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       ポンサマッケヌプリ(931.1m)

  

  

阿寒湖からポンサマッケヌプリを望む

      /25000地形図コトニヌプリ

林道の途中でテント泊
800m台地への登り(山遊人さん提供)
800m台地上は変化に乏しい樹林帯となる

昨日のコトニヌプリに続き、今日は ポンサマッケヌプリ(931m)・点名「本様毛」を目指す。網走・伊藤氏によれば現在の地形図にこの山名は載っていないが、「北海道地名誌」NHK北海道本部編)や「消えてしまったアイヌ語の山名」(渡辺隆著)には載っているとのこと。阿寒国立公園の名勝「双湖台」の真正面に見える実に穏やかな山だが、この眺めを一つの作品として捉えた場合に、主役であるペンケトー・パンケトーと周囲の空間との調和を保つ役割を担っているため、多くの人に見られているわりには山としての知名度はゼロに等しい。また、近くにはサマッケヌプリがあり、こちらが大きなサマッケヌプリということで一等三角点もこちらの山に設置されている。実際のところは山域の広さも標高もポンサマッケヌプリが勝っているのだが、如何せん山としては山容がおとなし過ぎる。縁の下の力持ちということで、ここではせめて本家のサマッケヌプリとでも考えることにしよう。

ポンサマッケヌプリの頂上へ やっと頂上に到着する

「ランプの宿 森つべつ(旧津別温泉フォレスター)」から伸びる林道上に昨夜はテント泊、ここからのスタートとなる。この地味で目立たない山を目指したきっかけは、当サイトの掲示板にいつも訪問して頂いている網走・伊藤氏が勧めてくれたビューポイントをぜひこの眼で確かめてみたかったからだ。この外にも糠真布やラサウ沼など、道東の隠れた景勝の地は数多くあるようだが、機会あれば必ずどこかでそれらの秘境も訪れてみたいと思っている。

早朝の雪面は硬く、今日のような長いルートでは助かるところだ。津別川支流の無名川に続く林道を最大限利用、上部の樹林帯の斜面に取り付くところまでは昨日と同じである。違うところといえば、標高が上がるごとに斜面の傾斜が増してくることだ。一息入れていると先ほどまで歩いていた林道上にスノーモビルの轟音が響き渡り、こちらに迫ってきている。台地状の縁に出るあたりはかなりの斜度となり、朝方のカリカリ状態では、それなりのスキー技術がなければここを楽しむとはいえないのが正直なところだ。だが、この大斜面は総じて傾斜も樹林の間隔もよく、深雪の頃であれば正しく涎の出る美味しい斜面と化すことだろう。yoshidaさんを先頭に大きくジグを切って台地上へと回り込む。

雄阿寒岳とパンケトー   頂上から少し下ったビューポイントから

標高800mの台地上へ出ると景観は一変、高原にでもいるような澄んだ空が広がり、昨日登ったコトニヌプリ付近の山々の連なりが眼下に広がっている。樹林の合い間、遥か遠くに真っ白な斜里岳が見える。真っ白なその姿は美しさといい迫力といいやはり別格だ。我々はポンサマッケヌプリの頂上へと向かうが、残念ながらとても山の頂上部を歩いているとは思えない平凡な景観が続いている。yoshidaさんによれば右側の沢形がルート取りをする上での目安とのこと。私が中央寄りに進んでしまったためか、特に目立った地形的な変化は見られず、広い樹林帯の中を淡々と進む。それでも何時しか標高を落としていたのか、広い829mコル付近には到達したようだ。あとは樹林帯の中をポンサマッケヌプリ目指し一直線、前方のわずかに起き上がったように見える白い雪面(登り斜面)のみが目標物だ。登っている感じはほとんどないが、後や横の雪面を見れば上がっていることは確かである。台地上に上がって40〜50分で枯木が林立し、樹木はうるさいが雄阿寒岳が見える地点を通過する。yoshidaさん曰くはこれが見えれば頂上は近いとのこと。

確かに近かった。20分も進むと前方に真っ白な丘状の高みが現われる。一目見てすぐに頂上だと判った。長年こんな山ばかりやっていると、頂上は感覚的に判る。潜在的な頂上観を一つ一つ挙げてみたところで何の足しにもならないので止めておくが、頂上の持つ独特の風格というものは確かに感じるものだ。樹木が少なく、展望も期待できそうだ。目前に広がる大パノラマを楽しみにしつつ、頂上へと上がる。この樹海ともいえる広い樹林帯の最高地点である。ところが疎林が邪魔してパンケトーや雄阿寒岳がすっきりとは見えない。頭を上下左右に移動すれば昨年5月に登ったイユダニヌプリの特徴的な姿がかろうじて確認できる。

雌阿寒岳の遠望も良い (山遊人さん提供)

伊藤氏が言っていた5分下ったビューポイントを探しにyoshidaさんは既に頂上下の雪原に下ったようだ。しばらくその様子を見ていたが、yoshidaさんが雪原の一角でザックを下ろした。あそこだ!…「景色いいぞ」の声が聞こえる。我々もすぐに頂上を後にする。見える見える、真っ白なパンケトーと先ほど目にした斜里岳に勝るとも劣らない雄阿寒岳の雄姿が遮るものなしに広がっている。いや、間近に迫っている分だけ、こちらの方が絶対に勝っている。雌阿寒岳とセットで日本百名山入りしているが、青空に向かってスッと伸びる姿は圧巻で、一山だけでもなかなかの名峰といえる。さらに右側には真っ白な雌阿寒岳、針葉樹林に覆われて黒く映るフップシ岳など、白い阿寒湖を挟んで向うに見えている。正しく第一級の眺望である。樹木が途切れたこの地点こそが伊藤氏推薦のビューポイントと信じて疑わなかったが、後日の当サイト掲示板への投稿で、パンケトーの全景となっていた。他にもひょっとしてもっと視界が開けた場所があったのだろうか…しばし考えたが、今となっては後の祭りだ。ただし1つ言えることは、ここからの眺望が今回の道東遠征中、断トツだったということで、これだけでも十分に満足できたことは言うまでもない。

途中の林道まで迫っていたスノーモビルも800m台地までは上がってこなかった。ポンサマッケヌプリの認知度の低さがモビルの走行コースとはならなかった理由だろう。そんな意味ではこの山も地形図上は無名のままでいる方が良いのかもしれない。852m標高点からの滑りは雪が腐ってきたこともあって素晴らしかった。スキーが上手なyoshidaさんはあっという間に視界から消えてしまった。途中一瞬ではあるが遠くの林間にyoshidaさんの姿を見た。“水を得た魚”とはこんな状態を表す言葉なのかもしれない。(2011.3.20)

 

【参考コースタイム】テン場 8:05 オサッペヌプリ頂上 10:40、〃発 11:15 → テン場 12:25 ランプの宿 森つべつ」P 12:55 (登り 2時間35分、下り 1時間40分・テン場の撤収時間も含む )  

 【メンバー】yosidaさん、山遊人さん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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