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    ペンケ岳(855.7m)

上八雲から望むペンケ岳

 

1/25000地形図 「遊楽部岳」「上八雲」「春 日」

林道を過ぎると714mピークが見えてくる (Ikkoさん提供)

一足先に頂上の肩に立つIkkoさん

肩から頂上へと向かうIkkoさん
北里大学・八雲牧場に車を止めさせてもらう
八熊川を渡渉するmocoさん
714mピークを越えて稜線を行く (Ikkoさん提供)

鋭峰・岩子岳も地味な感じとなる

 “ペンケ”道内どこにでもありそうな山の名だが、今回はIkkoさんの要望に応えて、八雲町のペンケ岳を目指す。実は今回の休暇で最初に予定していたのは道北、中川町と中頓別町に跨るペンケ山だった。この計画は残念ながら中止となり、代わりに立てた計画が図らずも道南・八雲町のペンケ岳となった。きっとこれも何かの因縁かもしれない、ついついそんなことが頭を過ぎる。ペンケ岳の存在を知ったのは7年前の正月山行の折り、八雲の三角山に登った時で、岩子岳の右側に見える奥深いこの山が実に大きく立派に見えて、以来気になっていた。今回、この山へは一番地形が平易な北八雲からのアプローチで計画する。もちろん、これはsakagu氏(一人歩きの北海道山紀行)の記録を参考にしている。道南は彼のホームグラウンド、同サイトは私の重要な情報源である。入山口には「北里八雲牛」で有名な北里大学・獣医学部の八雲牧場があり、この施設オリジナルの有機畜産が行われているとのこと。BSEや口蹄疫が問題となっている昨今、牧場内を通過させてもらう側としては、迷惑とはならぬよう細心の注意が必要だ。

  札幌からのメンバー3人と八雲で合流、JR山越駅前にて車中泊とする。八雲周辺には我々が日常的に利用させてもらっている「道の駅」がなく、場合によっては道央道の八雲パーキングを利用しようかとも考えたが、出口のことを考えると、それも難しかった。翌朝は晴天に誘われてか、予定時間よりも15分ほど早く山越駅を出る。直ぐに八雲牧場に到着するが、牧場職員は留守の様子。駐車する件、牧場内の通過の件、残念だが申し出るチャンスのないまま、ペンケ岳へと向けてスタートするしかない。関係者以外立入り禁止の看板があり、無断で立入る(正確には通過する)我々としては、林道へと続く道からは外れぬよう、十分注意しながら進むことにする。

 八熊川はスキーを持って渡渉、牧場内の広い雪面に道路を探しながら進んで行く。広い牧草地を大きく反時計回りに回って、そのまま真っ直ぐに進むと樹林帯となって林道へと入る。直接尾根を進む手もあるが、まだまだ途中にはアップダウンがあり、そのまま林道を終点まで進んだ方が効率的には良いようだ。距離的なことを言えば、林道終点で全行程の約半分、その林道の終点でさえ遠く感じるのだから、ペンケ岳はなおさらのこと遠いピークである。しかも、春先の林道は風の影響で雪渓が変な固まり方をしていて、斜めった状態の林道をスキーのエッヂを立てながら進むのは正直疲れる。1時間半ほどかかってやっと林道終点となる。この日は朝から雲ひとつない晴天で、風も弱くて絶好の春山日和である。ここ三日間では最高のコンディションと言っても良い。広い斜面は気持良く、やっと山行本番といった雰囲気となる。

 斜面の傾斜が徐々に増してくると、正面に端正な714mピークが姿を現す。さらに傾斜が増して、この山の山名の起源となったペンケルペシュベ川の支流が714mピークへと向かって大きな谷地形を作っている様子が目前に迫る。無雪期にはおそらく枯滝の連続となるであろう上部は、沢の遡行ルートとしてもなかなか興味深い。我々は左岸側の傾斜の増した斜面に大きくジグをきってぐんと標高を上げる。今回同行のIkkoさんはスキーをやらないのでスノーシューで参加、ただし、スノーシューなどいらないほど雪面が固いらしく、そのままのスパイク長靴でパーティ内では一番快適に登っている様子。春山=スキーが常識と考えていた私の頭も少々固かったかもしれない。雪が腐ってくればスノーシューという雪面歩行用の携帯に便利な道具も持っているわけで、こんなスタイルも合理的と言えるのかもしれない。スキーチームは714mピークを巻いて直接それに続く稜線を目指すが、Ikkoさんはそのまま714mピークへと向かう。

 この日の斜面は陽気にも関わらずカリカリ状態、トラバースしている斜面はエッジを立ててぎりぎりといった感じである。油断しようものならずり落ちそうで気が抜けない。特に凹地形のトラバースに気を使いながら慎重に進む。最後は樹林と笹の出ている派生尾根へと逃げ込む。スキーはここまでとし、スキーはデポ、予備用のワカンをザックにくくり付け、ツボ足にて頂上を目指すことにする。キックステップで笹薮を直登、息を切らしながら稜線上へと飛び出す。何と、Ikkoさんは既に通過したようで、足跡が点々と稜線上に続いている。見れば彼はさらに先の稜線上で待っているようだ。稜線上は左側に雪庇が飛び出しており、一見して恐しそうに感じるが、ある程度は落ち着いているので、そう突発的な崩壊とはならないように思われる。もちろん、油断は禁物であるが…

  頂上への稜線上は見たほどの傾斜はなく順調に標高を上げる。雲ひとつないこの日の晴天、標高を上げるごとに展望が広がり始め、稜線の向こうには雄鉾岳の荒々しい山容も姿を現す。先頭を行くIkkoさんは一足先に頂上の肩に到着したようである。太陽を背にして真っ青な空を背景にこちらを見ているが、これがなかなかである。シャッターチャンスと1枚。目に飛び込んでくる被写体のどれもがこんなに素晴らしい日というのはそうそうあるものではない。順次我々も肩に到着、内浦湾と日本海両方が望め、渡島半島中部の山々がうねりとなって広がっている。遠く渡島大島が海上に浮かんでいる様子は印象的だ。頂上へ向けての稜線上からは真正面に遊楽部岳を中心とする一際大きな山塊が目を引く。一方、手前に見える小さなコブのような山が、よりによって道南屈指の鋭峰として名高い岩子岳であった。見る位置や角度によって、山の姿や印象というものは随分変わってしまうものだ。ひょっとしたら人間の場合も同じかもしれない。

ペンケ岳頂上に立つmarboさん 頂上から冷水岳をズーム

やっとのこと、ペンケ岳頂上を踏む。さすがに車に寝泊りしての三日目の山行ともなれば、疲れを感じる。もう、若くはないということだろう。例によって頂上ビールにて登頂を祝う。北見出身のmocoさん、雄鉾岳にえらく感動した様子で「あの山、何に?」との意外な質問。「誰か一緒に登ろう!」意外や意外、幾多のマイナールートやマイナーピークを踏破してきた彼女だが、こんな有名な山を知らなかったとは。私が「登山者の数としては、このペンケ岳が1人に対して、雄鉾岳は100人」と説明すると、marboさんはすかさず「いや、1対1000だ」と訂正、確かにそうかもしれない。しかし、そのmarboさんにとっても実はこの有名どころは未踏のピークであった。私もそうだが、およそ一般の登山者が間違っても踏まないようなピークを数々踏んでいても、大雪山や阿寒の山々を知らなかったりする。結局、道内で最もバランスの良い登山者は全山登頂間近のKo玉氏となるのだが、この解釈が道理としても、彼を知る私としては間違ってもそうは思えない。ともあれ、昼下がりの素晴らし過ぎる展望台でのひと時を楽しんだ後は下降である。

 スキーのデポ地点まではツボで下る。714mピークからはスパイク長靴のIkkoさんには先に行ってもらう。往路でガリガリだった斜面だが、意外なことに腐り始め、何と、滑りには快適な雪面と変わっていた。滑りは快調、どこでIkkoさんを捉えられるか、それを楽しみに飛ばして行くが、なかなか見えてこない。勝負にでたな! ついそう思ったが、 結局、斜面では捉えきれず、彼は林道終点で待っていた。聞けばたった5分しか待っていなかったとのこと。しかし、たったではない。5分と言えば、かなりの距離である。この勝負は今回もIkkoさんに軍配が上がってしまった。ただし、一矢報いたのは林道の帰り道。こちらは、さすがにスキーが速い。最後の渡渉を終えて、無事牧場に到着する。事務所前には数台の車が止まっており、見て見ぬふりか、牧場の職員は黙々と作業に当たっていた。帰りの始末もそこそこに、静かに、そして速やかに牧場を立ち去ってきた。本当はちゃんと牧場の承諾をもらって入りたかった。だが、今更何を言ったところでしかたがない … (2014.4.13)

mocoさんが気に入ってしまった雄鉾岳 (Ikkoさん提供) この日の私のメンバー … ペンケ岳頂上にて この大展望 ・・・ やはり金麦でしょ 遊楽部岳も大きく真っ白な姿を現している

ペンケ岳頂上からの南望  正に二海郡八雲町だった

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  【参考コースタイム】  八雲牧場 P 7:45 → 林道終点 9:30 → ペンケ岳頂上 11:20、〃 発 12:10 林道終点 13:00 → 八雲牧場 P 13:50 (登り3時間35分、下り1時間40分)

メンバーmarboさん、Ikkoさん、mocoさん、saijyo

     

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