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     長万部岳(972.6m)

5合目の鉱山跡から見る長万部岳   青空が気持良い

 1/25000地形図「大平山」

ゲート前は狭く、止め方に注意が必要だ
九十九折の登山道には雪渓が残っている
鉱山跡は見晴らしが良い

  長万部岳は遠く離れたところからでも容易に指呼できる特徴ある山であるが、肝心の長万部町の市街地からは見ることが出来ない。東側から見ると深く切れ込んだ谷が特徴的で、同町の中では最も古い海底の地層が頂上付近に露出しているらしい。同町の最高地点でもあり、昭和35年に長万部山岳会の手によって登山道の整備が行われた。その後は同山岳会によって毎年のように「町民登山会」が行われているようだ。いずれにしても、長万部町にとってはなくてはならない町を代表する一山である。

770mコルと本峰
本峰の急斜面を登る

  天然記念物・石灰華ドームで有名な二股ラジウム温泉分岐の少し先がこの山の入山口となる。舗装が途切れて少し進むとゲートとなっていて、登山口まではここから1.8kmほど林道を歩かなければならないが、入林ポストのあるこのゲート前が実質上の登山口と言っても良いだろう。この日は林道沿いに集材作業が行われており、大型トラックがゲートを出入りしていた。狭いゲート前でもあり、車の止め方には注意が必要のようだ。

 ゲートから30分で、以前にウスユキ荘と呼ばれていた山小屋跡に到着する。Web上で見てみると2008年にはまだ建っていたようだが、2010年には消えている。倒壊したのか解体したのか、いずれにせよ長万部岳にはこの山小屋の必要性がなくなったのだろう。一応ここが登山口となっているが、そのまま林道跡とでも言えるような広い登山道が続いている。もっとも、標高710m地点には旧二股鉱山の施設跡があり、そもそもはこの作業道路を利用しての登山道のようだ。二股鉱山だが、昭和の初期の国策で金の増産が行われ、同町にあった静狩金山のみならず、近郊の国有林内にまでも採掘の範囲を広げたらしい。そんな中、当時の日本鉱業株式会社(現ジャパンエナジー)が始めた金山である。最盛期には戸数50戸ほどの部落が出現、尋常小学校もあったとのこと。今は昔の話である。

 登山道は九十九折で、徐々に標高を上げる。木々の間からはこれから向かう大きな長万部岳の姿が見えるが、木々が邪魔してすっきり見ることができないのが残念なところ。つい先週まではスキー登山をやっていたのに、この日はブヨに刺されつつ歩く蒸し暑い夏山登山となる。ここ数年の季節の移り変わりは極端である。鉱山跡までの登りに一汗も二汗もかく。

 ビューポイントを探しながら登って行くと、ここと思った場所が鉱山跡であった。鉱山跡の五合目は広場となっていて、熊避け用と思われる鐘も設置されている。ここから上は未だ積雪状態で登山道は不明瞭、メンバーと逸れぬよう注意が必要だ。また、こんな時はどこまでも登山道を追い続けるのではなく、自分自身のルートファインディングで進むような頭の切り替えが必要である。時折登山道が現れるが概ね770mのコルを目指して進む。ガスっていたなら下りのことも考えての細心の注意が必要となる。冬のツアー用の標識が所々に見られる。地元では冬にも登られることが多いのかもしれない。

 概ねスキーの標識を見ながら進むが、これが正解というわけではない。途中からはコル方向へと進路を取る。この時期はとにかく雪渓がつながっている部分を見極めることが効率の良い登山へとつながる。コルは広い雪原となっていて見晴らしが良い。後方羊蹄山やニセコ連峰など、お馴染みの山々を見ながらのスノーハイクは、つい先程までの鬱陶しい九十九の登りを忘れさせてくれる。目指す長万部岳は正面に見えるが、見た感じではなかなかの急傾斜となっている。登山道は雪渓の下、真正面から取り付くしかないようだ。

   キックステップを刻めばどうといった斜面ではないが、如何せんこの日の足回りはスパイク長靴、雪面に足底をフラットに置いたってアイゼンとは違って利くはずもない。雪面から顔を出している木々につかまりながら慎重に急斜面を登る。途中からは雪渓が消えた登山道に入ってほっと一息、登山道にはニリンソウやツバメオモト、カタクリなどが咲き乱れ、ここだけは春本番といった雰囲気となっている。そのまま頂上到着かと思ったが、突然現れた九合目標識にはがっかりさせられる。再び雪渓に出て、さらに登山道から最高地点と思われるコブを通過、三角点と大きな頂上看板のある長万部岳の頂上に到着する。ブヨの襲撃でそそくさと退散するが、直下の雪渓上で大休止、ここはなかなか快適だった。東側なので、積丹から静狩峠付近までの180°のパノラマだが、後志・胆振のエリア全体が見渡せる素晴らしい光景が展開していた。

9合目付近も雪渓に覆われている 長万部岳頂上には立派な看板が建っている
頂上直下の雪渓にて

  下りは地形図を見ながらのルートファインディングが定石と知りつつも、つい先行者の足跡を追ってしまう。この日は予想に反して登山者が少なく、雪渓上の足跡も心許ない。冬期間とは違って時間が経つとすぐに怪しくなる。コルを過ぎた辺りからは判然としなくなり、つい面倒くさくなって適当に進む。そのうち明瞭な足跡が現れたので良かったと思ったが、そうこうしているうちにその足跡の主も現れる。どうやら道迷いしているらしい。私のGPSはザックの中にしまったままで、スイッチは入れていなかった。この時期の山の上部は雪渓があるのでどこでも歩けるが、下まで下ってしまったらそうはいかない。ましてや雪渓が残る沢へと入り込めば、その通過に少なからず難儀させられるのは必至、日頃は微調整を加えながら感覚的に進むことの多い私だが、連れが増えたとあってはそうも行かず、地形図を取り出して先ずは現在地の把握に努めることにした。

 この日は晴天で視界も良く、現在地は簡単に特定出来たが、ガスっていたならけっこうシビアだったかもしれない。もっとも、そんな状況であれば私も最初からもうちょっと慎重な行動をとっていただろう。 夏山と冬山との要素が混在するこの時期、多くの登山者が登山道を前提とする登山を考えているようだが、それは危険極まりない一か八かの賭けのようなものだと思う。何はともあれ、こんな晴天の日に雪渓が残る素晴らしい長万部岳を訪れることが出来たのはラッキーであり、十分にその醍醐味を味わうことのできる一日となった。(2013.6.9)  ※頂上・その他の写真へ移動

【参考コースタイム】 ゲート前 P 8:30 登山口(旧ウスユキ荘前) 9:00 → 鉱山跡(5合目) 10:00 → 長万部岳頂上 11:10、〃発 11:45 → 鉱山跡(5合目) 13:05登山口(旧ウスユキ荘前) 13:35 ゲート前 P 14:00   (登り 2時間40分、下り 2時間15分)

メンバーsaijyo、チロロ2の手温泉

(入浴)

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