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      1247m峰「通称;ピウケナイ山」(1247.7m)

あまり特徴がない通称「ピウケナイ山」の山容

    1/25000地形図「石狩瑞穂 

林道入口の看板には「ピウケナイ展望台」の名で記されていた
砂防ダム近くのカーブに車を停める

昭和60年の「国際森林年」に前後して、北海道では林野庁の林業普及指導事業に便乗する形で4つの森林施設が作られた。その1つが旭川21世紀の森で、森林及び林業の機能と役割を広く道民に理解させ、今後の森作り推進のための啓発や教育を目的にリクリェーション施設などが整備された。私が思うにこれらの設備は少々整備し過ぎの感があり、言うなれば作られた自然で、ゴルフ場のような不自然ささえ感じられる。一度東大の演習林へ入ったことがあるが、ここには天然林が多く、木々の太さやその美しさには格別のものがあったと記憶している。今や道内のどんな山奥に入っても一部の保護地域を除いては植林された樹木が目立ち、なんらかの人の手が加わった状態となっている。21世紀に入って10年、これからの森林はそのままの状態を保つといった見地でものを考えた方が良いと思うし、温暖化が叫ばれるこれから先はそんな時代であるとも思う。

エゾノリュウキンカが黄色の美しい花を咲かせてくれる 林道はすっかり積雪に覆われている
旭川峠の道標、ここまでは車が入れるようだ ピウケナイ山頂上はトドマツの疎林帯の中にある

21世紀の森を訪れるのは6年前の米飯(ペイパン)山以来だ。この時に気になったのが本安足山とそのとなりの1247m峰で、何かの機会にはぜひ再訪をと考えていた。今回は幌内山地の神居山を計画していたが取り付きで失敗、比較的容易と思われる本安足山へと急遽転進することにした。とはいえ、札幌からの日帰り山行で既に時計は11時を回っており、かなり苦しいスタートではある。愛山渓へと抜ける愛山米飯林道は鎖のゲートで閉じられているが施錠はされておらず、入山名簿に記帳さえすれば、入林は可能のようだ。ゲートから2Kmほどの砂防ダム付近まで車を乗り入れる。ここから先は雪渓が一部残っていて徒歩で行かなければどうにもならない。雪渓にビールを冷し、すぐに出発とする。

河川は融雪のためにかなり増水、沿道には雪解け時期の象徴とも言えるエゾノリュウキンカが黄色い花を咲かせている。すぐに地形図上の大きなつづらとなる。直線で斜面を上がれば距離にして約600m(標高差200mほど)だが、4回のつづらで歩行距離は約3kmと、5倍もの距離を歩かなければならない。気温が急上昇したこともあって、ここが一番の辛抱を強いられるところだ。途中、夏場であれば見落としてしまいそうな枯れた小さな沢形が、この時期では見事な滝となっていて、単なる林道歩きとも思える苦行を癒してくれる。結局、登りきるのに約1時間を要してしまった。

小沢の増水についてはこの時期だから当然と思っていたが、登りきったコンタ790mのカーブを過ぎる辺りから、いきなり季節が一ヶ月ほど逆戻りしたような銀世界へと変る。ちなみにこの日の旭川は気温25℃と、夏日となっていた。これだけの積雪状態であれば増水や見事な滝も当然肯けるところである。埋まりそうで埋まらない雪渓が延々と続いている。潜在的なものか、いつものような足運びとはなっていないようだ。ひとシーズン雪山をやってきたこの時期にも関わらず、足腰の変なところが痛くなる。いっその事、ザックに括り付けているワカンを装着した方が精神的にも肉体的にも足への負担を少なくしたのかもしれないが、時間的な余裕の無さがついそんなことも億劫にさせた。

ピウケナイ展望台から望む愛別岳と安足間岳

雪渓歩き約4kmで旭川峠の看板がある分岐に到着する。時間は既に13時を回っており、冬期であればこれ以上の行動は無謀といえる時間帯である。地形図を見る限りでは本安足山へはまだまだ遠く、スキーでもあれば帰路の時間短縮も期待できるところだが、ツボ足ではどうにもならない。二兎を追うもの一兎も得ず、ここは本安足山を諦めた方が賢明である。代替本命となった1248m峰であるが、旭川峠の道標にはピウケナイ展望台へと記されている。夏場には車で頂上まで行けるのかとも思ったが、ここから先の車の通行は禁止されている。21世紀の森の施設として展望台として整備されているのかもしれない。後で調べたところこの山の三角点名が「日受内」となっていて、そのためか通称ピウケナイ山とも呼ばれているそうだ。日受内の名はこの山の南側を流れるピウケナイ川から来たもので、この川は大雪山に水源を発していることもあって、融雪時には激流となり「襲いかかってくる川」という意味のアイヌ語「ピウケナイ」で表現されている。

ピウケナイ展望台に到着

ピウケナイ展望台へは冬の林道歩きといった感じとなり、山登りといったイメージとは程遠い。さすがに行動停止時間を14時くらいまでとするが、到達できるかどうかの不安は隠せない。真っ白な大雪山が迫力ある姿で迫ってきて、遠くには天塩岳を中心とする真っ白な山々やニセイカウシュッペ山も遠望できる。いつの間にか標高を上げたようである。辺り一面雪渓とあっては林道らしきところを辿る必要もなくなった。1247m峰を目指して高みへ高みへと真っ直ぐに登って行く。広い雪面も徐々に狭まり、針葉樹林が疎林帯となった頂上部へと登り詰めた。本安足山を諦めてからここまで50分、意外に近い頂上であった。後はこの雪原の中の三角点付近に到達すれば登頂である。今の時代は便利なものでGPSを持った登山者が多く、三角点や標高点近くの木々に位置を示すピンクテープが結ばれていることが多くなった。展望はやはり疎林が邪魔する頂上よりは「ピウケナイ展望台」の方が優れている。ここの展望の良さはやはり大雪山の眺めである。山岳展望は高ければ良いというものではなく、逆に少し低い位置から眺めた方が迫力は増すものである。ピウケナイ展望台には整地された10畳ほどの平地とブルーシートで覆われた何か判らないものが雪面から顔を出していた。後日、YouTubeにUPされた動画を見てこのブルーシートの中身が判ったが、大雪山の山名が記された案内板であり、ずいぶん親切丁寧なものと驚かされた。展望の素晴らしさは自分でそれを見つけた瞬間に大きな感動を感じるもので、ここまでの過剰サービスは余計なお世話としか言いようがない。

 今回の山行では本安足山へは届かなかった。敗因は神居山の取付きでもたもたしてしまい、この山への出発時間が遅れてしまったことにある。結果的に所要時間だけを考えれば登頂は十分に可能であったが、時間的な余裕のなさは何事に対しても焦りとなって現われた。やはり登山の基本は早め早めの行動に尽きるということだろう。(2010.5.23)

LuckyさんのBlog「日受内(1247.7m)」へ

参考コースタイム】砂防ダム P 11:25 旭川峠 13:05 ピウケナイ山頂上 14:30、〃 15:05 砂防ダム P 17:00 (登り3時間5分、下り1時間55分)

メンバーLuckyさん、saijyo、チロロ2

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