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      ピウ岳(567.1m) ・・・貫別三山の一角

 

/25000地形図 「新冠湖」

アイマベツ沢最大の二段の滝の下段(7〜8m)
上流部、3〜4mの小滝を登る
アイマベツ沢最大の二段の滝の下段(7〜8m)
新冠湖への途中に車を置く
どこにでも咲く花であるが、ムシトリナデシコが美しい
川が堰き止められ、プール状となっている
オオバミゾホオズキでが、目を楽しませてくれる

北日高主稜線の西側の少し離れたところには、貫気別岳を主峰にリビラ山、ピウ岳といった1000mを越える山塊があり、新冠湖を挟んで日高の峰々と立派に対峙している。山塊自体は低く地味であるが、そこからの日高山脈の展望は第一級と言える。特に残雪の残る時期や晩秋の初冠雪の頃は圧巻で、北日高の山並みを余すとこなく望むことができる。以前にこの三山は終えているが、ピウ岳の頂上だけは深い薮に阻まれ判然とせず、適当なところで頂上とした記憶がある。そういった意味でこの山は、何れ再度訪れなければならないと思っていた。10年以上も前の話で、中高年登山といった言葉すら聞かれない時代であり、この山域などは登山者の間では話題にも上がらなかった。現在は登山ブームとそれに関わるガイド業の隆盛もあり、準メジャーな山域となっているようである。特にリビラ山は旧門別町の最高地点ということで、登山道が開削されガイドブックにも登場するようになった。

今回、山の時計のEIZI@名寄氏からの誘いがあり、再びピウ岳を目指してみることにする。以前のリビラ川からのルートは林道状況が不確実なこともあり、新冠湖側・アイマベツ沢を詰めての再チャレンジである。地形図に載っているアイマベツ沢沿いの林道はここ1〜2年の間に整備されたようで、側壁のコンクリートの土留めは新しく、庸壁には芝まで貼られている。林道にここまでする必要があるのかと何時も思うが、私には理解できないそれなりの理由があるのかもしれない。ところどころに荒地で生育すると言われているムシトリナデシコがピンク色の美しい花を咲かせている。野草に疎い私は、最初はニホンサクラソウかと思ったが、花びらや葉の形が違うようである。ヨーロッパからの帰化植物でどこにでも咲いているようであるが、美しいものはやはり美しく、カラスアゲハが花の周りを嬉しそうに舞っている様子が印象的である。

林道の入口付近とは打って変り、途中からの路上は雨裂が深く刻まれ、小沢の水流を逃がすためのエンビ管が随所で剥き出しとなって無残な姿を曝している。人間の計算を遥かに越えた自然の破壊力と言える。地形図上の林道終点付近で林道を離れ、沢筋へとルートを取る。流倒木を避けながらの好天に恵まれた沢遡行の開始である。30分ほどで、コンタ600m付近の両岸が迫ったゴルジュ地形となる。コンタがかなりくっ付いている部分があり滝を予測していたが、予想通り二段20m(上段12〜13m、下段7〜8m)の滝が現れる。このルートはガイド登山のパーティもトレースしているようであり、それなりの巻きルートがあるのは明らかである。両岸とも高巻き可能と見たが、右岸の取り付きが容易な感じであり、巻きルートの途中にはピンクテープが取り付けられていた。ただしこのルートも、途中で足を滑らそうものなら、滝へ真逆さまだろう。できればフェルトではなくスパイク地下足袋で、潅木や笹などからは絶対に手を離さぬよう、慎重に巻きたいところである。左岸側は潅木がしっかりとはしているが、見た目には厳しい感じだ。一段目を抜けるまでは良いが、二段目では滝の直登となり、シャワークライミングとなるだろう。帰路、往路でとった右岸の巻き道ではなく、滝中の懸垂下降を試みるが、上段の滝では30mロープが届かなかった。

ピウ岳頂上にて
アイマベツ沢最大の二段の滝の下段(7〜8m) 頂上直下からは大きなイドンナップ岳が望まれる

ゴルジュ地形を抜けると再び平凡な河原歩きとなる。しばらくは穏やかな沢相が続くが、土砂が溜まって堰きとめられたのか、プールのようになった地点を通過する。水深3〜4mといったところであろう。岸の笹につかまりながら、できるだけ体を濡らさぬよう慎重に通過する。ここの通過後直ぐに、頂上へ向う小沢の出合となる。詰での余計な藪漕ぎを強いられないためには、ここの分岐選択は慎重でなければならない。しばし協議の末、メンバーの見解が一致、いよいよ小沢への突入となる。小沢は順層の快適な登りとなり、ぐんぐん高度を上げて行く。途中3〜4mの小滝が現れるが全く問題はない。小沢へ入ってからは黄色い可憐なオオバミゾホオズキが咲き誇り、疲れを癒してくれる。最後は笹薮こぎとなるが背丈は低く、予想していたよりは楽に進むことができる。とはいえ、すぐ先に見える頂上への距離はなかなか縮まらない。フェルト底の地下足袋では踏んだ笹薮が滑るため、冬場のキックステップと同様にけり込んで登ることにするが、滑らずに登れた代償として古い沢タビの先が破れダメになってしまった。背後にはイドンナップ岳を中心とした日高山脈の山並みが広がる。

いよいよ最後の三角点探しと思っていると、なんと頂上を示す看板が付けられている。それも三角点のすぐ脇に、である。立派な看板ではあるが、個人的には頂上標識の私的な設置には賛同できない。だれもが自分の思い入れのある頂上には何か登頂の証を残したいと思うものである。しかし、だれもが証を置くようになれば、頂上はゴミ捨て場同然となり、収拾がつかなくなる。例え頂上標識といった名目であっても、良識ある登山者はそうはしないものである。ピウ岳のような登山道のない山へ登る登山者は、ルートファインディングにも長けており、頂上を示す看板など“余計なお世話”と言えよう。藪山の三角点は、頂上の証になるものではないが、自分で探し当てこそ到達感があると思っている。おかげで難なく三角点が見つかり、全く拍子抜けである。

以前とは違った頂上風景が広がり、今度こそはしっかりとピウ岳頂上を確認することができた。適度に緊張感もあり、日帰り登山には適したルートといえるが、今後ますます増えて行くであろう、こういった未知の山への登山には、マイナーであればマイナーなりのルールが必要であると実感させられる思いであった。(2006.7.9)

■同行して頂いたEIZI@名寄さんの山行記

 参考コースタイム】 アイマベツ沢林道入口 6:40 → 直登沢入口 9:05 → ピウ岳頂上 10:10、〃発 11:00 → 直登沢入口 11:40 → 途中、懸垂下降を楽しむアイマベツ沢林道入口 14:10

メンバー】EIZI@名寄氏、キンチャヤマイグチさん、saijyo

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