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      於兎牛山(392.6m)

 

1/25000地形図川 端

雪が深いため、入林ポスト前に車を置く
林道途中から望む於兎牛山

「北海道地名誌」(NHK北海道本部編)によると於曾牛沢(おそうしざわ)は夕張線滝ノ上駅の上流で夕張川に合する小沢。アイヌ語はオソウシで、川口に滝が多くある意。夕張では「於兎牛」と記されていると網走・伊藤氏が教えてくれた。そもそもは道内ではよく見られる「オソウシ」と同じ意味のようで、付近には竜仙峡といった名勝もあり、滝が多く険しい地形という解釈も十分に頷ける気がす

る。「於兎牛山」、この当て字に何かしらの長閑さを感じ、石勝樹海ロードから登れる数少なくなった未踏であるこの山を目指す。392.6mと登山の対象としての標高の足りなさは否定できないが、白銀の世界を目前にした端境期とあってはこんなところかもしれない。由仁町・川端から厚真町にかけては名もない低山が広がり、山というよりは丘陵といった感じであるが、意外と奥深く豊かな森林が広がっている山域である。

川端小学校の向かい側から道東自動車道をくぐり、クオーベツ貯水池を目指す。降雪のため帰路が心配になるが、四輪駆動車が一台通過して行ったので、入林箱が設置されている三叉路までは進み、車を置くことにする。造材作業は今なお盛んなようで、林道はけっこうしっかりとしている。クオーベツ川へ向かって下って行くと、正面には目指す於兎牛山が低山とは思えぬ立派な姿で我々を迎えてくれる。地形図上の破線は「奥地林道クオーベツ線」となっていて、歩道ではなく立派な林道である。於兎牛山へは九十九折を繰り返しながら除々に標高を上げて行く。周辺は主にトドマツ林となっていて二世代、三世代目の植林地といった感じだ。

頂上への笹薮は低い

於兎牛山の頂上にて

 

頂上付近に近づくと視界が開ける。ただし、この山域で名がある山は、この於兎牛山とクオベツ山(506.6m)くらいのもので、特徴的な小ピークは見えるが山座同定を楽しむほどの材料は何もない。林道は頂上の西側を掠めるように付けられているが、頂上へは崖面となっていて、稜線上のコルまで進まなければとても取り付けそうにない。コル付近からは薄っすらと踏み跡があり、すぐに稜線上へと出る。多少の薮漕ぎは覚悟していたが、稜線上にも古い集材路跡が残っていて、下草が朽ちたこの時期には背の低い笹が繁るのみである。掻き分けた後には笹の葉にさらっと積もった雪が落ち、白一色の笹原に一筋の緑色の“道”が残る。そんな中、ゆっくりと上り詰めて行くとトドマツ林が疎林となった頂上に到着する。三角点の位置を示す鉄杭が飛び出していて、すぐに三角点が確認できる。低山ではあるが脈々と続く山並みが木々の間に望まれ、その中には鋭角的な名もなき峰も見られ、つい登高欲がそそられる。山域内に高い山があるわけはないが、そもそも登山というのはこんな思いに原点があるように思われる。

下りは5分も歩くと林道へと飛び出す。登山というには少々おこがましい感じかもしれないが、いつも通過し、車窓には映っていても全く意識していなかった山にも、このような世界が広がっているということについて、何かしらの感動を発見する山行であった。帰路、車を停めた地点からクオーベツ貯水池へと車を走らせるが、クオベツ山へのアプローチも林道が使えそうである。次回、雪のない時期を見計らって、ぜひこの山にもチャレンジしたいものである。 (2007.12.2)

【参考コースタイム】 林道・入林ポスト前 9:15 → 林道を離れる 10:35 → 10:45 於兎山頂上 、〃発 11:05 → 林道・入林ポスト前 12:20   (上り1時間30分、下り1時間15分)

  【メンバーsaijyo、チロロ2

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