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   ピンネシリ(1100.4m)

ペトツルンベ山から望むピンネシリマチネシリ

1/25000地形図「ピンネシリ」

大きな気象レーダーが横に立つ、ピンネシリ頂上( numaさん提供 )
ゲートのある登山口広場( 携帯にて撮影 )
林道跡から離れ登山道へ ( この後すぐに再び林道跡に合流 )

ピンネシリは空知中部・樺戸山地の最高峰で以前の地形図には地勢根尻山と記されていた。最近のものではピンネシリとなっているが、山名はどちらも正解のようだ。「地勢根尻」の名のチセは家を表すアイヌ語で、そんな形に見える場所が中空知の平野のどこかにあるのだろう。また、ピンネシリの名は隣りのマチネシリ(1002m)と対になっていて、道内の各地で見られる男山・女山である。この山名の由来は頂上付近に立派な看板が立てられており、そこに詳しく記されている。その内容から察し、古くから地元では大いに親しまれ続けてきた山のようだ。地形的に険しい山々の多い樺戸山地の中にあって、一際高いピンネシリの丸みのある姿はかなり目立つ存在である。札幌市街からも天気の良い日には容易にその姿を指呼することができ、特に雪の付くビンネシリはなかなかである。以前は新十津川側の砂金沢からのコースが普通だったが、当別川上流の一番川にリクレーション施設である“道民の森”が作られ、それに伴い、さらに続く林道跡を利用して登山道が開削された。今ではどちらかといえばこちらがメインとなっているようだ。確かに数の上では圧倒的に多い札幌の登山者がこの山を目指すのであれば、普通は新十津川までは行かずにこちらを利用するだろう。

私にとってこの山は遠かった。十代の頃、学校の窓から見えるこの山がいつも気になっていた。当時の山の情報といえば「山と渓谷社」が出版していた「北海道の山」(今村朋信著)くらいのもので、このガイドブックにはピンネシリは載っておらず、1/50000地形図のみが唯一の情報源であった。知り合いの登山好きの人に頼んで、初めてこの山へ向かったのが昭和50年の夏である。砂金沢の様子が判らなかったこともあって、炭山川からの尾根越えで砂金沢上流部へ抜けようと試みたが、地形図上、乗り越す予定の尾根に記されていた歩道が既に廃道となっていて、藪漕ぎの末に引き返してきた記憶がある。今ではとても考えられないほど情報に乏しかった時代の思い出である。その後「北海道の山と谷」(北海道撮影社刊)で紹介され、自分の運転する車で登山口まで入りこの山の頂上を踏むことができた。最初に目指してから7年目のことであった。

マチネシリ頂上( numaさん提供 )

道民の森は最後の夏休みを惜しんでか、かなりの賑わいを見せていた。このぶんだと登山者も多いものと思い込んで現地へと向かうが、登山口の広場には登山者の車はない。残暑の厳しいこの時期にはあまり好まれない山なのかもしれない。林道跡を利用した登山道は確かに日を遮るものはなく、すぐに汗が噴き出してくる。こんな日こそ沢歩きが良いのだが、前日に雨が降っていたこともあって尾根歩きとした。登山道(林道跡)は単調にどこまでも続く感じである。途中で林道跡から別れやっと登山道らしくなるが、すぐにもとの林道跡へ飛び出してしまう。そのまま標高を上げてピンネシリとマチネシリのコルへと緩やかに標高を上げて行く。両山がぐんと近づく頃から細かい階段が現われる。一歩二段が適当な高さだが、細かすぎて目がちらつき思うようにはならない。結局、一段ずつ上がって行くことになり、こんな階段ならないほうがよほど疲れないだろうが、林道跡に雨裂が走っていたことを考えると登山道の保全のためにはこれも必要なようである。ここを辛抱強く登りつめるとマチネシリとのコル付近で旧道に飛び出す。

帰路に立ち寄るのも億劫なので、まずはマチネシリへ寄って行くことにする。下から登山者の熊除け鈴が聞こえてきた。こんな暑い日にもやはり登山者はいたのか…と思いつつ歩いていると、なんと下から私の名を呼んでいる。登ってくるのを待ってみると、現れたのはNumaさんであった。全くの偶然である。Numaさんといえば沢のスペシャリスト、なぜこんなところで会ったのだろう…考えるところはだれも同じなのか、やはり前日の雨が気になったのかもしれない。無理する必要などはなく、こんな日こそは日頃あまり登ることのない登山道の散策も楽しいものだ。また、意外な新鮮味も感じるものである。後でNumaさんに尋ねたところ、この日は所属する山岳会の下山連絡担当とのこと。下山連絡係が消息不明となっては洒落にもならない。こんな山が妥当なところなのだろう。

マチネシリの頂上は草原の中の丘と行った感じで見晴らしが良い。この時期、ミヤマリンドウやトリカブトなどの青い花々が美しく、夏尾根登山の疲れを癒してくれる。前線の通過による強風も今年の暑い夏では心地よささえ感じられる。次は本峰・ピンネシリだ。大きな木々がないためスケールが判らずに遠く感じたが、登りに入ると意外に容易である。例によって細かな階段も現われるが、見通しの良さからか開放感も感じられてそんなに苦にはならない。頂上と思われる高みはすぐそこに見える。ただ、あるはずの気象レーダーが現われない。ひと登りして、高みに飛び出すと三角点や看板、頂上からのパノラマを説明する大きな展望案内板のある頂上となる。さすがに眺望は360°である。気象レーダーは反対側の少し下がったところに建てられていた。建物へと降りて行くと舗装道路がここまで登ってきていた。結局、この日のピンネシリへの登山者は我々3名だけであった。有名どころと思われたこの山が意外に不人気なのには驚く。同程度の登山時間で登れる札幌の砥石山も私は登山が中止となった雨の日などに訪れることにしているが、それでも訪れる登山者は必ず何組かはいるものである。この山に関しては少々遠いので、何かの時の代替案としては手軽ではないのかもしれない。

 一番見たかった厚田周辺の山々は雲に隠れていた。先日の幌内山で全ての山を登り終えた厚田周辺の山々、最後はその全容を見ようと登ったピンネシリであったが、残念ながらその楽しみは次回への持ち越しとなった。(2010.8.22)

 

参考コースタイ】一番川登山口8:45 → マチネシリ頂上 11:15 → ピンネシリ頂上 12:05、〃 12:40 一番川登山口14:15  ( 登り 3時間20、下り 1時間35分 /休憩時間を含む )

メンバーnumaさん ( 途中から )saijyo、チロロ2

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