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    雷電山(1211.3m) ・・・ 朝日温泉の休業で遠くなった

 

幌別山方面から雷電山(遠方)を望む Ikkoさん提供 15年4月

   

1/25000地形図 雷電山」「岩 内」「チセヌプリ」 

岩内国際スキー場に車を置く
この日目だった花はエゾエンゴサクくらいのもの
第三リフト終点あたりでやっと雪渓が現れる
岩内岳頂上に到着

1174mピーク  この左側を巻いて行くと雷電山はぐんと近づく

  雷電山は遠い山となって久しい。登山口となる朝日温泉が平成22年の災害のために休業となり、以来、連絡道路の通行止が続いているためだ。私も何度か朝日温泉からの雷電山を考えたが叶わなかった。であればと考えたのが、若い時代に一度トレースしたことのある岩内岳からのルートである。このルートであれば岩内岳にさえ登ってしまえば、距離はあるがアップダウンが少なく、そう長くは感じないはず。雪渓の残る五月上旬あたりであればスキーも使えて効率が良いだろう。そう目論んでの計画である。

  しかし、岩内国際スキー場へ行って驚いた。例年であれば少し歩けば雪渓が出てくるので、スキーを持って登る部分は少なかった。だが、今回に関しては雪が山の上部にしか残っておらず、さすがに上部まではスキーを担ぐ気がしない。結局、スキーは諦めてツボ足で行くことにした。登山道に一汗も二汗もかくと第三リフト終点となり、やっと雪渓となる。ここで後から登ってきた登山者に抜かされるが、私としてはこの速度で精一杯。雪渓上にキックステップを刻みつつ登っているうちに足運びが少し軽快になる。やはり登山道よりは雪渓の方が自分には向いているのかもしれない。そのまま雪渓を進みすぎて、右も左も籔だらけになってしまった。二年前に同様のチャレンジを試みたときにもここに迷い込んでいる。この時の経験から、右手の籔の向こう側に登山道があることは知っていたので、すぐに籔を漕いで登山道へと戻る。ここまで登れば岩内岳頂上はかなり近い。

 この日は晴天予想だったので急遽雷電山を計画したが、前線の影響で途中の中山峠では雨が降っていた。低気圧は通過したばかり。雨雲が去って晴天とはなったが、その影響で西からの風がかなり強い。予測通り、岩内岳の頂上は強風であった。低温ではないが体感温度ではかなり低く感じられる。登山道の登りでは半袖だったが、さすがに寒くザックから厳冬期用のオーバーヤッケと手袋を取り出す。日帰り装備なのでザックが形にならず、厳冬期用の上下を入れてきたことが功を奏したようだ。雷電山へは西に進むので正に逆風となる。

目指す雷電山はこのまま真っ直ぐに
無事、雷電山山頂に到着!

  地形図を見れば約4km先の雷電山だが、ここから見た感じはそれ以上に遠い。この時期の良いところは雪渓が硬くなって沈みにくく、ルート自体も緩い地形で、いちいちコブに登らなくても巻いて直線的に進めるところだ。スキーであればなおのこと便利だったが、置いてきたのだからしょうがない。岩内岳頂上からは夏道を少し下る。いよいよ雪渓上の縦走の開始である。最初の1073mは強風を突いて北西側を通過する。次の1174mは南東側へ入ってみると急に風が弱まった。ここでしばらく休憩とする。斜面前方には真っ白な斜面と真っ青な空、その中を不安定な雲が凄い勢いで動いている。ここから一気に頂上を往復してしまうのが良さそうだ。雷電山へはほとんど登りらしい登りがなく、向かい風のみが進路を邪魔している。雷電山は手前のピークの奥に低くゆったりと広がって見えているが、進み始めると、思っていたほどの距離感は感じない。後ろを見れば先程までの岩内岳がかなり遠くなっていた。順調、順調。4kmの距離を時速4kmで歩けば1時間、だが、すでに1時間半を過ぎても到着していないのだから、速いように感じていてもそれなりに強風のあおりを受けているのだろう。

 雷電山の頂上は平凡な雪原だった。「たいせつにしましょう三角点」の棒杭のみが半分顔を出していた。遮るものが何もないので、風だけが異常に強い。金麦を雪面に立てて1枚、せっかくだからこれをやっつけることにした。強風にさらされていても厳冬期用のオーバーヤッケはさすがである。風下側に体を向ければそれなりにはゆっくりと過せる。おまけに懐の中ではライターも着火するので、ついつい休まぬつもりがゆっくりとしてしまった。こんなメジャーな山は強風でもなければ多くの登山者で賑わっていたに違いない。こんな素晴らしい頂上を貸切で味わえるのは強風のおかげである。

 さて、復路。いよいよ追い風である。背中から押されるように足取りも軽く雷電山を出発する。1174mの風のない地点まではあっという間の到着となる。ここではゆっくりと休む予定でいたが、追い風に押されながら進んでいる分には大して疲れを感じない。水分だけ補給してすぐに出発とする。岩内岳への登り返しはさすがにペースが落ちるがわずかのもの。昼もだいぶ過ぎて誰も居なくなった頂上にはここを出てから約3時間半で到着となる。まずはほっと一息。あとは下るのみだ。下で待っているチロロ2さんに電話を入れてから気分良く下山に入る。

  ところが、この日の核心部はここからだった。岩内岳の頂上からは雪渓上に足跡があり、先行者は登山道へは下り過ぎたことに気付き、途中で登り返していた。私はどうせ下ったところでスキー場、そのまま下れば良いさと下ることにする。雪渓があるうちは快適に標高を落とすが、スキー場にも関わらずハンノキが茂っているのが解せない。下に見える大きな建物まで下れば何かあるだろうと、そのまま下って行く。建物まで下ってみて判ったのは既に使われてはいないこと。朽ちたゴンドラのようなものが地面に放置されていて、窓ガラスが各所で割れている。建物内部も空洞化された感じである。そうか、もう使われてはいないんだ・・・ そう思いながらスキーコースらしきところを探したが、結局はどこも笹薮で、おまけに背丈以上あるから本格的である。

 後で調べたところでは、2001年に運営会社が変わり上部の施設を閉鎖したらしい。15年という年月はハンノキや笹を成長させ、自然回帰をかなり進ませたようだ。さらに下ると、途中で以前使っていた道路に飛び出したのでラッキーと感じたが、中腹のリフトの駅に近づいたところで再び背丈以上の藪漕ぎとなる。その後も藪漕ぎは続き、おまけに俄かにツル植物も増えてきて、これに絡まれては身動き1つもままならない。ハサミをザックに入れておくべきだったと後悔したところでしょうがない。何とか無理矢理進んで、現在も使用されている第一リフトのエリアへと飛出す。気が付けばストックの下半分が消えていた。もともとが欠陥商品と言われていた代物なのでしかたがないが、後味の悪さは否めない。予定よりも30分遅れての下山となる。

 逆風の中を何とか生き抜き、時節到来で追い風・順風満帆、そして慢心・落とし穴・・・世間によくあるパターンである。今回の山行はそんな意味では正にそれを地で行ってしまった格好だ。自分の甘さを垣間見ることになってしまった今回の顛末、ご先祖様からの警鐘と肝に銘じておくことにしよう。(2016.5.8)

参考コースタイム】岩内国際スキー場 P 7:45 → 岩内岳頂上 10:10 雷電山頂上 11:55、〃発 12:20 岩内岳頂上 13:35 岩内国際スキー場 P 15:25 (雷電山まで  登り4時間10分、下り3時間5分 休憩時間を含む)    

メンバーsaijyo

 **山行写真**

岩内岳頂上からの眺望

岩内岳頂上からニセコの山々を見る 一番奥には後方羊蹄山が見える

 

縦走路から振り返って見た岩内岳

 

縦走路から見た目国内岳(右)とニセコの山々

 

雷電山がぐんと近づいた

 

雷電山頂上の風景   写真からは強風は見えない

 

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