<戻る

 敏音知岳(703.2m)

 

   

国道から見る敏音知岳

1/25000地形図 「敏音知

登山口は道の駅「ピンネシリ」
三吉神社の赤い鳥居を潜るとスタートとなる
登山口の案内板 登山道の様子が詳しく載っている
朝の陽光が期待を膨らませる

 この日の晩に放送される話題の超人気ドラマ「半澤直樹・最終回」 これを見るためには21時までに札幌へ帰らなければならない。携帯・ワンセグで見れば良いとのチロロ3さんのアドバイスに、私の気持は大きく敏音知岳へと傾く。札幌から遠く離れ、遙々音威子府まで来ており、しかも月曜日が休みとあっては急いで帰る理由など何もない。この日登った鬼刺山の雄姿も気になるところである。くつろいでいた天塩川温泉を後に、敏音知岳へと向かうことに決まる。

急斜面に作られた登山道はつづらを繰り返す
急斜面に作られた登山道はつづらを繰り返す

 敏音知山との初対面は今から40年ほど前、この時は今は廃線となった天北線からだった。乗車していた「天北」は、昼に稚内を出て札幌には夕刻に到着するキハ56の急行列車。寝台急行「利尻」からの乗り継ぎで、車中泊の一人旅を満喫していた。高校1年の冬休みで辺りは一面の銀世界、車窓を占領するガイドブックにも載っていないこの山は実に立派で、冒険心をかきたてるには十分過ぎるものだった。しかし、当時の私に冬山などは夢のまた夢、単なる憧れの対象に過ぎなかったのは言うまでもない。

 道の駅「ピンネシリ」はオートキャンプ場やパークゴルフ場、コテージも併設するアウトドアの拠点ともいえる施設となっているが、もともとのオートキャンプ場を「道の駅」としたらしい。道路を挟んで向かいには温泉もあり、我々にとっては全てが揃った便利な登山口となっている。もちろん施設の目玉はこの敏音知岳登山で、登山口へは立派な案内標識が立っている。管理棟の裏側がすぐに登山口で、三吉神社の赤い鳥居をくぐるとスタートである。真っ白い峰に憧れを感じた敏音知岳でもあり、この山に登るなら積雪期と考えていたが、それはそれとして、とりあえずは夏道登山でもOKと自分に言い聞かせる。

 スタートから少しの区間は歩幅の合わない階段を進む。小沢に架かる「カッコー橋」を渡って、その後は森林浴にはぴったりの清楚なトドマツ林を進む。朝からの晴天で、木々の隙間から差し込む朝の陽光が期待をさらに膨らませてくれる。登山道の各ポイントにはいろいろな名称が付けられており、この山はそれだけ多くの登山者に親しまれているということなのだろう。「白樺ノ泉」を過ぎると徐々に傾斜が増して、大きなつづらを繰り返しながら標高を上げて行くようだ。最初の折り返しを過ぎての登り、途中からは鬼刺山が見え始める。思っていたよりも距離が遠いように感じられるが、頂上部の尖がりようは一目でそれと判るほどの切れの良さだ。また、ペンケ山、パンケ山も標高の割には存在感は抜群、次はこれらのピークも踏まなければならないだろう。

振り返るとペンケ山と鬼刺山が見える 頂上がぐんと近づく
三角点頂上を振り返る 頂上に建つ三吉神社

「紅葉の滝」「駒返しの坂」「水松の曲」など、風流を解さない私にはよく判らない看板が立てられている。見る人が見ればきっとそれぞれに奥深い世界が広がっているのだろう。私としてはむしろ木々の間からの光景が気になるところ。ふと、気が付くと利尻岳の山影が見え、道北の山に居る事が実感できるのが嬉しい。急斜面に付けられたつづらをさらに繰り返しながら登り詰め、右側に回り込むと疎林となって明るい雰囲気となる。頂上がぐんと近づいたようにも感じられたが、頭上の斜面を見上げるとまだまだである。ここは焦らずにマイペースを守るに尽きる。やがて左側へと回り込み、大きく視界が広がって、後は頂上へと続く天上の一本道を進むだけとなる。利尻岳をはじめ、木々の隙間から見えていた山々が遮るものなく広がり始め、そのまま小高くなった頂上へと続く。

  この山は贅沢で、いかにも頂上といった雰囲気の展望の良い場所が二ヶ所あり、手前には三角点が埋まっていて、奥の方には三吉神社の祠が建てられている。予想はしていたが、頂上展望が凄い。もちろん秋晴れ真っ只中という好条件も後押ししてはいるが、久々の360°一点の曇りもない光景は見事としか言いようがない。昨年の正月山行で登った知駒岳からイソサンヌプリへの稜線、東側にはポロヌプリ山と珠文岳、南側には大きな台地状の函岳など、もちろんその中でも鬼刺山の姿にはきらりと光るものがある。何よりも、遠くオホーツク海の向こうにサハリンの山影が薄っすら見えるのは感動ものだ。北海道北部の地図がそのままの状態で広がっていた。

 ここで気になったのが東側に伸びている頂上部の尾根だ。見ようによってはこの三角点ピークよりも高いように感じられる。山に登って登頂というには、やはり最高地点に到達しなければ頂上に立ったとは言えないし、皆が頂上と言っているからそれで完了というものでもない。山の登頂とはそういうものだと思っている。要は自分にとって納得行くか行かないかである。この敏音知岳については三角点ピークを囲むように太線のコンタが描かれていて、地形図上では間違いなく三角点が頂上である。しかし、東側の尾根は痩せていて、ひょっとしたらコンタでは描かれていない尖がりとなって部分的にはこちらを上回っているかもしれない。つい、そんなことを考えてしまったが、その確認は機会があればと思っている。

 Yoshidaさんはペンケ山とパンケ山がえらく気に入った様子。標高こそ低いが、確かに両山の独立峰的な山容を見ていると、登らずに放っては置けない何かを感じる。Yoshidaさんはルート全体の写真を撮りながら、来年の正月山行はペンケとパンケにしようと一言。もちろん、私もこの両山は魅力的で、ぜひとも参加の方向で日程を調整したい。「半澤直樹・最終回」は電波を拾うことが出来ず、結局は見ることが出来なかった。だが、その件を差し引いても、十分におつりが出るほど収穫が多いこの日の敏音知岳登山となったことだけは確かだった。(2013.9.23) ※頂上からの展望はこちらへ

【参考コースタイム】 道の駅「ピンネシリ」 650 敏音知岳頂上 9:00、〃 発 9:30 → 道の駅「ピンネシリ」 10:50  (登り 2時間10分、下り 1時間20分)

メンバーyoshidaさん、山遊人さん、saijyo、チロロ2さん、チロロ3さん

<最初へ戻る