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      江山(795.6m)  

「道の駅」ライスランド深川から見る音江連山

「道の駅」ライスランド深川から見る音江連山

1/25000地形図 「イルムケップ山」

沖里河温泉までは除雪されている
今は休業中の沖里河温泉
急斜面を抜けて尾根上へ

「音江法華」といえば和名をイメージさせるが、この名はアイヌ語「オトエボク」が転訛したものらしい。省略して音江の地名のみが残ったそうである。「オトエボク」には川下が細かく分かれた川の意味があるそうであるが、付近では雨竜川が合流しており、その他にも数多くの小さな川が流れ込んでいたと想像される。この地は開拓使当時、上川地方への中継地点として、交通の要衝となっていたようである。音江町は深川市中心部からは離れているが、車社会の現在、高速深川インターや道の駅「ライスランドふかがわ」などもできて、以前同様に深川市の玄関口として重要な役割を担っている。この地名を冠した音江山はイルムケップ山、沖里河山と共に音江連山を形成し、北空知の平野に広く裾野を伸ばしている。札幌から旭川へ向う車窓から見ていると、この山塊を回り込むことが旭川到着への一つの目安となっていて、そういった意味では意外に身近な存在といえる。

頂上まではもう一息

独立した山塊を形成しているこの山域は以前から気になっていたが、最初に登山の対象として意識したのは夏山ガイド第5巻「道南・夕張の山々」(北海道新聞社刊)が発刊されてからである。アプローチの良さや山容から見て、夏山登山というよりはツアー向きの山と考えていた。今回登った音江山は三山の中では一番標高は低いが、存在感という面では山域随一である。最近はこの山のツアースキーの楽しさを伝える情報を耳にすることが多い。特にパウダースノーを始めとする“滑り”に関するものが多く、一度は訪れてみたい山であった。

西高東低の気圧配置によって、計画していた日本海側の山が荒天となり、先発で現地入りしていた今回のメンバーであるKo玉氏とSakaku氏から出発直前に連絡が入る。協議の結果、多少内陸部に位置するこの山へと計画を変更することになる。この山へのアプローチは深川スキー場から沖里河山を経由するものと、沖里河温泉から登るルートが考えられるが、登山ということでいえば後者が一般的である。沖里河温泉まではイルムケップスカイラインの工事のため綺麗に除雪されていて、難なく車を乗り入れることができた。沖里河温泉は現在は休業中とのことで、工事事務所がその駐車場に設置されている。工事の邪魔にならぬよう、関係者に断って車を停めさせてもらう。

待合川は温泉への橋を利用して渡る。前の晩に地形図を見て決めたルートで山行に望むが、誰しも考えるところは一緒なのか、予定のルート上には数日前のものと思われるトレースが薄っすらと残っている。予定は沖里河温泉背後の尾根は稜線への登りがきついために巻くことにして、オキリカップ川支流川上流でスノーブリッヂを渡り、頂上へと続く緩い尾根上へ登るルートである。巻きの基本はとにかく標高を堅守することであるが、先行者のトレースから察するに、待ちきれなかったのかオキリカップ川支流川で若干下っている。とはいえ、トレースに逆らって新たなトレースを刻むほどの気力も体力もなく、ここは先導者に従うより術がない。結果的には日頃の不精癖のために全く手入れをしていない私のスキーでは、帰路の登り返しはほとんど気にはならなかった。

音江山頂上にて 頂上からは北空知の平野が広がる

林間でははっきりしていたトレースも頂上への稜線上へ向かう急斜面ではほとんど消えてしまう。ラッセルの醍醐味といえば多少前向きではあるが、実際には有に40〜50cmは沈むほどの深雪ラッセルである。前に踏み出す側のスキーを上手く浮かせることが深雪ラッセルのコツであるが、斜面が急すぎるために山側のスキーが完全に潜ってしまい、思ったようなリズムを作り出して登ることができない。すぐにオーバーワークとなり、次の一歩がなかなか出てこない。この場は細目なトップ交代こそが最も効率的な方法といえる。埋まってしまいそうな斜面を何とか登りきり、目的地点である頂上への緩い尾根上へ飛び出す。

緩い尾根上からはいつものペースである。頂上へと続く深雪に黙々と歩みを進め、難なく疎林となって視界が開けた音江山頂上に到着する。冬型の天候の影響で、吹雪交じりの冬景色と日が差す小春日和の状態が一定の周期で繰り返される不安定な天候である。期待していた周辺の山々は見えないが、凍って白く輝く石狩川の流れを眼下に望むことができる。寒風が吹く頂上を避け、雪庇の下へ回り込むと嘘のような無風状態となる。シールを外し、いよいよ待望の滑降である。

下降は“滑りの山”に相応しく、スキーが下手な私でもひょっとしたら上達したのではないかと勘違いしてしまうほどの楽しい滑りである。特に登りで苦労した急斜面の下降は山スキーヤー冥利に尽きる感動がある。満足感を胸に、緩斜面のトレースを下る途中、我々のトレースを利用して登ってくる後続パーティと出くわす。トレースの礼を言われるが、こちらとしては一足先に美味しい斜面を頂戴してしまったことを詫びる気持の方が遥かに大きかった。(2006.2.12)

【参考コースタイム】沖里河温泉 P 7:55 → 急斜面取付き付近 8:45 → 音江山頂上 10:05、〃発 10:25 → 沖里河温泉 P 10:55

メンバー】ko玉氏、sakak氏、 saijyo、チロロ2チロロ3(旧姓naga)

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