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 大森山(561.2m)

神恵内漁港と大森山 一見低山だが、なかなか手強い

珊内漁港から望む大森山

1/25000地形図 「珊 内」「ポンネアンチシ山」

何とか難所をクリア、沢形を進むIkkoさん
道の駅「オスコイ!かもえない」に車を置く
砂防ダムの上へと向かう道路に向けて出発
いきなり現れた岩峰が予定していた尾根だった …
大森山頂上付近から積丹西海岸を見下ろす

 大森山と能蘭山、積丹の西海岸側にある正に山椒の小粒といえる山である。この二山には低山と言って侮れない地形的な嫌らしさがあり、簡単にはそのピークを踏ませてくれない。今回はそのうちの大森山を攻めてみることにした。地形図を見た限りではそんなに大変とは思えなかったが、その平易なコンタには岩峰や岩稜が隠されており、意外に神経を使わされたというのが率直なところである。

  道の駅「オスコイ!かもえない」に到着してみると、海岸線ということもあってまるで雪がない。大森山から南に伸びる尾根の末端がちょうどこの道の駅にあたり、道の駅に車を置いてすぐに尾根に取り付きたいところだった。だが、海岸線の山は地形図の崖記号や、コンタの通りではないことが多く、特にこの尾根について言えば、途中に二ヶ所ほどの小ピークの通過があり、コンタの様子からは岩峰の出現が考えられるため、一つ奥の尾根から取付くことにした。道の駅の50mくらい先には民家があり、そこのお宅の裏には階段もあるが、さすがに無断では他所の軒下に立入れず、500mほど先の道路入口から小沢の上部へと向かうことにする。海岸からすぐの砂防ダムで行く手を塞がれるケースでは、付近には必ず保守用の道路が付いている。焦って斜面を登る必要がないことは、狩場・天狗岳の山行の折に学習した。砂防ダムの上部へ出ると、尾根末端が現れる。けっこう急傾斜だが、無理すれば取り付けなくもない。だが、我々は予定通りに沢沿いを進む。

帰路、雪崩斜面を高巻いて通過する
何とか難所をクリア、沢形を進むIkkoさん

 直ぐに次の砂防ダムが現れ、手前から対岸へと渡る。予定の尾根へはもう一つ小沢を渡って取付くことになる。さて、いよいよ取付きかと平らな樹林帯を進んで行くうちに樹木の上に岩峰が見えた。一瞬、えっ! と思った。なぜなら、そんな岩峰など地形図上にはないからだ。すぐに、それがこれから向かう尾根だと判って愕然、同時にルートについての再検討を迫られることになる。とりあえず、予定していた尾根筋は無理。だからと言って、道の駅からの尾根を横から登るのは、これまた厳しそうな感じ。結局は見えない真正面の奥まった尾根に期待するしかないようだ。とは言え、地形図を見る限りは350m付近のコンタが混んでいて、かなりの急傾斜が予想される。小沢を渡り返して右岸側から取り付き地点へと近づいてみることにした。地形図と照合するが、何と真正面に見えていた岩壁が、期待していた尾根のコンタの密集したところのようだった。正直、これで万事休すといった気分となる。可能性としては右股から岩峰の背後へと回り込む手も考えられるが、その右股も左岸側からの全層雪崩でデブリに埋まっており、斜面の上部は地表まで抉られている。さすがにその狭い沢形の通過は怖すぎる。

 困ったあげく、とりあえず、そのまま尾根に取付くことにした。これがラッキーだった。ダメもとで、岩壁の手前までは行ってみようという苦肉の策だったが、ひとコブ越えてみると危険ゾーンの上流部は簡単に渡れそうで、もちろん岩峰を越えたあたりの稜線上へも登れそうな感じ。早速右股へと急斜面を下る。斜面を下ってみると、わざわざ尾根に登る必要などなく、そのまま沢沿いに登って行った方が効率が良いことが判った。ただし、地形図を見れば上部のコンタの混みようは微妙である。どこかで予定の尾根へと逃げることも頭に入れておかなければならないだろう。

 だが、そんな心配をよそに天候も回復して青空が広がってきた。一転して登れば登るほどに状況が好転して行くのだから、当然のこと意気揚々である。尾根にはいつでも取付けるが、そんな必要などないほどに沢自体が快適なルートとなっていた。こうなれば、遠かった大森山ピークもかなり身近なものとなっている。振り返る積丹・西海岸が立体的に迫力を増して行く様子は快感そのものと言っても良い。遠かった稜線が見えてくる。もちろん、見えてからが遠いのも沢ルートの特徴だが、確実に近づいていることに変わりはない。不慣れなスノーシュー、ここは焦らずに進むしかない。先頭を行くIkkoさんがついに稜線に届いた子。彼との距離はあったが、こうなれば自分も到着した気分である。やった! といった満足感で満たされた。結局、スタートからは3時間近くも経っていたが、気分的には浦島太郎で、時計をつい疑ってしまう程の短い時間感覚でのコル到着となる。もっとも、ルート工作にそれほど頭を使わされたということでもある。コルからは鋭鋒や奥深く高いピークが望まれ、ついつい撮影タイムとなるが、後で調べたところではコンタ1000m「通称;赤石山」とそれに続く稜線だった。こちらが500mそこそこではどの山も立派に見えて当然かもしれない。赤石山は11年前に踏んでいるが、ここほど難しい山ではなかったように記憶している。

大森山頂上とサッポロクラシック

  いよいよ最後の詰め。まずは、コンタ510mの小ピークへと快適に登る。辺りは疎林帯の静かなピークとなっていて、ここが大森山頂上であったとしても十分に納得できる雰囲気がある。ここから本峰までは稜線のひと登りとなるが、行く手には雪庇が待ち構えている。大森山ピークは560mのコンタが2つあり、若干高い方がこの稜線から続いている右側で、三角点があるピークは左側だ。まずは三角点ピークである。途中から斜面をトラバース、雪庇の途切れた場所を探して大きく回り込む。少し進んで到着した広い雪面が大森山頂上だった。低山とはいえ、時間を費やしただけに、やはり達成感も大きい。真っ白な雪面の向こうは大きく広がる真っ青な海、さすがに海岸線の山である。岩内湾を挟むニセコ連峰はあいにく雲の中。90%くらいの眺望だが満足度は間違いなく100%、途中でほとんど水分を採っていなかったこともあって、このピークのために用意してきたサッポロクラシックが実に美味い! 帰路、本来のピークを踏んでいないとでも言われては敵わないので、もう一方のピークへも立寄る。三角点ピークほどの喜びは得られなかったが、大森山完登の瞬間であった。

 数日後、無雪期にこの山に登ったというKo玉氏から電話があり、大森山に登ったことを報告したところ、彼は道の駅からの尾根に素直に取付いたらしい。ひょっとしたら、私のルート選択の悪さで、やはり道の駅からの尾根が正解なのかもしれない。だが、この小規模な山で、これだけ満足感が得られたのだから、それはそれで良かったとしよう。(2014.3.23)

  【参考コースタイム】  道の駅「オスコイ!かもえない 8:50 →  大森山頂上 12:10、〃 発 12:35 道の駅「オスコイ!かもえない 14:05   (登り 3時間20分、下り 1時間30分 )

メンバーIkkoさん、saijyo

      

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