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       冷水(702.6m)

  

  

栗山町・継立付近から見るマウント・レースイ
栗山町・継立付近から見る冷水山

 1/25000地形図「夕 張」

レースイの湯・駐車場に車を停めさせてもらう
ゴルフ場のグリーンようなスキーゲレンデ

マウントレースイに登ってきた。夕張市街地に隣接する山の中で我々が登っていない最後の山である。ここはスキー場であって山ではないというのが私の認識だったが、スキー場が出来る前までは三角点の設置された立派な“薮山”だったようである。そんなことから、食わず嫌いせずにとりあえずは登ってみることにした。財政破綻の街とのレッテルが貼られた夕張だが、人間の目というのは不確かなもので、立派なスキー場とモダンな宿泊施設(ホテルマウントレースイ)を備えるこのリゾートでさえ、何か閑古鳥の鳴く寂しささえ感じてしまうものだ。もっとも夏場のスキー場が賑わっているはずがないのは当然で、これは間違いなく私の偏見であろう。

ひと気のない同スキー場の駐車場を冷水山頂上目指して出発する。ゴンドラの取り外されたスキー場正面から作業用道路を登ることにする。これは決して一般的には登山といえないが、山登りの定義が特別にあるわけでもないので当サイトとしてはこれもOKと考えることにした。大きく右手へと緩やかな道路(ワンディングロード/初級者コース)を歩いて登って行く。道路歩きのみの「登山」であるが、何度も登った山に幾度となく訪れるよりは知らない分だけ心ときめくものがあるのは事実だ。そもそも私はゲレンデスキーなど下手くそで嫌いだったこともあり、ここマウントレースイを訪れるのは営業時も含め今回が初めてである。ゲレンデはゴルフ場のグリーンような鮮やかな緑色の絨毯となっていて、雨後のその鮮明さは人造物とはいえ美しい。途中、道路から逸れてこのゲレンデを登って行くことにする。

登ってみればやはり“隣の芝生”だったようで、急傾斜(スウインギングBライン)の上、雑草の中にはエゾシカの糞がいたるところに転がっている。これを避けながらの登高も容易ではない。洒落た名称のゲレンデとは言え、やはりここは本来なら野趣溢れるエゾシカの生活圏ということなのだろう。ここを登りきると再びワンディングロードの道路となってパノラマAラインへとつながる。このパノラマAラインこそが頂上へとつづく斜面である。時折雨がパラパラ落ちてくる空模様だが、頂上周辺は姿を現している。展望など最初から期待してはいないが、谷間に沿った夕張市街の向うには今年の冬に訪れた鳩ノ巣山や石狩平野も広がっている。

冷水山頂上にて 三角点は損傷が酷い

さて、最後の登りである。道路はくねくねと左右を行ったり来たりしているので、エゾシカの糞が転がる斜面を真っ直ぐに登ることにする。目線に映る斜面のラインを越えてさらに進むとゴンドラのロープが現われる。冷水山の頂上を交わすように頂上駅へとつながっている様子が見える。頂上右側はすっぱり切れ落ちているようで、スキーヤーへの注意を促すための柵が設けられている。管理責任についてはどこのスキー場もかなり神経質になっているようだ。柵の向う側だけ見れば本来の冷水山の姿が残されていて新鮮であるが、その上にもゴンドラのロープが張られているところはやはり寂しい。

我々は柵に沿って頂上の丘へと登り詰める。三角点は損傷が烈しいためにコンクリートでしっかりと囲まれ保護されている。いつも苔生したものを見ることが多いだけに何か箱入りで窮屈そうにも感じられるが、冬期間も含めて訪れる人達が多いためにかなり傷んでしまったのだろう。登山者のみであればこんなに傷むことはないだろうに残念なところだ。頂上の小さな丘にはゴンドラ駅側に階段が付けられている。ふと見ると人気のないゴンドラ駅にエゾシカの親子が佇んでいた。我々の気配を感じてか直ぐに草むらへと消え去って行ったが、こんな時期の招かざる客は彼らには迷惑だったようだ。雨足が速まり、ひと気の全くないゴンドラ駅の軒下で雨宿り。

下山後、駐車場周辺をひと回りしたが、JR夕張駅が豪華客船のようなホテルマウントレースイの玄関口に物置小屋のように建っていて、そこからは古い町並みが道道に沿って続いていた。この街には炭都としての過去や関係した多くの人々の歴史があり、それは北海道にとっても有形無形の貴重な産業遺産といえる。衰退した街とリゾートという名のバブル産物の不調和さ、これこそが今の夕張の状況を如実に現す光景と感じられた。(2011.9.23)

【参考コースタイム】 レースイの湯・駐車場 8:55 → 冷水山頂上 10:05、〃発 10:35 → レースイの湯・駐車場 11:30  (登り 1時間10分、下り 55分)

メンバー】saijyo、チロロ2

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