奔別岳(823m)
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1/25000地形図 「芦別湖」
炭鉱全盛の時代を今に伝える櫓 (幾春別・旧奔別炭鉱) |
作業道基点に車を置く |
高さは2〜3mと低いが、どうしても登れず、高巻くことにする |
かつての住友鉱山・奔別炭鉱で名を馳せた“奔別”の名が付いた山を地形図上に見つけ、ぜひ一度、その頂きに立ってみたいという衝動に駆られる。小学校5年の現地学習で奔別炭鉱へ行った。まだまだ炭鉱が全盛の時代であり、そこには3番方を明けた多くの “やま”の男たちが坑道から上がって来る活気に満ちた現場があった。その後、この炭鉱は昭和46年に会社の合理化のために閉山となり、多くの人々がここを去る。それから更に30年以上が過ぎ、朽ちてはしまったものの、東洋一を誇っていた同炭鉱の立坑櫓跡が当時の賑わいを今に伝えている。正に戦後・昭和史の貴重な一コマである。
奔別岳は昨年の秋に奔別沢沿いの林道を偵察に行って以来、大事に暖めていた計画である。一週間前にこの計画を実行に移したが、簡単には頂上を踏ませてくれなかった。今回は林道偵察から数えて五回目の林道走行であり、今さら地形図で位置を確認する必要もない。週半ばに本道を通過した台風16号の影響か、途中には倒木も見られる。きのこ採りのグループが小型トラックに取り付けたスピーカーから回りに憚ることなく演歌を大音量で流している。熊避けとのことであり、その中の一人が言うには付近は
“ヒグマの巣”とのことである。作業道を歩いているときに、かなり古いヒグマの糞を見るが、それ以外には足跡すら見ることがない。多くはエゾシカの足跡である。沢の下降中、大型の動物がいきなり斜面を駆け上がって行ったが、これもエゾシカである。
沢形は頂上付近まで続く | 奔別岳頂上はこんな感じ・・・ |
頂上から美唄山をズーム | オオカメノキの実も赤くなり、秋の気配を感じさせる |
作業道終点から入渓し、すぐに先週見落とした420m二股が現れる。前回はさらに上流の520m二股を境山と奔別岳との分岐と思い込んでいたため、この420m二股は行きにも帰りにも確認していない。すぐに二段の滝が現れ、その上が前回間違えた二股である。先週よりは多少水量は多いが、やはり左股の水量はかなり少ない。今回は地形図をしっかり確認して右股へ入る。すぐに現れる次の二股は左である。樹木には昨年のものと思われるピンクテープが巻かれていて驚かされる。不思議と頂上と入口には標識が見当たらず、この標識の主のこの時の行動がつかめない。水は次の二股を過ぎて少しのところで枯れてしまい、密生したシダ類が覆い被さる枯沢が上部へと続いている。頂上への距離が縮まって行く割には標高差が縮まらない。頂上部と思われる付近の樹木がかなり近く感じるようになると傾斜が増してくる。悪いことに一枚岩のスラブ状で、足掛かりがあるところは何とかなるが、ないところではスパイク地下足袋の威力も発揮できず、樹林の密度が濃い、小尾根上へ向けてのトラバースである。尾根上も傾斜はあるが、掴むものがしっかりしているので何とかなりそうである。先週は小尾根を一つ隔てた隣の斜面を詰めていたが、そこもスラブ状であり苦労させられている。奔別岳の北西面は概ね同じ状況なのかもしれない。この急傾斜は頂上直下まで続く。
やがて傾斜が緩くなり、少しの藪漕ぎで頂上と思われる地点に到着する。奔別岳の頂上には三角点がないため、周りの地形を地形図と照らし合わせる確認作業が続く。登りやすそうな樹木に上がって、南東にある双耳峰や頂上へ集まる藪に被われた尾根を確認し、間違いなく頂上であることを確かめる。先週、デジカメ操作の失敗で上手く撮れなかった後芦別山群の写真撮影を今回こそはと楽しみにしていたが、樹木に囲まれている頂上では視界がほとんど利かない。木々の間からは美唄山となぜか留萌・ポロシリ山だけが見える。藪を漕いで移動はしてみるものの、やはり夕張山地の山々は見えずじまいである。
往路を下降中、左手に樹林の繁った高みを見つけ、もしかしたら頂上…?と不安になる。再び頂上へ戻り、この高みを経由してから下山することにするが、結果的には頂上から西に延びる尾根上のコブであった。そのままコブの西側のコルまで行き、往路の沢へ下降することにする。斜面の傾斜は比較的緩く、難なく往路で通過した二股へ合流する。(2004.9.5)
【ドミニカ】
ドミニカ料理は美味しい! | 広い敷地に建つPa’Mi Casaと主人 |
三笠市立博物館から林道へと向う分岐を入ってすぐのところに、小さく “ドミニカ10m→”の看板を見つける。奔別岳とドミニカ、何とも不釣り合いで面白いが、全く関係がないわけではない。奔別炭鉱閉山の時には多くの男たちが“やま”を求めてドミニカ共和国へ渡ったというニュースを耳にしたことがある。
下山後、早速立寄ってみるが、道路の入口からでは想像もつかない広い敷地の中に洒落た建物が建っていた。Pa’Mi
Casa(
01267-4-3440)という名のコーヒーレストランで、日本人の奥さんとドミニカ出身のご主人が昨年10月から営業を開始したとのこと。食事メニューは700円に統一されていて、コーヒーはもちろん苦味の効いたドミニカ産である。カップルが多い店内で、藪漕ぎ山行を終えたばかりの我々山ヤは少々場違いだったかもしれない…
【参考コースタイム】直登沢の出合・登山口 7:55 → 作業道終点 7:25 → 奔別岳頂上 10:15、〃発 10:50 → 作業道終点 12:15 → 直登沢の出合・登山口 12:35
【メンバー】 saijyo、チロロ2