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     野田追岳(705.8m)

小鉾岳から見た野田追岳(二週間前に撮影)

 

 1/25000地形図「野田追岳」

磐石岳トンネル前に車を止める

急な管理歩道を攀じ登る
小鉾岳の本当のピークは?
小鉾岳の本当のピークは?
この日のヒグマの足跡はまだ小さい感じだ
管理歩道は広く刈り分けられている

   野田追岳に登るルートがあることを知ったのはsakag氏(一人歩きの北海道山紀行管理人)の山行記からだった。八雲町わらび野から民有林道・下二股線を使ってわずか20分で登ったという6年前の記録である。20分であれば、別の山行のついでに登頂というのも可能だろうと、小鉾岳へ登った帰りに早速立ち寄ってみたが、ゲートはがっちり施錠、門前払いを喰ってしまった。こんな時は目的の山が何とも遠く感じられるものだ。当分登れないだろうと諦めたわずか数日後、当のsakag氏からのメーリングリストへの報告で、東側の磐石林道からこの山へ登ったことを知る。そもそもはメーリングリスト・龍さんからの情報で、「ゆっくり歩きで低山を登る」管理人の山ちゃんが登り、sakag氏が山ちゃんから情報を得て登ったらしい。ひと時代昔では考えられない情報網の凄さである。

 そんなことも頭にあって、集合先の道の駅「YOU・遊・もり」に到着してからの会話の中で、このルートからの野田追岳がすんなり決まる。未だ三人とも登ったことが無いというのが決め手であった。私にとって道南の山はほとんど手付かずのまま、山遊人さん、チロロ3さんとは、登る山は現地入りしてから決めようということになっていた。翌朝、道の駅を後に磐石林道へと向う。銀婚湯へ向う道道67号・八雲厚沢部線から磐石林道へと入るが、今年最初の積雪の林道は何とも心許ない。今か今かと写真で何度も見たトンネルが現れるのを心待ちにするが、こんな時は余計に遠く感じられるものだ。やっと現れたトンネルを越えたところが登山口、到着すると既に一台の車が停まっていた。やはり先行者もsakag氏の記録を見てやって来たのだな… と思った。まずは林道へ入るが、尾根末端には手製の梯子までかけられており、わずか二週間の間に登山道の整備まで行われたのか! とも思った。ところが、先導者の足跡を辿って行くとチェンソーの響き、登山者ではなかった。日曜返上での間伐作業である。我々は世間一般から見れば遊びに過ぎない。そんな微妙な後ろめたさもあって、作業現場にはなるべく近づかぬよう、斜面の際を通って稜線上へと抜ける。細々と踏み後を辿るが、伐採現場を過ぎると藪が被って不明瞭、だが三角点を示す黄色のプラスチック板が見えたので、間違ってはいない。

 三角点を過ぎて間もなく、立派に刈り分けられた管理歩道に出る。今朝方のものと思われる、左手の急斜面へと下ったヒグマの足跡が見られる。伐採現場とは目と鼻の先で、現場の仕事と危険は背中合わせなんだ… と、つくづく感じる。ヒグマの足跡は歩道に沿って、小ピークからさらに先の尾根上へと続いている。だが、管理道はここで90°右に折れてグンと下る。それだけならいざ知らず、対峙するピークへと真っ直ぐに登っているのだから敵わない。まるでジェットコースターの軌道である。森林管理歩道とは登山道のことを言っているのだと思っていたが、この山に来て、それは違っていたと判った。ここの歩道は林班界に沿って忠実に刈り分けられており、登山者への配慮などまるでない。とにかく標石を辿ることが第一義、目的の山に登るための利便性などは全く度外視されている。歩道というよりは防火帯と言った方がぴったりかもしれない。レクリエーションの森などで見かける遊歩道も名目上は管理歩道だが、本来の管理歩道とはここのような業務第一の歩道を言うのだろう。

途中から見えた乙部岳と鍋岳 遠かった野田追岳頂上・二等三角点(点名・梯子沢)
頂上から望む砂蘭部岳 頂上から望む横山

  やっと登り詰めたピークからは徐々に下って行く。何とももったいない話だが、しかたがない。その分だけ距離が縮まるのだから良しとしよう。下って行くと沢形のようなところで短いアップダウンとなる。ここの傾斜はきつく、スパイク長靴を履いていても泥面では全く歯が立たない。だましだまし登り、再び広い刈り分け道へ出る。さらに驚くのはそこから500mほど進んだ地点の登りだ。一見、垂直の壁にそのままバリカンでも入れた感じである。冗談でしょ…つい心の中でそう呟く。こんな壁みたいな斜面までが林班界通りに刈り分けられている。この登りでは掴んだ笹を放すことが出来なかった。優に40°くらいはあるだろう。ちなみに、帰路では左側の刈り分け道に逃げたが、これが登ってきた管理道とは違う尾根筋で、藪斜面のトラバースで元の管理道に戻った。いくら急でも、そのまま下った方が楽だったようだ。

北海道新幹線関連の新しい三角点

  この急斜面を過ぎるとほどなく土場となる。門前払いを喰った民有林道・下二股線はしっかり活用されているようで、頂上付近北側では新しく造林作業が行われている様子。時代が変わったのか、森林保全への国の予算が付きやすくなったらしい。この管理歩道も合わせて整備事業が進んでいるようだ。土場からは626mピークを左に見ながら野田追岳の頂上部へと出る。さすがにこの付近まで登って来ると、山岳の景観と感じる。頂上は管理歩道上で、三角点はピンクテープがなければ気付かないような歩道脇に雪面から顔を覗かせていた。そこから少し下った地点からは雪化粧した砂蘭部岳や横山、小鉾岳等の眺望が広がっていた。

 最も楽しみにしていたのは小鉾岳の様子である。先々週に登った山で、その時に到着した三角点のあるピークのさらに奥にはもっと高い岩峰があって、登頂感を完全に喪失させられてしまった。その岩峰が本当に三角点ピークより高いのかどうか、同じくらいの高さで少し距離のあるこの野田追岳・頂上から確認してみたかった。12×のズームで撮影したところ、結果は岩峰の方が明らかに10m以上は高そうで、三角点ピークは頂上の肩に過ぎないということが判った。一般登山道からの岩峰ピークへのアプローチは難しいかもしれないが、別ルートからであれば可能かもしれない。いずれにしても、今後の検討課題である。

 下山後、磐石温泉の帰り道で白のオフロード車とすれ違う。ひょっとしてsakag氏?と何気なく思ったが、正にそのひょっとであった。何と我々が辿ったルートの途中を、さらに別のルートから辿っていたらしい。しかも、もっと短いルートがあるとのこと。氏も最近になってその情報をもらい、それを確かめるべく、野田追岳に再び登ったそうである。今回はsakag氏の情報のみでやって来た山、仮に我々の山行が一週間ほどずれていれば、こちらの短いルートを使ってもっと楽な登山ができたということになる。ここのところの野田追岳は賑わいを見せている。おそらく、さらなる新ルート次第では、この先さらに多くの登山者を迎え入れることになるだろう。(2012.11.25)

【参考コースタイム】 磐石岳トンネル P 8:50 野田追頂上 11:25、〃発 11:55 → 磐石岳トンネル P 14:00  (登り2時間35分、下り2時間5分)   

メンバー山遊人さん、saijyo、チロロ3(旧姓naga)

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