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       徳富岳尾白利加岳(1346m)

帰路、やっと顔を出した奥徳富岳

 1/25000地形図 「暑寒別岳」「浜 益」「雄 冬」

群別林道3kmの地点には続々車が集まってくる
すぐに林道は積雪に埋まってしまう
熊の平への登り、ここまで来れば取付きは近い

今年のGWについては特に山行は計画していなかったが、道内全山登頂を目指すKo玉氏から奥徳富はどうか?との連絡が入る。日帰りとしては少々遠い山なので私の今の体力も含めて検討してみた。群別岳はなかなか奥深い山だが、この山も同様に奥深く、計画にあたっては時間的な足かせをどこかに感じていた。ところが最近のWeb上にはこの山を日帰りで登ってきたという情報が数多く載っており、であればと、私もKo玉氏の計画に便乗してみることにした。それにしても百戦錬磨のKo玉氏がこんな有名どころを未踏にしていたというのは意外である。

稜線上に到着するが完全にガスの中となる
ガスの稜線上、奥徳富岳目指して進んで行く

最近の地形図上に山名が登場した奥徳富岳だが、我々古い登山者にはどちらかといえば尾白利加岳の名の方が馴染み深く、その響きも奥徳富よりは断然良いように感じる。尾白利加川の水源の山ではないということで、本来の水源である徳富川の名を名乗ることになったようだ。ただし、この川の左岸側には既に徳富岳(929m)が存在しているため、奥の徳富岳ということで奥徳富岳という山名に落ち着いたとのこと。そんなところで無理に筋を通すよりは、そのまま尾白利加岳を正式名称にした方が良かったようにも思うが、そうもいかない事情が国土地理院にはあるのだろう。札幌市街から遠くこの山を望むと、険しい山容で有名な群別岳とは双耳峰のようにも見える。双耳峰ともなれば群別岳・東峰と、何となく従属関係になってしてしまうので、どちらかと言えば群別岳に連れ添う隠れた名峰とでも言った方が“尾白利加”の名には相応しいかもしれない。

天候不順のため不完全燃焼に終わりそうだった今年のGW、そんな思いが通じたのか最終日のこの日は曇り時々晴れと何とか期待できそうな予報となる。未明のうちから群別岳ねらいの登山者が続々と到着する。さすがに人気の山というか、この時期を逃してはなかなか入りづらいとの目算か、考えるところは皆同じのようだ。朝発のキンチャヤマイグチさんの到着を待って我々も雪渓の残る林道をスタートする。昨日の幌天狗山行の教訓を生かし、当然のことながら足回りはスキーである。通称 “熊の平”までの約7kmの道程、帰路の利便性を考えずとも当然の選択であろう。実際の登山はそこから始まるのだから、かなり長い行動時間となることは必至だ。

スタートして少しの間は何度かスキーを外したり付けたりの繰り返しだが、すぐに本来の雪面歩きとなる。林道終点までの約2時間はほとんど変化のない我慢の歩きである。林道歩き特有の靴擦れに悩まされることも多く、面倒でも早めの対策が必要だ。林道終点(地形図の通り)から小沢を渡って熊の平への急登となる。長い林道歩きに耐えてきただけにこの登りはけっこう堪える。斜面の登りにひと汗かくと再び平地歩きとなるが、前方には群別岳や目指す奥徳富岳の姿が現われるので距離感はあまり感じない。この日は残念ながら頂上部だけがガスの中に隠れているが、目指す山が近づいていることだけは実感できるので、それだけでも癒される気分である。熊の平と呼ばれている609m標高点付近からは晴れていれば登るルートの全容が見渡せる。ここで群別岳方面への足跡とは別れ、群別川を渡って目指す尾根末端へと向かう。驚いたことに我々の向かう方向にも足跡が続いている。どうやら奥徳富岳にも先客がいるようだ。しかし、こんな積雪状態でもツボ足とは何ともご苦労さんなことだ。Web上の記録では1069m小ピークから真西に伸びる細い尾根がよく使われているようだが、積雪期登山の基本である雪崩のリスクが少ない尾根上を忠実に…が、そのままこの時期でも守られているようだ。我々が考えたルートはこの尾根の直ぐ南側の斜面で、私とKo玉氏の意見は協議するまでもなく一致していた。表層雪崩の頻発する厳冬期であればともかく、雪が硬くなるこの時期にこの斜面が雪崩れることは確率的にも稀有な話であろう。

先導者の足跡は群別川のスノーブリッヂをしっかりと選んでおり、我々も同じところで川を渡る。今にも崩れそうで、もう少し時期が遅くなればここの渡渉は難しくなるなるだろう。Sakagu氏(一人歩きの北海道山紀行の管理人さん)はここから尾根に取り付いたとのことだが、確かに登りきるまでの標高差70〜80mは45度くらいはありそうな急傾斜となっている。もっとも、川岸から標高差20mくらいはどこを選んでも急斜面である。我々のルートでは標高差20mほどで開けた雪原となる。759mポコを右手に見ながら緩い沢形の脇を登って行く。斜面の斜度が少しずつ増してくるがこの程度であればいつもの山行と大差はない。途中一ヶ所、前述の尾根に容易に入れそうなところがあり、先導者はここで尾根へと向かったようだ。私もここで尾根に向かってはどうか…それとなくKo玉氏に誘いかけてみたが、いつもは登頂のためには手段を選ばないKo玉氏も、ここではなぜか頑として譲らなかった。彼にも彼の登り方についてのポリシーがあるようだ。

目指す頂上がガスの中に現われる
やっと到着した奥徳富岳頂上
熊の平から奥徳富岳を望むが、目指す頂上はガスの中 群別川のスノーブリッヂはそろそろ終了
急斜面を登って広い斜面となる 稜線への斜面は除々に傾斜が増してくる

さらに傾斜は増すが、いつもの山行と比較しても許容範囲内である。ガスって視界不良のために上部の様子が判らない。下手したらさらに傾斜が増すのではと少々不安になったが、逆に一気に斜面が緩み、意外にあっけなく稜線上となった。稜線上にはトレースが残っていた。このトレースについてはどこから登ってきたものか全く理解ができなかったが、後日Ko玉氏からの電話で黄金沢からのものと判明、この日も1パーティが入っていたようだ。西尾根の頭である1069m小ピークを越えると一級国道ともいえる広々とした雪原のような状態となり1214mピークへと緩やかに標高を稼いで行く。1214mピークへは登らず右側から軽く巻くと効率が良い。コンタ1310m頂上の肩直下には天候の回復を期待しているのか、先行パーティが休んでいる。我々は肩を通らず西面をトラバース気味に進み、一直線に頂上へと向かう。昨日に続いてこの日も視界はなく、どちらかといえば肩すかしをくったような連休山行だったが、初登の山ということもあり贅沢は言っていられない。群別岳は過去に登っているが、奥徳富岳は私だけではなくパーティ全員が始めてだ。長い群別川の遡行(私が経験したのは27年前)を考えれば何か試験でカンニングでもしたような呆気なさだが、登頂は登頂、目の前に迫る“尾白利加”の頂上には格別な感慨を感じる。最後はスキーをデポするメンバーもいたが、私としては苦楽を共にした私のスキーにも頂上の雪面を味わわせたかった。展望はぐるりと見回しても群別岳へと続く稜線や徳富川源流域の様子のみである。

下降が最高だった。1214mピークへの緩やかな広い斜面の下降は、展望さえ利けば春山スキーの醍醐味が十分に味わえそうなロケーション。そこから1069m小ピークまではスキーの機動力がフルに生かせる広くて緩い斜面。そして西尾根のすぐ南側に広がる斜面、ここは傾斜といい広さといい山行中随一のゲレンデであった。登りで急傾斜と思った斜面も下降では程良く、こんな美味しい斜面を残して狭い西尾根をツボやスノーシューで歩くのは何とももったいない話と思えた。尾根上から群別川までの一気の滑りが素晴らしく、シーズンの締めくくりとしてはお誂え向きともいえる。唱歌「スキー」…ぐんと迫るは麓か谷か、このフレーズが思わず浮かんでしまうほどだ。

春山の青い空と白い雪、長い冬からの開放感、そんな明るさに期待して入った増毛の山域だったが、2日間を通してガスが消えることはなかった。下山後、浜益の海岸から見る同山域の山々は見事の一語に尽きるほどくっきりと姿を現していた。ピークハンター的思考で考えれば我々をあざ笑うようにとの表現がぴったりかもしれないが、私はそうは思わない。こんな素晴らしい山々なのだからこれからは何度でも訪れて下さい!とでも言っているように思えた。(2011.5.5)

【参考コースタイム】 群別川林道3km地点 P 5:45 → 熊の平 8:45 → 奥徳富岳頂上 12:25 、〃発 12:40 → 熊の平 13:50 → 群別川林道3km地点 P 15:40  (登り 6時間40分、下り 3時間 )

メンバーKo玉氏、キンチャヤマイグチさん、saijyo、チロロ2

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