は雪雲に邪魔されていて全く見えない。先ほどまで見えていた十勝連峰も同様である。もっとも頂上西側は樹林が邪魔していてスッキリした展望はとても期待できそうにはない。空は晴天であるが、冬型の気圧配置と寒気団の影響で空気中の水分が凍ってしまい、輝きながら舞っている様子は実に美しい。であればと、サンピラーを期待するが、薄曇りであるのか、日差しもさほど強くはなく、期待は簡単に裏切られる。北西風を避け、少し下って恒例の頂上ビールとする。

  下りは思いの外早く、登りに約1時間を要した急斜面も、僅か15分でスキーのデポ地点まで下降してしまう。この時期の登頂の成否の分かれ目は、やはりラッセル力とルートファインディング力がすべてということであろうか。また、帰路に登路で利用した作業道跡の入口を確認したところ、我々が車を停めた除雪スペースから続いていた。(2005.1.23)

【参考コースタイム】 金山トンネル手前 8:30 → コンタ740mピーク 10:05 → 700mコル 10:15 → 老根別山頂上 11:25、〃発 11:45 → 700mコル 12:10 → 金山トンネル手前 12:50  

メンバーsaijyo、チロロ2

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