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 ピリベツ岳(1602m)

十勝三股から見る通称オッパイ山 左が ピリベツ岳

1/25000地形図 「十勝三股

西クマネシリ岳登山口に車を置く
三の沢川を進む
ピリベツ岳への途中から見る西クマネシリ岳

  ピリベツ岳はご存知“オッパイ山”の一角で、当サイトとしては5年ほど前に主となる西クマネシリ岳に登っている。以来、残ってしまったピリベツ岳はずっと課題としていたが、この山は以前に既に登っており、さらに改めてピリベツ岳のみを登りに行く気にはなれなかった。今回は以前から当サイトを見てくれていたというIkkoさんのお誘いを受け、残されたこの一山へと向かうことになった。そもそもこの日の予定は南富良野の国境山だった。ところがネット上で調べたところでは降雨確率が70%、現地入りしてもポツポツ雨が降っている。この時期の雨の藪漕ぎ登山を考えればちょっと気持も乗らず、晴れ予想となっているピリベツ岳へと急遽変更させてもらう。

 Ikkoさんとは何度かメールでのやりとりはしていたが、少々緊張の初顔合わせである。以前に「一人歩きの北海道山紀行」sakag氏にメールを入れた頃を思い出す。sakag氏とは以来、年に数度は山行を共にするお付き合いとなり、ネットの素晴らしさはこの時に実感している。人生とは人との出合であり、興味を同じくする者同士がピンポイントで出会うことが出来る、これこそがネット時代ならではの嬉しさの瞬間ともいえるだろう。急遽、前泊の場所を道の駅「しかおい」へと変更、この日はトイレの広いエントランスで遅くまで酒を飲む。難を言うなら、ここのトイレの自動ドアの感知が良過ぎて、少し動いてもガラガラ開いてしまい少々うるさかった。だが、それもアルコールが廻ってしまえばそれはそれで気にもならなくなった。

1415mコル手前の痩せ尾根を行く

 鹿追から約1時間、予定通りシンノスケ三ノ沢林道へと入る。国道から約5kmで終点、そこが西クマネシリ岳の登山口である。この日は本州ナンバーの車が一台、こんな時期でも登山者が入るのだから、さすがにクマネシリ山塊もメジャーになったようだ。以前はもう少し明るい感じであったが、現在は少々鬱蒼としたような気がする。当時は林業が盛んだったこともあるのだろう。以前から“クマの巣”と言われていた山域でもあって何となく不気味さを感じるが、特段ここにクマが多いというわけではないように思う。こういった話は人伝いに伝わることが多く、一度でもクマを目撃しようものなら、何人もの人を介するうちにかなり誇張されてしまう。そのレベルで言えば、北海道はどこでもクマの巣ということだ。

    登山口から三の沢川に沿って先行者の足跡が点々と続く。きっと目指すは西クマネシリ岳だろう。Ikkoさんが右岸側に作業道跡を見つける。そもそもこの日は登山道を辿る予定はなく、西クマネシリとのコルである1415m標高点を目指していた。しかし、利用できるものは大いに利用したい。どこに続くかの興味もあって、この作業道跡を辿ってみることにする。道が上がって行くうちはそれを利用、上がりが止まれば尾根筋を真っ直ぐにと、いつもの作業道跡の利用法である。この時期は下草もすっかり枯れてしまい、どこでも登れるのが良い。根曲がり竹であればそうも行かないところだが、斜面の植生は真っ直ぐなクマイザサ、邪魔するものなく標高を稼げれるのが何よりだ。週末の台風崩れの低気圧が本道の南岸を通過、それに伴う冬型の気圧配置で、ちょうど十勝三股を挟んで西側のニペソツ山や石狩連峰あたりまで雪雲が押し寄せている。ちょうどこのクマネシリ山塊が天気の境目となっているようだ。さすがWebのピンポイント予報である。

 頂上西側の平坦地まで登ってほっと一息だが、木々の上に飛び出して見えるピリベツ岳の鋭角的な姿を見ればやはり圧倒される。もっともこれは目の錯覚に他ならない。実際に登り始めるとこの角度は緩和されるものである。案の定、登高が始まってもさほどの傾斜の変化は感じない。だが、前方には岩壁も見えており、岩壁ともなればこの限りではない。正面突破との話は出ていても、私もIkkoさんも心の奥底では右の緩い斜面から回り込めば何とかなるだろうと考えていた。傾斜も程よく、思っていたよりは容易に標高を上げることが出来た。頂上直下のコンタが緩んでいる地点まで登るが、見れば予想外のハイマツ帯、岩場の基部伝いに登るのが一番容易そうだった。ところが近づいてみれば岩場の隙間が登れるような感じである。大げさに言えば正面突破だが、一番楽そうなのもここである。果敢なIkkoさんがまずは入って行く。全くの岩壁であれば難しいだろうが、隙間の斜面には木々も生えており、多少急傾斜となっても抜けられそうだ。途中、Ikkoさんがビューポイントを見つけて撮影、私もそこから一枚。二ペソツ山は低い雪雲の中だが、軍艦山の高さであれば全容が見えていた。

頂上直下の岩場 先頭を行くIkkoさん ピリベツ岳頂上から見る西クマネシリ岳と南クマネシリ岳(右奥)

 意外に容易に斜面を登り詰め、右側に回り込むと、すぐに頂上に飛び出す。約30年ぶりとなるが、私が考えていた頂上とはちょっと様子が違う。以前はもう少し鬱蒼としていて、木々が視界を邪魔していたように記憶している。今は草地となって開けており、倒れてはいるが頂上標識もある。30年の間に多くの登山者がここを訪れ、また、木々も切られたのかもしれない。雪雲が迫り、期待していた程の眺望は得られないが、西クマ、クマネシリ、南クマネシリの山塊内の山々ははっきりと見えている。周辺の斜面には網の目のような作業道が見られるが、現在はおそらく使用されていないものばかりだろう。時代が移り変わって林業は衰退、十勝三股が全盛だった時代の爪あととも言える山肌だが、葉が落ちて冬迫るこの時期に見るそんな光景は荒漠とした寂しさが感じられかなり印象的だ。

 帰路はチロロ2さんの要望もあって、縦走路からの下山とする。登り返しは億劫で、既にメンバー全員が登っている西クマは、今回はパスとする。以前は踏跡が点々といった感じだった縦走路も、雪さえなければ登山道と言っても良いほど明瞭である。ここのところの登山ブームに乗って、再び息を吹き返したのだろう。1415mコルから下るルートも一般的に利用されているようで、ピンクテープが点々と付けられていた。だが、この日は地形や風の影響からか、ここからの下りは雪が少々深くなっていた。沢形の真ん中は思わぬ落とし穴があり、出来るだけそこを外してルートを取る。下って行くうちに古い作業道跡が現れ、そのまま最初の作業道跡の取り付き地点まで下る。最後はその作業道跡をそのまま逆に進んで登山口へと戻る。最初に利用した作業道跡は登山口の対岸から続いていたようであるが、盛夏には鬱蒼となりそうで、ダニ等を考えればあまりお勧めできない。何はともあれ、もう一歩の後押しをしてくれた頼もしい助っ人・Ikkoさんには大変感謝で、当サイトとしてもやっとのことオッパイ山両山登頂となった。(2013.10.27)

 ※後日判ったことだが、先行者は本州からの登山者ではなく、私も良く知っているFjimotoさんが参加するパーティだったとのこと。メジャーなクマネシリ山塊とは言っても、さすがにこんな時期のこの山に入る登山者は少ないだろう。ニアミス続きの今日この頃である。

【参考コースタイム】 西クマネシリ岳登山口 830 ピリベツ岳頂上 11:40、〃 発 12:00 → 1415mコル 13:05 → 西クマネシリ岳登山口 1440  (登り 3時間10分、下り 2時間40分)

メンバーIkkoさん、saijyo、チロロ2

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