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    能蘭山(494.9m)

岩の塊のような能蘭山  手前は珊内地区

1/25000地形図 「珊 内」

この雪渓を詰めて稜線へと向かう 頂上手前の稜線 頂上へはもうひと登り
このすぐ先が能蘭山の頂上 頂上に立つIkkoさん
小沢出合付近の林道に車を止める
最初は沢の中を進む
斜面を登っている途中、マッターホルンのような鉞山が姿を現す

  ヒグマがシカを追い落とした崖、そんなアイヌ語が語源となったのがこの能蘭山である。確かに珊内の海岸から見るこの山にはそんな崖がいたる所に見られ、見ているものを圧倒する迫力が感じられる。積丹・西海岸では大森山と共に難攻不落の一山と言えるが、標高が低いこともあって一般的にはほとんど知られることのない山でもある。程よく雪渓が残るこの時期、東面の沢地形を利用しての能蘭山登頂を試みる。

 珊内に到着して、まずは雪渓が全く見えない岩の塊とも思えるこの山の山容に驚かされる。正面から攻めてみることなど頭からなかったが、予想外の迫力にあれこれ考えさせられるから不思議なものだ。アプローチは以前に鉞山へと向かった折に二度ほど入った林道だが、林道の記憶としては何も残っていない。そのくらい、鉞山も湯ノ沢も強烈に印象的だった。地形図を眺めながら、この日に取り付く予定の小沢の出合を探す。さすがに、少し奥に入ると林道の際まで雪渓が残っており、四月の山が戻ってくる。多少の藪漕ぎがあっても、締まった雪渓は絶好の登山ルートとなり、それを当てにしてのこの日の計画だった。出合い手前に車を止め、まずはほっと一息。

  能蘭山へと向かう最初の小沢はおそらく雪渓に埋まっているだろうと、林道からは少しの藪漕ぎで沢筋へと出る。沢沿いに進むと何やら人造物。見ると地区の取水設備が現れる。先ほどの林道からはしっかり道路が続いており残念ながらフライング、少々気が逸っていたようだ。もっとも、これに気付いたのは下山してからである。予定のルートは流れの少ない小沢を想像していたが、実際に見たところでは、融雪期でもあり流れに勢いがある。小滝を越えた次の二股で、このまま沢筋を進むことがルート選択としては適格でないことに気付く。見れば尾根上にはしっかりと雪渓が残っており、しかも上部へとつながっている。地形図上ではこの尾根に取付き、ある程度登ってからトラバース気味に小尾根を2本越えれば、能蘭山の北東側のコルへと向かう緩い尾根へと抜けれるはずである。

崖斜面では、この日の主役・アイヌネギが群生していた

  直ぐにルートを変更、小尾根から予定のルートへと向かうことにする。取付いてみると、ついそのまま登り詰めて、能蘭山へと向かう稜線上へと登ってしまいたいところだが、つい先ほど、この山の荒々しい姿を見てきたばかり、さすがに逸る気持にふたをされた心境である。少々の笹漕ぎがあっても雪渓をつなぐことは造作もないことであった。途中からはけっこう傾斜のきつそうなトラバースも現れるが、これは雪渓があるので難なくクリアする。ところが、正面に見えてきた最初の乗越し尾根の南面には全く雪が残っておらず、100%笹藪の斜面となっていて、このままでは本格的な藪漕ぎとなりそうだ。まだまだ序盤戦、できればこんな時点からの本格的な藪漕ぎは避けたいところだ。

 手前の沢形は上部まで雪渓に埋まっていた。地形図を取り出して上部のコンタを見たところ、やはりこのまま沢を詰めても上部では難儀しそうである。であればと、となりの沢形へと雪渓がつながっている部分は必ずあるはずと、とりあえずはそのまま雪渓を登ってみることにする。だが、そんな便利な連絡路など現れず、傾斜だけが増すばかり。そのうち頭の中の分度器が故障したのか、急斜面も急斜面とは感じられなくなり、稜線までこのまま抜けても良いような気にもなる。気持的には完全にオーバーヒート気味、冷静に、冷静に… そう、自分に言い聞かせる。そうこうしているうちに稜線が見えてきた。確かにこちら側の上部はほとんどが岩壁となっていて、地形図通りといえばその通りである。しかし、必ず弱点はあるはずとの経験則から、目を凝らして丹念にそれを探す。けっこう急ではあるが、コルまで雪渓で埋まっている部分が1ヶ所。あれだ! 急斜面にキックステップを刻んで一歩一歩上がって行く。背後に見える鉞山、さらにその後の珊内岳、ガニマナコ、屏風岳の真っ白な連なりが迫力を増し、標高を一気に上げていることが実感できた。

雪渓を下って行く途中、見事な山の連なりに感動

 おのずと慎重な足の運びとなり、何とか稜線上へと飛び出した。ここまで登れば能蘭山は落としたも同然、嬉しさで気持が満たされる。飛び出した地点はコンタ420mピークの手前で、熊がシカを落としそうな大きな崩壊地の少し上の地点だった。稜線上の逆側はスッパリ切れ落ちており、この山の急峻さをうかがわせる。だが、そんな斜面には初もののアイヌネギが群生しているから皮肉なものだ。頂上へはコンタ420mピークを越えなければならない。稜線上の右側に残る雪渓がつながっていることもあって、意外と容易にこのピークを越える。後は能蘭山へのひと登り、先日の大森山で苦労していただけに、能蘭山への詰めは意外と呆気ないものだった。三等三角点「能蘭山」を発見、登頂である。展望は木々が邪魔してスカッとはしないが、展望の半分には青い海が広がっていて気持が良い。たかだか500mにも満たない小さな山であるが、山は高さではない。それを登るに当たっての作戦やその過程、さらにはそれらをクリアした時の喜びなど、これらが合わさって得られる充実感そのものが登山という行為の魅力である。

 アイヌネギを収穫しつつ下山とする。慎重に登った稜線直下の斜面だが、雪面が完全に腐ってしまったようで、恐怖感などはまるで感じない。仮に転倒したところで直ぐにも停止することだろう。雪渓はまだまだ残っている。とは言え、季節はやはり春本番へと移行しつつあるようだった。(2014.4.14)

  【参考コースタイム】  林道小沢出合 P 10:45 → 能蘭山頂上 13:00、〃 発 13:35 林道小沢出合 P 15:55 (登り2時間15分、下り2時間20分)

メンバー】Ikkoさん、saijyo

      

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