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   小平蘂山(877.7m)

おびらしべ湖と小平蘂山  ダム堰堤にて

1/25000地形図 「三頭山」「大天狗岳」

この時期はアジサイが美しい あと少しだが、強烈な根曲がり竹となる
小平蘂山頂上はこんなところ 頂上から大天狗岳(左)と小天狗岳(右) …Ikkoさん提供
林道の崩壊地点に車を置く
細い沢形を進む

 全体的に標高が低くて奥深い天塩山地にあって、比較的標高が高い山域の1つに三頭山周辺がある。ここには三頭山、釜尻山、小平蘂岳、小平蘂山と、四つの地形図上に記載されている山があり、天塩山地の中では山らしい山塊を作っている。その中で最も奥深く感じていたのが小平蘂山だった。この山以外の三山は国道275号線からのアプローチが良く、積雪期であれば登山道が無い山であっても容易にそのピークを踏むことができた。小平蘂山については雨煙別川が深く入り込んでいて、地形図を見る限りでは厳しそうな印象を持っていた。遠く感じていた小平蘂山ではあったが、EIZI@名寄さんやOginoさん、Ko玉氏の記録や話を聞いているうちに、小平側からであれば意外と問題なくピークが踏めるのではないか? という認識に変わった。何年か前になるが、そのEIZI@名寄さん、Oginoさん達と、このルートからの小平蘂山を計画したことがあった。その時は朝からの激しい雨で、おびらしべ湖の園地の東屋で2〜3時間ほど雨が上がるのを待ったが、そのまま解散している。それ以来、やり残しのこの小平蘂山が頭から離れなかった。今回は強力なメンバーであるIkkoさんの登場もあり、そろそろリベンジしてみようという気になった。

                                 

 道道742号線沿いの川上本流林道に入り、約4kmの地点から支線林道へと入る。支線林道についてはKo玉氏からの情報である。ただ、分岐からいくらも進まないうちに崩壊箇所があり、いくら頑張っても車はそこまでである。林道はその後もしばらく続いているが、使っていない林道は人間の血管と同じで、詰まった先ではすぐに壊死してしまう。徐々に夏草が鬱蒼としてきて、最後は林道が途切れてシカ道となる。ただ、このシカ道は意外にしっかりとしており、アプローチとしては十分に活用できた。車止めから直線距離で約1kmの地点で入渓、水量は少なく、長靴でもOKだ。そもそもアプローチとなる小沢は小平蘂山へと突き上げてはいるが、小平蘂川の本流ではない。入渓地点からしばらくは蛇行を繰り返し、徐々に傾斜が増してくる。途中、いくつかの分岐を通過、地形図とGPSを取り出して、間違わぬよう慎重にルートを選ぶ。以前、この山域の釜尻山を目指した折、蛇行する川のショートカットで、分岐を見落とした苦い経験がある。失敗に気が付いたのは登り詰めた先で、時既に遅しだった。遠くに見える釜尻山ピークが何とも恨めしかったのを覚えている。

                          

頂上から鷹泊・坊主山

  この時期ともなるとアジサイが咲き始め、朝の澄んだ空気と光の中での透き通るような青さが実に美しい。そうこうしているうちに苔むした5〜6mの傾斜の緩い滝が現れる。苔むすくらいだから、普段の水量などほとんど無いのだろう。階段状で難なくこれを通過する。滝はこれ1ヶ所だった。沢筋の水流は細いが意外に上部まで続き、コンタ500m付近で完全に消える。地形図上を見れば、頂上直下まで突き上げている沢形は詰めて来た沢形とは別で、この付近で沢筋を変えなければならない。10m未満の凹凸のために、この尾根筋を表すコンタは無いが、平行する二つの沢形を仕切っている。この仕切りを横断すべく、藪へと突入、すぐに目的の涸れ沢へと飛び出す。こちらの沢形はけっこうはっきりとしている。下山時に二つの沢の接点を探してそのまま下降してみたが、途中の緩斜面では一度斜面に消えかかり、傾斜が増した時点で再び現れた。最後は往路の沢の右岸の斜面となって合流していた。私としてはGPSを見ていてさえ、この二股は判らなかった。

       

滝のない細い沢形がどこまでも続く …Ikkoさん提供

キツリフネが多く見られた …Ikkoさん提供

  この時期は蜘蛛の巣とウシアブやマダニが多い時期で、その鬱陶しさはかなりのものだ。籔をかき分ける度に必ずと言ってもよい程、蜘蛛の巣だらけとなるし、常時ウシアブが付きまとう。さらに注意して見ていなければマダニが衣服や首筋を這っている。これを夏の風物詩と片つければそれはそれで季節感があるのかもしれないが、私の持っているこの夏のイメージはやはり冬山のそれとは違う。言うなれば我慢比べかもしれない。雪の北海道は全国レベルで考えればマイナスイメージのようだが、夏のこの状況を知っていれば、少なくても山に関して言えば冬が良い。

 

三等三角点「小平蘂」と金麦
三等三角点「小平蘂」と金麦

  沢筋は分岐を繰り返し、その度ごとに比較的しっかりとしている左側へと入って行く。だが、地形図上で「小平蘂山」の文字が記載されている辺りで、さすがに進みやすそうな右を選んでしまった。少し早かったようで、すぐに沢形が消えて完全に尾根筋上となってしまった。頂上までは至近距離、籔でも意外と歩きやすい。だが、残り150mを切った辺りから、本格的な根曲がり竹が進路を塞ぐ。やはり、そう簡単にはピークを踏ませてくれないのが道北の山だ。残り30mくらいでは傾斜も無くなり、頂上への方向すら判らない。GPSを取り出して進むしかない。この機械は進まなければ方向も判らない。最後はまだまだ元気が残っているIkkoさんが先頭となり、「展望が開けた」との報告。わずか数メートル程度の遅れをとっている私だが、見えている景色がまるで違うのだろう。

       

 いきなり視界が開けて頂上らしい雰囲気となった。雨煙別川に沿った南に伸びる特徴的な主稜線、間違いなく小平蘂山に居るんだ… 何時もここの地形図を見ていただけに、登頂した実感が湧き出てくる。見れば主稜線から外れてはいるが、三頭山の高みが手に取るように見える。まずは三角点。頂上到着を確信していることもあって、籔は被っていたが、すぐに三等三角点「小平蘂」を発見する。もちろん恒例の金麦写真。Ikkoさんもさすがに、雑草が覆ったままの三角点を提供してくれた。おびらしべ湖が見えるため、難しい天塩山地西側・低山地帯の山座同定も容易である。天狗山、大天狗岳、小天狗岳、奥三毛別山と、馴染の山々である。だが、記念別三山や古丹別三山クラスともなると、さすがに5万分の1地形図でも持参しなければまるで判らない。

 かなり昔になるが、四丁目の富貴堂で、ふと手にした地形図に小平蘂という山名記載があって、なんじゃ…これは? と思った記憶がある。あれから四半世紀以上の歳月が過ぎ、今こうしてそのピークに立っている。マーフィーの法則ではないが、人間の潜在意識というのは底知れぬパワーを秘めたものと、つくづく感じた。(2014.7.20)

参考コースタイム】  林道車止め P 7:40 → 入渓地点 8:05 → 小平蘂山頂上 11:40、〃 発 12:20 → 入渓地点 13:50 林道車止め P 14:25 (登山時間 登り4時間、下り2時間5分)

メンバーIkkoさん、saijyo

小平蘂山頂上から小平蘂岳・釜尻山(左)と三頭山(右) …Ikkoさん提供

 

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