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 丸山(527m)/赤井川村・落合

1/25000地形図 「於古発山

なかなか見えない丸山、道路から斜面に上るとやっと見えた。

 丸山と言えばイメージ的に地味さを感じるネーミングだが、この落合ダムに隣接する丸山も例外ではなく本当に地味な山だった。おそらくこの山に登る場合、登頂以外の何か別の目的でもなければ、敢えてこの山のみに登ってみようなどとは考えないだろう。アプローチは阿女鱒岳の登山口として定番となっている赤井川村・落合である。ここからダムへと向かう道路は支線であり、しかも前日からの降雪で、落合の集落からのラッセルは必至と考えていた。ところが、この日はそんな心配をよそに綺麗に除雪が入っており、私としては意外だった。落合ダムの維持管理のために除雪されているはずとのIkkoさんの読みが的中した形だ。

落合ダム管理事務所前に車を止める
ダム沿いの道路は除雪されていない

 背丈より高い雪の回廊をたどって行く途中、こんな辺鄙なところになぜ? と思わせる立派な施設が忽然と現れて驚かされる。Web検索をかけてみたところ、首都圏の武蔵野学院大学の施設「武蔵野学院キロロレジデンス」とのことで、林間施設として中・高・大学と、さまざまな行事で利用されているようである。道内どこにでも見られる過疎地のさらに奥という微妙なロケーションで、例えて言うなら、林道を走っていて突然コンビニでも現れたような驚きである。この位置的なアンバランスさが何とも面白かった。もっとも、このダム湖の上部にはキャンプ場も整備されており、夏にはキロロリゾートのカヤック体験の場ともなっているらしい。何となくだが、北海道の過疎地域と次世代の新しいものとが不自然に混在しているように感じられるが、これもまた北海道らしさなのだろう

 ダム堰堤の少し手前で除雪車に追いつく。作業中の彼らには招かざる客の出現であろう。こんな場合には、とにかく現場の人間と接することにしている。こちらの素性を明かさぬことには不審車両とのレッテルを貼られてしまうからだ。登山という目的を知れば、珍しさも加わって、逆に協力的にさえなってくれるケースもしばしばある。この日も除雪作業の合い間に我々の駐車スペースを指示してくれた。こうなればもう公認で、何のはばかりもなく車を止めることが出来た。

 堰堤からは1kmほどダム湖沿いに進む。堰堤の管理棟から先は全く除雪が入っていない状態だが、林道の雪面は硬く、夜半に降り積もった10cm程度の軽い新雪ではラッセルが無いに等しい。降雪の後の樹林帯は木々に新たな雪がくっ付いて、実に北海道らしい雪景色となっている。丸山への取付きについて、地形図から候補を挙げていたが、実際にどの尾根を選ぶかは現地を見てからの判断とした。いくつかカーブを回ると、最初に予定していた尾根が見えてくる。だが、ダム湖へ落ちる斜面は急角度、しかもダムの保全か道路の維持のためか、樹林が伐採された状態である。見た感じではさすがに雪面の崩壊が怖い。その一つ先の尾根も考えるが、その他との比較では青獅子川の奥からの尾根が緩そうだ。青獅子橋のすぐ手前からは支線林道が入っており、さっそくその林道を進んでみることにする。ただ、この林道に入ってからはスキーは良しとして、スノーシューではけっこう沈み込むようだ。この辺はこの道具に熟知しているIkkoさん、彼であればこんなことは日常茶飯事であろう… 私の正直なところである。

 この時期で小沢程度のこの川が埋まっていないのは想定外だった。昨今の気候変動がこんなところでも影響しているのかもしれない。途中、スノーシューの沈みも考えて、比較的安定していると思われるスノーブリッヂを選んで取り付き側へと渡る。選んだ派生尾根は一見して登りやすそうだった。落合・丸山は手中に入れたものと確信するが、斜面に取付いてから意外な深雪に悩まされる。今までに体験したことのない雪質と思えた。 だが、二番手とは言え、何事もなく追ってくるチロロ2さんの様子が何とも不思議だった。

頂上から望む松倉岩 (Ikkoさん提供) 遠くにキロロスキー場も見える (Ikkoさん提供)

 冷静に考えてみれば、いつもと違うのは8cmほど短くした私のスキー、この件に関しては地球温暖化とは関係ない。先日のモラップ山の山行の折り、冬山が始めてというメンバーにはスノーシューを用意してもらったが、この道具を選ぶ際の注意点として、体重と面積を考えなければならないと店の店員から言われたそうだ。これを聞いて、浮力など全くえてもいなかった私としては目から鱗だったが、それはスキーにも言えることだと今になって気が付く。藪山でのスキーは短ければ短いほど有利と考えていたが、それにも程度というものがあるということだった。妙にスキーのテールが沈み雪面下に引っ張られる。これを抜け出すには大げさなくらいの体重移動を繰り返さなければならない。要は私自身が短いスキーに対応してのバランス調整をしなれければならないということだった。

いつもの金麦撮影だが、この日は清新な背景とマッチしている
ダム沿いの道路は除雪されていない

  頂上までは概ね単調な斜面であるが、相変わらず安定しない斜面の歩行であることに変わりはない。バランスの調整を意識しつつ進んでいくと幾分かは楽に感じられるが、この状態になれるには少々時間が必要だろう。傾斜が緩んで頂上らしき平らな雪面となる。どこといって特徴はないが、純白の雪面と疎林帯の組み合わせが何とも清新な雰囲気を作り出している。多くの藪山がそうであるように、この飾り気のない頂上風景こそがそれらしくて良いのかもしれない。樹林の間から見えるのは大登山、小登山と、およそ有名どころと言える山はない。強いて挙げればキロロスキー場が確認できる程度だ。こんな山で満足できるか否かは各人の気持次第と言うことになるが、少なくても頂上展望について、良ければラッキーとしか考えていない私としては満点評価である。

 難儀した斜面も下りはスキーの長さに関わらず快適そのもの、わずか30分ほどで青獅子林道へと飛び出す。山行を振り返り、何時もと変わらぬ一喜一憂の繰り返しであったが、これは有名無名の如何に関わらず、山行そのものの醍醐味でもあり、この素朴な新ピークをゲットした嬉しさに彩りを添えるものであった。 (2014.3.09)

  【参考コースタイム】 ダム工事事務所 P 8:10 →  丸山頂上 10:05、〃 発 10:30  ダム工事事務所 P 11:30  (登り 2時間5分、下り 1時間)

メンバー】Ikkoさん、saijyo、チロロ2さん

      

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