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      大天狗(851.6m)

大天狗山はあいにくガスの中

1/25000地形図威岬」「珊 内」

「あんない展望公園」から荒れる日本海を撮影
「あんない展望公園」に車を停める
展望台から、いよいよ急斜面へ
大天狗山頂上にて、使い捨て頂上標識と共に記念撮影(Tao@函館さん提供)

道内に天狗の名が付く山は多いが、大天狗となると小平・羽幌の町境にある大天狗岳とこの積丹半島の大天狗山の二山だけである。天狗と大天狗の違いであるが、大天狗の場合、近くに中小の尖峰がいくつかあって、大きさや高さを区別してそう呼ぶようになったというのが通説である。ただし、私が思うに、高さや大きさというよりは、岩壁やそれに準ずる急斜面の広がり方の見事さがその差とも感じられる。大天狗と呼ばれている両山は共に1000mに満たない低山であるが、低いがゆえにその広がりが身近に感じられたのではないだろうかと、つい考えさせられる。道北の大天狗岳は留萌炭田の採炭現場に近く、こちら西積丹はかつて鰊漁が盛んだった地域である。漁船から見るこの山はさぞかし見事に見えたことだろう。

地形図を見る限り、この山へのルート取りは難しい。どのルートを取っても途中で岩壁に阻まれ、行き詰まってしまいそうである。いっそのこと北側の長いが緩やかな尾根を使ってみてはどうかと、2週間ほど前に積丹へ偵察に出かけたが、道路は余別の街から1.2kmの地点で除雪終点となってしまい、かなり長い距離を歩かなければならないようであった。今回のメンバーは言い出しっぺの高山氏と私、それに700m以上全山狙いのKo玉氏、登攀系の山遊人さんと酔いどれポヤンピィ〜さん、最近Ko玉氏と山へ行く機会が多くなったという森林のプロ・Tao@函館さん等、全くバラエティに富んでいる。現地で作戦を話し合ってからでも十分と思いつつ、札幌を早朝に発つ。私が持って行った案とはこうである。コンタが込み合っている地形図では、少し地形図を離し、薄目で眺めるとルートが浮かび上がってくるものである。そうして考えたルートとko玉氏の案が妙に一致していた。似たもの同士、彼も同じことをやっていたのかもしれない。

予定の取付き地点であるオブカルイシ川河口付近の手前に広いパーキングがある。地形図上、碑の記号があり、Web上で調べたところ「あんない展望公園」とのことであった。もう少し河口側の斜面からと思っていたが、公園の展望台へは歩道が続いており、ルート取りには貪欲なKo玉氏がそれを利用しないはずがない。雪に埋まったあづまやへの階段がスタート地点となる。振り返ると西積丹の荒々しい海岸線が望まれる。展望台からは一転、西尾根への急な斜面となる。それぞれに足回りはスノーシュー、ワカンと、この状況下では遥かにスキーよりは効率が良く、250mの標高差を一気に登ってしまう。同行したTao@函館さんの記録を読むと、岩石がぶつかって樹皮剥離をおこしていた樹木が見られたとのこと。さすがに樹木への観察力の差を感じさせられる。地形図から予想される難所は、この岩石が転がる斜面と頂上直下の“地すべりの滑落崖”(Tao@函館さんの記録から)くらいである。

登り詰めたコンタ250mから頂上直下の急斜面までは広い緩やかな尾根歩きである。ところが、歩いていくらも経たぬうちにいきなり尾根が途切れ、けっこうな下り斜面となり、驚かされる。地形図上のコンタはせいぜい1本であるから10m程度の落差であろうが、コンタに現れない程度であっても斜面の角度によっては意外な深さと感じられるものかもしれない。また、苦労して稼いだ標高差の貯金を失うことへの抵抗感もそんな思いを増長させているようだ。仕切り直しで次の尾根に取付くが、435m標高点付近も同様の状況となっている。コンタ500m付近では明瞭な尾根筋への急斜面となる。仮に樹木がなければ間違いなく雪崩そうで、とても取付くことなどできないだろう。ポヤンピィ〜さんを先頭に、木々につかまりながらも尾根上へと飛び出す。尾根上強風で、雪面はクラスト気味である。オブカルイシ川の深い谷を隔てた向こうに小高い岩峰が顔を出し、思わず大天狗山頂上と思ったが、それに続く稜線はさらに上へと伸びてガスの中へと消えている。どうやら目指す頂上はガスの中のようで、この先晴れ間が広がることを祈るばかりだ。

念願の登頂を終え、帰途に着く 思わず「大天狗山頂上」と思ったが、派生尾根のコブであった

細い稜線はやはりコンタ620mで消え、再び次の尾根へと取付く。688mの岩搭を左に見ながら、平坦な広い尾根上となる。いよいよ最後の詰めが近いようだ。頂上や直下の急斜面もガスの中で、ここで間違えてしまっては元も子もなく、皆で地形図を取り出して読図、絞めはGPSにて距離と方向を確認する周到さで確実な登頂を目指す。風のない窪地で休憩、標高差50mほどの滑落崖の斜面となる。斜面はガスの中で何も見えないが、地形図通りにだんだん傾斜が増してくる。メンバーの中からはこれ以上の傾斜であれば登高は不可能との声もちらほら。スノーシューでは舳先が斜面に刺さらず、見かねたポヤンピィ〜さんがワカンで先頭に立ってくれる。上りきる辺りで突風はMAXとなり、スノーシューを持ち上げた足が持って行かれそうだ。強風で体勢を崩しながらも最後は緩い斜面をたどり「あんない展望公園」をスタートしてから3時間25分で待望の頂上立つ。即席パーティとはいえ、それぞれに経験豊かなメンバーの集まりで、このくらいの風ではだれも怯むはずもない。高山さん持参の使い捨て「頂上標識」と共にカメラに収まる参加メンバーの笑顔は、たとえ眺望がなくても確かに大天狗山頂上に立っているんだという嬉しさに満ち溢れているようであった。

帰路、コンタ670m付近の平坦地から頂上部を振り返る。相変わらずのガスで、頂上周辺は白いベールに包まれている。しかし、180°に渡って垣間見える険しそうな山容は、正に大天狗の名に相応しいものであった。 (2008.3.9)

  ■Tao@函館さんの「山行記」へ ■ポヤンピィ〜さんの「酔いどれ通信」へ

【参考コースタイム】 あんない展望公園」P 8:00 展望台 8:15 急斜面直下の窪地 11:00 → 大天狗山頂上 1125、〃発 11.35 展望台 13:20 あんない展望公園」P 13:25  (上り3時間25分、下り1時間50分)

  【メンバー】高山さん、山遊人さん、ポャンピィ〜さん、Tao@函館さん、Ko玉さん、saijyo

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