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       三毛別山(507.4m)

    

後日、上記念別山から見た奥三毛別山

 1/25000地形図「大天狗岳」

小沢の出合付近駐車スペースに車を停める
小沢の出合付近駐車スペースに車を停める
この時期に目立つのはやはりアジサイだ
鬱蒼とした小沢を進む

山登りの面白さとはいったい何だろう?高みへと登り詰めることの壮快感、ルートの面白さや展望、美しい花々など人それぞれにいろいろだが、今回登った奥三毛別山はそのどれにもあてはまらない。強いて魅力?を挙げるとすれば吉村昭の小説「羆嵐」で有名な三毛別の名が付いた山で、しかもそのさらに奥深いところに位置しているという雰囲気たっぷりのロケーションだろうか。恐いもの見たさというか悪趣味というか、常に巨グマの幻に追いかけられつつ身の細る思いで臨む山行こそが、別の意味でこの山の魅力といえるのかもしれない。ただし、今回参加したKo玉氏だけは道内500m以上の全山完登を目指しており、男が一度それを目標とした以上は羆嵐だろうが籔籔籔だろうが、どうしても登らなければならなかったようだ。

3mの滝を果敢に攻めるKo玉氏 崖上から下を望む
頂上から望む小平蘂岳と釜尻山 奥三毛別山頂上にて

アプローチは霧立沼への入口となる小平越沢林道(留萌南部森林管理所 0164-42-2515)で、5kmほど入った駐車スペースが入渓地点となる。付近は地形が変ったのか、GPSを取り出して位置を照合しても地形図と現在位置とが一致しなかった。小尾根を一つ越えたところにかなり細い水流があり、なぜかこの小沢が我々の計画していたルートのようである。Web上この山への記録はEIZI@名寄さんとOginoさんが入った5年前のもののみで、およそこの山域への入山者は希有のようだ。彼らはこのルートを進み、270m二股の右股を進んで頂上東側の崖地形にぶち当たっている。結局、EIZI@名寄さんを先頭に微妙なバランスでここをクリア、無事奥三毛別山に登頂、さらにその南側にある575m峰(通称:小天狗岳)へと足を伸ばしている。

270m二股までは鬱蒼とした小沢を進むことになる。登山なのか肝試しなのかよく判らない感じの不気味さではあるが、特に目立った地形的な変化もなく270m二股となる。彼らのぶち当たった崖地形は当然のことながらパスすることにして、ここは左股へと入る。沢形が狭まり、小さなゴルジュも現われるが全く問題なく通過できる。さらに3mほどの小滝が現われKo玉氏が果敢に攻めるが、ここは右岸側を低く巻いて難なくクリアする。続く330m二股、後で考えればここがひとつのポイントであった。予定では左股だったが、入ってすぐに沢形は斜面に消えているため、ここは右股へと入ることにした。この山域の東側は地滑りによる崖地形となっていて、ここ奥三毛別山も例外ではない。地形図では崖記号も混んだコンタも往々にして大差がないことが多く、ここでも右股の詰めが崖記号となっていることは知っていたが、コルへの登りも同様と読んだ。(地形図上の崖記号が全く現地の地形と一致していたのは後で判ったこと)

右股に入ってすぐにヒグマの大きな足跡を発見する。Ko玉氏曰くはかなり古いとのこと。沢中の湿った土に残ったものが古いわけがないのは誰だって判っていること。心配ないよKo玉さん、こんなところまでやって来て止めようなどとは言うわけがない。心の中ではそう呟いていた。次に現われたのは水流が枯れた7〜8mの滝である。左岸側の斜面を登るが、頼りとする潅木も笹もなく、かなり太く育ったフキやウドにつかまりながらの登高となる。先頭はそれを利用することも可能だが、最後尾ともなるとフキやウドがそのままの状態で立っているわけがなく、後続はそれなりに苦労していたと思う。見上げると少し赤茶けた崩壊斜面が正面に見える。心持左側のコルを意識しながら尾根上の樹林帯の籔を漕いで進む。崖の基部まで登って弱点を探し、そこから一気に稜線へ抜けようという作戦である。ところが樹林帯を抜け出たところは既に崖斜面の中にあった。ルートを見ながら頭の中でシュミレーション、途中何ヶ所かのテラスを利用すれば崖上の樹林帯まで抜けることはできそうだ。チロロ3さんもGOとの判断だった。ところが、意外なことにKo玉氏がストップをかけた。彼の意見は、ちらっと見たコル付近は斜面とつながっており、そこまで崖の基部を伝ってトラバース気味に進むのが安全とのこと。結局、ここは無理しないとの判断でKo玉氏の意見に従うことにする。後で考えれば、身の程を知ることを旨としている私としては少々勇み足だったようである。

下降尾根から望む奥三毛別山
下降尾根から望む奥三毛別山 三等三角点「奥三毛別」
下降尾根から望む575m峰「小天狗岳」

Ko玉氏を先頭に登ってきた尾根を逆戻り、適当なところで沢形を何度か渡ってコルへと続く斜面に入る。330mの左股は斜面となって消えているように見えたが、実は斜面ではなく枯滝だったようで、再び沢形となってここまで延びていたことが判る。コルへは木々を伝って急斜面をひと登り、難なく稜線上へと抜けることが出来た。ここまで来れば奥三毛別山は目と鼻の先、後は籔漕ぎのみである。距離にして約200m、籔は比較的薄く獣道のようである。ただし、頂上が近くなると徐々に籔の濃さは増してくる。今回は三角点にこだわりがあるメンバーばかり、臭いが判る男・Ko玉氏や土中や雪中からでも三角点を発見する感覚の持ち主・チロロ3さんである。頂上には到着しているようだが、埋まっているべき三角点が見つからなければ頂上到着とはいえない。しばし三角点を探して右往左往したがなかなか見つからない。Ko玉氏に遠慮して一歩引いていた私もGPSのスイッチを入れて三角点探しに本格参入しようかと思ったが、その矢先にKo玉氏が苔生した三等三角点を発見した。勝因は倒れて朽ちた棒杭を発見したとの弁、子供のように誇らしげな笑顔が妙に印象的だった。結局のところ、距離にして僅か1Km程度のルートに約3時間もの時間を費やしてしまった。

 当初の予定では霧立沼にも立ち寄って帰ろうと考えていたが、やはり札幌朝発では強行スケジュールだったようである。下りはコルをそのまま進み、林道付近まで沢へ下ることなく忠実に尾根をトレースすることにする。この方がルート読みは難しいが、懸垂下降のセッティングの手間を考えれば時間的にも効率が良い。いつものようにKo玉氏が背後に回って指示を出し、私がその指示のもとに先頭を進む。こんな前の見えない下降方法も回を重ねるごとに苦にもならなくなる。先頭と後続との信頼関係あっての技といえるのかもしれない。途中、ブドウと思われるツル植物が群生するところを通過する。ツルを切った手で汗を拭ったこともあり、後日顔面が腫れ上がり私が最も苦手とするウルシ植物であったことが判明した。500m以下の低山はこれがあるから恐い。下がらないどころか逆に登っているのではないかと感じられる標高に少々うんざりするが、335m標高点を過ぎてからは急激に下降する。つい気を緩めてしまったのか小沢へと引っ張られ、シダ植物が密生して足許が全く見えない沢底に悪戦苦闘、最後は小滝となって無事出発した小平越沢川の河原へと降り立つ。さすがに長時間の籔漕ぎ苦行、終始付きまとっていた巨グマの幻などとうに何処かへと消え去っていた。(2011.7.24)

【参考コースタイム】 小沢出合 P 9:00 → 270m二股 9:40 → 奥三毛別山頂上 11:50、〃発 12:15 → 小沢出合 P 14:35  (登り 2時間50分、下り 2時間20分 ※休憩時間を含む)

メンバーKo玉氏、saijyo、チロロ3(旧姓naga)

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