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 大滝山(1037.8m)徳富岳(928.8m)

/25000地形図 「御料地」「吉 野」

近い将来、この徳富川流域の平地にダム湖が出現する

大滝山と徳富岳は増毛山地の中では共に奥深くアプローチが難しい山である。道内の主だった山を登り尽そうと考えるとき、これらの山々が一つのハードルとなるのは事実のようである。特に大滝山は奥深く、実田牧場から知来岳へ続く尾根を越えて徳富川へ下り、徳富川を渡渉してこの山の南側へ延びる尾根の末端に取付いたという話も耳にしている。この2山を正攻法で攻めようと考えた場合、まずは徳富川を遡ることになる。上流部コンタ260m〜400m付近の流域は広い平地となっていてその中を徳富川が滔滔と流れている。無雪期であれば時間をかけて川を遡行することも可能であるが、詰めの藪漕ぎは問題となろう。事実この山域の別の山では、それまでに見たこともない太い根曲がり竹に行く手を阻まれた苦い経験がある。あまり特徴のない大滝山の山容で、しかも強烈な根曲がり竹の薮漕ぎとあっては位置の特定に苦労することは必至であり、とても沢詰めによって踏むピークではない。 冬期はといえば徳富川の水量を考えると渡渉は難しく、以前に買った1/25000地形図(御料地/平成4年現地調査)では、林道終点付近(コンタ250)からは数回の渡渉をしなければならず、とても簡単には手が付けられそうもないように感じられた。

ダム工事の除雪終点地点付近に車を置く

しかし計画するのであれば、やはり積雪のある春先である。徳富川上流部の林道にかかる橋の情報を得るために北海道森林管理局に林道地図を買いに行ったが、この付近は道有林ということで空振りに終わる。先日新規に1/25000地形図を購入するが、道路状況の変化には驚かされた。平成15年発行のものでは明らかにダム工事を予測させる新しい道路が描かれている。工事中であれば道道から約7qの道筋も除雪もされているはずであり、とりあえずは行ってみることにする。

 予測は見事に当たり、“徳富ダム”という冗談で言っていた名称まで当たってしまう。インターネットにもこの情報は載っていたのだが、全く気づかなかったのは迂闊だった。国道451号・南幌加からの道路は予測通り、きれいに除雪されている。約5km先には工事車両の妨げにならぬよう、一般車両通行止めのゲートがある。この時は大滝山の偵察を兼ねて徳富岳を計画していたが、立ち入り禁止の看板とこのゲートに阻まれ山行は断念することになる。その後、ダムの工事は年度変わりのため中断していて、ゲートも開放されているとの情報をもらう。千載一遇のチャンスであり、再び同じルートを目指すことにする。

 

《大滝山へ》

憧れの大滝山を望む 徳富川流域の平地から見る大滝山付近
大滝山から南暑寒岳とそれに続く尾根 大滝山から見た知来岳

ゲートは開放されており、そこから先もしっかりと除雪されている。プレハブの建物や重機などが数多く見られ、大規模な砂利プラントなども建てられている。ダム予定地を過ぎて除雪終了地点に車を置く。心配していた右岸から左岸(東岸)への渡渉も工事用のものなのか仮設橋が架けられており問題なく通過できる。東岸からは徳富川沿いに約5q遡り、大滝山へ続く尾根の末端を目指す。徳富岳の取付き付近までは樹木もなくかなり広い平地である。昨夜からの雪模様の天候は回復傾向にはあるが、遠くに見える大滝山は雪雲のために見え隠れする。

 この付近はスノーモビルの人気のコースとなっているようで、ゲートの手前から山を越えてこの平地に入り、徳富川沿いに進んで南暑寒を目指すそうである。登山者側から考えれば遥かな山も、彼らの間では日常コースの通過地点に過ぎないのかもしれない。帰路でスノーモビルに出くわすが、相変わらずの爆音で滑走していた。もちろん山は登山者だけの聖域ではないが、スノーモビルグループの練習場でもない。集団で騒音を撒き散らす暴走族まがいのこういった行為はどうにかならないものかと何時も思う。

大滝山頂上に到着する
大滝山頂上から見る尾白利加岳

  途中何度か小沢を通過するが、この時期はスノーブリッヂも安定していて、難なく通過することができる。ただし、小沢ではあるが水量は多く、時期を外せば小沢といえどもルート上の障害となることだろう。大滝山には2本の南へ延びる長い尾根がある。2本のうち、東側の尾根末端の傾斜が比較的緩いため、この尾根にルートをとることにする。付近の徳富川両岸は見事なV字渓谷となっていて、取付きからの標高差約200mは急傾斜である。583m標高点まで登りきると広く緩い尾根上となる。厳冬期であれば肌に突き刺さる北西風も、春山登山では心地良ささえ感じる。長い尾根上を徐々に標高を上げて行き、少し小高くなった815m標高点のコブを通過する。このあたりからは、こころもち左寄りに進路を取り、1003m標高点をかわして頂上左側のコルを目指す。コル付近からは白く輝く1113m標高点のピークが見える。つい行ってみたい衝動に駆られるが、午後からは徳富岳を予定しているため、時間的な余裕はない。

 コルからは一登り登りで、憧れの大滝山頂上に到着する。山容には特徴に乏しく、西尾根の頭にすぎない頂上ではあるが、我々にとっては貴重な一山である。頂上からの展望はすばらしく、西側には尾白利加岳やそこから延びる尾根上の突起である知来岳、北側にはひときわ高い暑寒別岳や南暑寒岳などが望まれる。しばし達成感や満足感に浸るが、ゆっくりはしていられず次の徳富岳へ向かうことにする。下りは登り返しがないように、尾根の横面をトラバース気味に下る。頂上からは約50分で東側の尾根取付きまで下降する。

 

徳富岳へ》

 大きく2つの尾根末端を過ぎると徳富岳への取付き地点である。コンタ490mの小ピークを北側から巻き、次の小沢から沢筋に入る。この山は大滝山と比較して全体的に急峻であり、男性的な山容の山である。地形図を眺める時にコンタが込み合っていて山域全体的は濃く見えるが、その中では割と薄く見えるのが今回のルートである。昨年の一月に富士形山へ登った時には遠く大きく見えた憧れの山である。東側からのアプローチも考えたが、除雪の状況はあまり期待できず、取付きとなる沢筋は深い。しかも標高を上げるほどに急峻となり、稜線手前では崖記号となるため、大滝山と同じ西側からのアプローチで考えざるを得ない。

平地から見る徳富岳 コンタ840m付近にて
徳富岳頂上は僅かであるが、遠く感じる 徳富岳頂上にて(背景は群馬岳)

  沢筋に入って直ぐ正面に現れる尾根が今回のルートであるが、取付きが細いため右股側から斜面に取付く。標高差約600mの登りの開始である。斜面に入ると標高はぐんぐん上る。708m標高点付近は傾斜が緩くなり一息つけるところである。振り返るとダムで水没するであろう徳富川流域の平地が白く見え、その向こうには別狩山周辺の山域が広がり、さらには遠く日本海も望まれる。914m標高点のあるピークから西に細長く伸びる尾根への登りに入るが、ここも傾斜があり大きくジグをきる。この尾根は細長く地形図上に現れぬ凹凸を心配したが、意外に素直であり真っ直ぐ914m標高点へ向かって続いている。遠く午前中に登頂した大滝山が見える。その距離を見た時、思い出したように疲れを感じるが、登山という行為がいかに精神的なものに左右され易いかを痛切に感じる。

徳富岳から見たピンネシリ山と神威尻山

  目指す徳富岳は周囲の地形とは対照的で、丸みのあるおとなしい山容の山であった。出来る限りの省エネを考え、小ピークは巻くことにするが、最後の標高差50mだけはどうしても登らなければならない。帰路の登り返しを考えて地形図とにらめっこするが、頂上から直接下るルートは考えられず、少なくとも914mピークまでは戻らなければならない。そんなことを考えるだけでも頂上はさらに遠く感じるものである。最後の標高差50mを登りきると待望の頂上到着である。遠く感じた頂上ではあったが、結局のところは取付きから約2時間であった。頂上は広く平らであり、EIZI@名寄(山の時計)さんのGPSにて正確な位置を確認する。昨夜からぐずつき気味の天候も午後には晴天へと変わり360°の展望である。付近の主だった山々はもとより、遠く札幌周辺や夕張山地、天塩山地まで見渡すことができる。

 下りは別ルートをとる。914mピークの南西面に広がる斜面を下降するがここも末端は複雑な地形であり、斜面の予測がつき難い下降である。概ね臨機応変にルートを選択して行くが、少し東寄りにルートを取りすぎたために、地形図上の崖記号の直ぐ横を下降することになる。この時期は積雪も安定しているが、新雪では絶対に避けなければならない斜面である。

 難攻不落と思えたこの2山も結果的には日帰り登山の山となった。今後徳富ダムが完成した折には堰堤から先にどのような道路ができるのかは判らないが、当分登れない山であることだけは確かなようである。今後も別の意味で“遠い山”であることに変わりはない。 (2004.4.4)

同行したEIZI@名寄さんのページ 大滝山 徳富岳

【参考コースタイム】 徳富ダム工事地点(除雪終点) 5:20 → 尾根取付 7:25 → 大滝山頂上 10:00 、〃発 10:20 → 尾根取付 11:10 → 徳富岳入山開始 12:00 → 徳富岳頂上 14:00 、〃発 14:05 → 徳富ダム工事地点(除雪終点) 15:40 

メンバーEIZI@名寄さん、ko玉さん、saijyoチロロ2

 

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