ピリガイ山(1167.2m)
1/25000地形図 「ピリガイ山」
620m二股付近にて |
ピリガイ山頂上にて |
一等三角点「似染内山」とマグナムスーパードライ |
神威山荘の手前からペテガリ山荘への連絡路へ入る |
ピリガイ山北面の直登沢への入渓地点にて |
アジサイが実に美しい |
沢の水量は少ない |
荻伏から神威山荘へ向かう元浦川沿いの林道はかなり長く、林道基点からは約18q入らなければならない。終点の神威山荘は立派な山小屋で、神威岳へ向かう多くの一般登山者に利用されている。一方、尾根一つ隔てたペテガリ山荘へ向かう林道は、途中からは一般登山者には解放されていないため、現在はペテガリ山荘まで車を乗り入れることはできない。ペテガリ岳を目指すのであれば、地元主催の登山会に参加すれば西尾根コースから登ることも可能であるが、ペテガリ岳以外の付近の山へのアプローチは日高横断道の工事の影響もあり、未だに閉ざされた状態である。
今回目指したピリガイ山はどこと言って特徴のある山ではないが、強いて探せば地形図名にもなっていることから、山好きであればしばしば目にする山名であることくらいであろう。主稜線上の主だった山々と比べ、山容や標高が見劣りすることもあり、アプローチの悪さも手伝って、この山を目指したという話はほとんど耳にしない。神威山荘への途中から沢を詰めることも考えられるが、ネームバリューのないこの藪山へ、難しそうな沢から敢えて沢詰で登ろうなどと考える登山者はいないように思われる。林道途中の入林者名簿には道内の山岳界の重鎮であるY氏の名前があり、5月にこのピリガイ山を目指しているようである。林道の雪が消える残雪期であれば、意外に楽しい日帰り山行が可能かもしれない。我々は一番容易そうなベッピリガイ沢川側からのアプローチであり、神威山荘とペテガリ山荘の間で何時の頃からか利用されるようになった、いわゆる“連絡路”からこの山域へ入ることにする。
神威山荘の少し手前の元浦川の川原へ向かう作業道が連絡路の入口である。このルートは小沢沿いに続き、ピンクテープが踏跡を示している。登りは標高差約300mのかなり明瞭な踏跡で、登山道と言ってもよいほどである。滝は一ヶ所で、右岸側の巻ルートを登る。
“峠”からは約160mの下降となりベッピリガイ沢川の河原へと続いている。途中、藪が被っているところもあるが、注意していれば迷うことはない。因みに同行した八谷夫妻は二日前からこの峠を二度往復して、今日で三日連続の峠越えである。一日目はベッピリガイ山、二日目はKo玉さんも加わりウチイチ山を登っている。同じところを3回も往復する気概にはまったく脱帽である。
河原からは林道を進み、ピリガイ山北東面の直登沢出合までは約30分である。途中、重機も置いてあり現在も使用されている立派な林道である。出合からは水量の少ない平凡な沢相が続く。河原の石も細かく歩きやすいため、581m二股までは意外に速い。途中で小さな滝が一ヶ所あるが、通過には全く問題はない。こから先は地形図を見る限り、コンタも混んできて険悪そうな感じである。恐る恐る入ったところ、屈曲点に一ヶ所2〜3mの滝とは言えないような滝がある程度で、ここは右岸側から難なく通過することができる。
620m二股を過ぎると、この沢最大の4〜5mの滝が現れシャワークライミングかと思ったが、左岸側が意外にしっかりしていて、ここも容易に登ることができる。さらにスダレ状の3〜4mの滝が現れるが、近づいて行くと全く平凡である。780m二股を左へ入ると直ぐに崩壊地となり、沢形は消えるが左岸側のルンゼ状から枯沢が上部へと続いている。水流があれば小滝となる岩盤が数ヶ所、あとは消えそうで消えない沢形が標高1000m付近まで続く。1000mを越えると本格的な藪漕ぎとなり、稜線は近い。稜線上へは左へ寄りすぎたため、頂上まで更に数百mの稜線上の藪漕ぎである。一等三角点が設置されている頂上は少し小高くなっているので判りやすい。
目標としていた時間よりも約30分遅れで頂上に到着する。今年に入ってから何かしらの測量作業が行われていたのか、新しい焚き火の跡や静内町側へ続く刈り分けがあるが、その刈り分けがどこまで続いているのかは確認できない。ひょっとしたら刈り分けを辿っての夏山登山も可能かもしれない。頂上は樹木が生い茂り展望はほとんど利かない状態であるが、三角点の周辺だけはきれいに伐採されている。天気予報では西から寒気団が入ってきて、大気がかなり不安定な状態との予報であるが、頂上到着時は晴れていて日差しが強く、とても雨が降り出すとは思えない空模様である。ただし、下山時には遠くで雷鳴が聞こえる。
振り返ると1839m峰が見える | 途中から見る、ペテガリ岳(左)とベッピリガイ岳(右) |
頂上からは北東へ針路を取り、登りでトレースした枯沢を目指す。強烈な薮を下降するが、下りであれば何とか下れるものである。この笹薮を登りで使うとすれば、労力はかなりのものであろう。枯沢下降中からは薄暗くなり、雨が降り始める。途中で雨脚が強まるが、林道へ近づく頃には雨も上がり、再び陽も差し始める。その後林道を歩いて連絡路へ戻る途中、再び雷鳴が轟きバケツをひっくり返したような大雨となる。近くの尾根上の樹木が被雷したようで、雷鳴が山々にこだましている。間近に見る自然の威力には全く圧倒される。その後も短時間に何度か大雨と雷と晴天がくり返される。
車に戻って着替えた後でいつも以上の疲労感と寒さを感じる。雨具を持っていたにも関わらずつい億劫で着なかったため、エネルギーを無駄に消費してしまったようである。ずぶ濡れ状態では着ても着なくても同じように感じられたが、やはり体温保持のためには着るべきものは着なければならなかった。基本を守らない行動は、いつかは命取りとなることを、しっかりと自分に戒めなければならないようである。(2004.8.15)
【参考コースタイム】 元浦川“連絡路”登山口 5:05 → ベッピリガイ沢川(河原) 6:55、〃発 7:10 → 北東面の直登沢出合 7:40 → 581m二股 8:20 → ピリガイ山頂上 11:30、〃発 12:05 → 北東面の直登沢出合 14:50 → ベッピリガイ沢川(河原) 15:40 → 元浦川“連絡路”登山口 17:20
【メンバー】 hachiya、M.hachiya、ko玉、saijyo、チロロ2