<戻る

      1245m峰「点名;奴振」(1245.1m)

無類岩山から1245m峰「奴振」(画面中央)、右後方は北見富士

1/25000地形図「富士見」

林道入口に車を停める。
林道入口に車を停める。
沢の流れは細く、長靴でも十分だ
沢の流れは細く、長靴でも十分だ
途中、オシロイシメジを採りながら進んで行く
途中、オシロイシメジを採りながら進んで行く

標高1245mといえば、札幌近郊では立派に山として認知される高さだが、ここ、留辺蕊・遠軽方面の山間部では里山どころか山としても認知されていないのではないかと思われる。山は標高ではなく、どのくらいせり上がっているかということになるのかもしれないが、自然豊かな北海道の秋を楽しむのに山名など必要とはしない。1245m峰「点名・奴振」は付近でも目立たない山であるが、その分、静かな山旅を楽しむことのできる利点がある。点名は山を表すアイヌ語「ヌプリ」がそのまま「奴振」といった、何か身分の低そうな泥臭いものを感じさせる当て字となったようだが、字を当てたときの役人のこの山に対するイメージが表現されているようで、その背景や様子を想像するだけでも面白い。北見・yoshida氏に紹介された山であるが、点名だけでも気になり訪れてみることにした。

国道39号線・留辺蕊町厚和から大規模林道へ入り、丸瀬布へ向かう途中の峠手前の37号林道が今回の入山口となる。もちろん、この手の山に正規のルートなどあるはずもなく、どこでもルートであり、過去の記録など見ない方がかえって冒険心をかきたてて面白いというのが薮山愛好家の大方の見解である。地形図は持参しているが、GPSにて距離の縮まる方向が林道とぴったりと一致しているため、当然のことながらそのまま林道を進んで行く。歩いて間もなく林道分岐となるが、予想もしなかった先客の車が停まっていた。キノコ目当ての地元の人間…?と思ったが、見れば旭川ナンバーである。さらにナンバーを見てみると、何とOginoさんの車であった。この日の朝、早々に到着、すでに山頂へ向かっているようである。まあ、この林道を使っている以上はどこかでご対面となるだろうと、そのまま林道奥へと歩を進ませる。もし、この日の薮山愛好家の行事予定なしで偶然にここで出くわしたとすれば、これはもう砂漠で落とした針を拾ったようなものである。

林道は現在は使用されてはいないようで、途中で跡形もなく崩壊している。枯れたイタドリが林立する中を進んで行くが、夏であればかなり鬱陶しい感じとなるだろう。途中、秋の山の幸であるキノコを目で追いながら進んで行くが、見つかるのはオシロイシメジばかりである。ポリ袋がキノコでいっぱいになる頃、EIZI@名寄さんとOginoさんが上流部から姿を現す。頂上の様子を尋ねたところ、三角点をとにかくじっと見るようにとの謎かけを残し、そそくさと下って行った。さてさて、一体何があるのか?興味を膨らませながらもさらに上流部へと進んで行く。

1010m二股からは沢幅が1mもないような小沢の遡行となるが、スパイク長靴であれば足を濡らすこともなく、かなり快適である。水温が低くなるこの時期、街のホームセンターなどで1980円で売っているこの道具、ネオプレーンや厚手の毛の靴下とセットで使用すれば濡れ対策や保温性にも優れており、薮山登山の足回りとしては必携の道具といえる。長靴の中のフィット感のなさは靴下の重ね履きで十分に解消できるだろう。小沢はすぐに沢形となって消え、途中からは集材路跡を辿ることにする。集材路特有の九十九折を繰り返しながらも標高を上げ、最後は背の低い笹原を直登して稜線上へと抜ける。もちろんスパイク長靴はこの急斜面でもその威力を十分発揮したことは言うまでもない。

稜線上は大木が繁っていて、下草がないだけにかなり歩きやすい。下山してきた時のOginoさんの長靴が酷く破れていたが、なぜなのだろうかとの疑問を持っていた。その疑問は頂上への最後の登りですぐに解けた。針葉樹林の倒木が針路を塞ぎ、そこを乗り越える時に硬い小枝が引っかかったのだろう。1980円の優れものとはいえ、材質のゴムはやはり薄っぺらで、製造側はこの道具のこんな状況での使用は織り込んではいないようだ。日本製ではなく、人件費の安い国外で作られたものらしい。山での使用には補強用として必ずガムテープを携帯した方が良いことも付け加えておく。

EIZI@名寄さんとoginoさんのメッセージ 天候は快晴(頂上にて)

斜面を登りきると、いよいよ三角点「奴振」を探すのみである。パーティ内の予想では、ヒグマの糞が乗っかっていて、よくよく見なければ見つからない状態なのではないかとの意見が大勢であったが、「奴振」はすぐに見つかり、よく見てみると樺皮にボールペンで書かれた「お疲れ様」のメッセージが残されていた。紙を使用していないところに山屋の心意気が感じられ、暖かさの滲み出ているメッセージである。登ってくるかどうかも判らない相手に対する、藪屋ならではのエールに感動の一瞬である。さておき、頂上は樹林に覆われ、樹林の隙間から狭い角度で山々を望むことができる程度の眺望である。となりのメンバーの顔しか確認できないくらいの藪山頂上もあると考えれば、まずまずといえるのかもしれない。

yoshida氏がこの山を推した理由は下山後に判る。一ヶ所、武利岳や無類岩山の絶好の展望台ともいえる場所があるそうである。過去の記録など見ないと心のどこかで粋がっていたこともあって、その情報を持ち歩いていたにも関わらず見逃してしまった。登山界の常識として、旧道と新道では展望その他で旧道が勝ると言われるが、GPSを使ってしまうととかく効率第一の新道ルートと類似した軌跡をたどってしまうようである。多少時間は費やしても自分の目でしっかりと地形を確かめながら、悠々と行動すべきであったと反省することしきりである。まあ、楽しみを後に残してきたと考えればそれはそれで良かったのかもしれないが、何かの折にでも再び「奴振」を訪れてみたいと思っている。 (2009.10.24)

【参考コースタイム】37号林道入口 10:25 → 1245m峰「奴振」頂 12:20、〃発 13:00 → 37号林道入口 14:20

 (登り約1時間55分、下り約1時間20分)

メンバーあまいものこさん、Luckyさん、saijyo、チロロ2、他2名

<最初へ戻る