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     長留内(729.0m)

  

  

  

蕎麦畑と長留内岳

1/25000地形図 「長留内岳」

鷹泊・坊主山の山容は美しい
道路の終点は取水口のある小広場である
長留内川最大の5mの滝
小平蘂山の稜線

長留内岳は天塩山地南部の低山であるが、見かけよりは奥深い山である。長流内岳〜ほろたちスキー場に囲まれた長流内川沿いの平地は小さな盆地となっている。“オサルナイ”とはアイヌ語で下流に葭原(あしはら)がある川との意味があるそうだが、確かにこの川は蛇行していて流れも緩く、付近は一面葭原だったようにも感じられる。地形図上では針葉樹林と荒地の記号が記載されているが、今や蕎麦の生産日本一となった幌加内町にあっては、こんなところまでもが葭原ならぬ蕎麦畑に変わっていた。すでに収穫が終わり、刈ったばかりの茎は赤く色づき、一面赤いじゅうたんのように広がっている。蕎麦は荒地でも生育するとは言われているが、正に根曲がり竹との共存状態である。地形図上242m標高点がある道路終点の少し先に現在の終点である水道設備の取水口があり、小さな広場となっている。

この山の場合、ここからのアプローチが難しい。道内の山では大抵の場合は林道やそれに続く作業道、集材路が延びていて、現在は使われてなくても“路”の跡となって残っていることが多い。特に雪が降る前のこの時期はイタドリやフキなどの下草も完全に枯れてしまい、登りに適したルートを見つけ出すことが容易である。残念なことにこの山では林道跡どころか踏み跡もなく、行く手には濃密な根曲がり竹が立ち塞がるばかりである。根曲がり竹の正面突破も考えるが、登る標高差は500m以上もあり、スタートからの藪漕ぎでは何時間かかるものやら全く予想もつかない。付近を偵察した結果、沢筋からのアプローチが無難と判断する。水流が細くなれば、この時期は枯れ草ばかりで、両岸は意外に歩きやすいものである。足回りはスパイク長靴であり、登頂の成否は出足の水量次第である。

取水口から入渓、長靴でも歩ける水流をできるだけ岸上にルートを取り、蛇行する川は藪漕ぎでショートカットをしながら進んで行く。地下足袋と違って長靴では濡れない快適さはあるが、一度水が入ってしまうと逆に水の逃げ場がなくなり最悪である。転んだり、深みにはまったりでもすれば元も子もないので、“水流が細くなる中流域までの辛抱”と自分に言い聞かせながら、いつもよりは慎重に進んで行く。高度計が285mを示す付近でこの川最大・約5mの滝が現れる。もちろん中を行くことはできず、右岸の笹薮から滝上へ抜ける。川は緩やかに左側へ回り込み、二股を通過する毎に水量が減ってくる。予測した通り両岸は枯れたイタドリとふきとなる。ここまでの行程では予想以上に時間を費やしてしまったこともあり、なおも蛇行する流れをできるだけ足早に直線的なルート取りで進んで行く。この時期としては一番爽快な場面である。

長留内岳頂上は藪の中 二等三角点「尾去内岳」

450mの二股から頂上へ向うが、しばらくは岩盤上の細い流れが続く。長靴では心もとなく、藪へ逃げながらの登行である。付近にはヒグマの足跡も見られるが、小振りなようである。我々の進む方向へ向かったようだ。地形図上、コンタ550mからは3つの枝沢が出てくるはずであったが、最初の二股を見逃してしまい、予定よりも一つ行過ぎてしまう。水流はすぐに途切れ、消えそうな沢形を辿るが、やがてそれも藪の中に消える。飛び出した稜線上はコンタ610m付近で頂上までには標高差にして100mほど足りない。

稜線上は本格的な根曲がり竹の藪が延々と広がる。約40分の藪との格闘の末、二等三角点のある頂上へなんとか到着する。大抵はピンクテープ等があるものであるが、無雪期に登る登山者がほとんどいないのか、人の形跡といえばこの三角点のみである。展望は利かないが、三角点の横に1〜2mくらいは簡単に登れる樹木があり、木の上からは端正な姿の鷹泊・坊主山、反対側に目を転ずれば三頭山の三つのピーク、小平蘂山の険しい尾根などを望むことができる。幌加内の市街地方向からは正午のサイレンが流れてくる。意外に遠く感じた長留内岳頂上ではあったが、ここもやはり里山の一角であった。 (2004.11.6)

【参考コースタイム】  242m標高点付近・道路終点P 8:00 → コンタ610m・稜線上 11:05 → 長留内岳頂上 11:45、〃発 12:20 →  242m標高点付近・道路終点P 14:30 

メンバーko玉氏、saijyo、チロロ2チロロ3(旧姓naga)

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