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     丸 山(1617.8m)

帰路、1468m標高点付近から見た丸山

 1/25000地形図「大 函」

大函駐車場からニセイチャロマップ林道へと入る
夜明けと共にテン場を出る
夜明けと共にテン場を出る
屏風岳を見ながら南尾根を登る(yoshidaさん提供)

  北大雪・丸山は意外な名峰である。平山、比麻良山などと共に1500mを軽く超える峰々の一角であるが、どの山も見方によっては台地状の一点に過ぎず、とても独立した山とは言い難い。ただし、通常ルートとは違う層雲峡側からはそれなりの標高差があり、渓谷の遥か彼方に聳える高峰といった感じで存在している。今回は北見・Yoshidaさんの誘いで、こちら層雲峡側からこの頂を目指す。ニセイチャロマップの幹線林道から支線林道へと入り、途中で一泊、林道終点付近から尾根に取り付く計画である。

冬の焚き火 (イメージ画像)

 大函の駐車場はトンネル保修工事の基地となっていて、重機が置かれている。先行する北見・yoshidaさんの車は既に到着、現地へと向かった様子。通常であれば一般車は邪魔となるところだがが、少なくとも正月三が日は休工となるだろう。我々も重機の横に車を置かせてもらう。集合場所は今日のテン場となる1時間半ほど先に進んだ地点、車から降りるのもはばかられる寒さの中、山への準備を開始する。ふと見ると、我々の様子が珍しいのか、若者の車が立ち寄ってこちらを見ている様子。まぁいいか… と無視して準備していると周りから「○さん!」との歓声、よく見れば何とEIZI@名寄さんだった。こんな嬉しい瞬間は滅多にあるものではない。山行案内は事前にメールで送ってはいたが、いきなり本人が現れるとは思ってもいなかった。

 ニセイチャロマップ林道から橋を渡り、新大函トンネルの遥か頭上を山の斜面を巻くように続く新大函沢林道へと入る。さすがにスキーを履くと先ほどまでの寒さは何処へやら、気持ちは簡単に山モードに変わってしまった。もちろん、EIZI@名寄さんの突然の参加で、寒さや荷の重さからのネガティブな気分もすっかり反転してしまったようだ。yoshidaさんのトレースを追いつつ、約1時間強でテン場到着となる。待ち受けるyoshidaさんも突如の来訪者には大いに喜んんだことは言うまでもない。この晩の○○は実に豪快で、−20℃もなんのその、夜が耽て行くのもついつい忘れてしまった。

 朝は早い。予定の10分前のスタートとなる。新大函沢林道はテン場からは緩く長い下り、楽と言えば楽だが、帰路の登り返しを考えれば手放しでは喜べない。眼下に落ちる新大函沢が近づく頃には道路が崩壊しているのか雪面のトラバースとなり、それから程なく谷底へと下りきる。スタートから約50分、橋を渡った少し先で丸山の南尾根への取り付きとなる。いよいよここからが丸山への本格的な登り、気持をリセットしなければならない。取り付きからしばらくは密度の濃い樹林帯、集材路跡を利用して標高を上げる。雪質は重く、帰路の滑りを考えればこの狭いルートに密度の濃い樹林帯では気が重い。上部に上がれば上がるほどステップが崩れる捉えどころのない雪質となり、コンタ1070mから上の傾斜の増した斜面では早々にクラスト気味となる。ただし、新雪が無い分、雪崩れる心配がなさそうなのは何よりだ。夏山でしか知らない屏風岳が終始見事な山容を見せ、いやが上にも登高欲をかき立てる。

頂上直下、アイゼンを付けると思いの外快適
頂上直下、アイゼンを付けると快適 丸山ピークにて
1468m付近から我々を写す(山遊人さん提供) 頂上から望む平山

  1468m標高点手前で雪面が完全に硬くなり、スキーをデポする。大きく波打ったシュカブラは、さすがにスキーで登るには嫌らしい。純白で一見新雪だが、カチカチに固まった歩幅の合わない階段といった感じで、我々の行く手を阻む。少しずつ標高を上げ、最初のポコを越えると右側が見事な崖となった1468m標高点ピークが見えた。雪の付いたこの岩峰はなかなかの迫力である。EIZI@名寄さんを先頭に稜線脇を登る。右側に落ちた崖面を見ながら痩せ尾根を通過、雪庇はほとんど無い状態なので特にここの通過は問題ない。この小ピークを過ぎると尾根は広くなり、遠くに目指す丸山が真っ白な二等辺三角形で姿を現す。ここで一休み、yoshidaさんによれば、遠く見えるが1時間もかからないとのこと。確かに、地形図を見れば目と鼻の先だ。遅れ気味だったチロロ3さんと山遊人さん、追いついたチロロ3さんによれば、山遊人さんが体調不良とのこと。経験豊富な山遊人さん、下手にこんなところで待ったり止めたりでは彼も本意ではないだろう。それを知っているメンバーは、後続を気にしつつもそのまま山行を続行する。

 ルートの取りようによっては脛までのラッセルとなるが、概ね硬い雪面は歩きやすい。ピークは見た目より近く、5分、10分と進んで行くうちにぐんぐんと大きくなる。疎林帯を抜けるといよいよ二等辺三角形の基部に到着、あとは凍りついた雪面をひと登りである。振り返った尾根の先には、豆粒大に山遊人さんの黄色のツェルトが確認できる。頂上までの傾斜の緩い雪面は埋まったハイマツで波打っており、ハイマツは所々で頭を覗かせている。上手い具合に凹部をつなげばツボでも頂上に立てるのでは… と思い、アイゼンは付けずにストックからピッケルへと替る。ピッケルは先くらいしか刺さらず、ハイマツの枝は分散し過ぎて頼りにならない。ルートをしくじると二進も三進も行かなくなる。それでも、ピッケルとアイゼンを持ってこなかったEIZI@名寄さんはキックが効く雪面を探しながら大きく斜面を回りこみ、頂上に近づいている様子。バランスの良い彼だからこそ出来る技と言えるだろう。

帰路、急速に晴天となる。シュカブラの向こうに屏風岳 1467m付近の見事な岩壁

  そんな状況の中、リーダーのyoshidaさんからアイゼン装着の指示。そうだった、登山中に細かなことでつい億劫と思ってしまうのは日常茶飯事だが、小まめさも大事な登山技術の一つである。そう思いつつアイゼンを付けたとたん、どこでも普通に歩けるのだから素晴らしい。特にそのサクサク感が心地良い。余計な緊張をすることもなく、難なく広い雪原となった丸山のピークに到着する。周りの山々は薄っすら雪雲がかかって視界は良くないが、この時期としてはまずまずの天候と言えよう。夏に登山道から登った平山も大きな丘状となって広がっていた。

 下山時、yoshidaさんはEIZI@名寄さんに自分のピッケルを手渡す。道具無しで登れたとしても下りはさらに難しく危険が伴うもの。彼の機転の速さはさすがであった。パーティ全体の道具と力量その他を考えながらやり繰りする、そんな頭がなければリーダーなど出来るものではない。営業登山も含め、何となく形のみのリーダーを置いているケースが多い昨今、リーダーとしての本来の姿を見る思いであった。大いなる自信と余裕、長い経験の賜物なのだろう。

 今年は予想に反して寒い冬となった。厳冬期、特に正月は寒さも陽の長さも、条件的には最も厳しい時期である。昨年の羽幌岳、一昨年のイソサンヌプリと、この時期としては自分の年齢や体力を考慮し、身の丈にあった山を選んでいる。どれも決して難しい山ではないが、登らせてくれる一山一山を大切にしたい。そんな思いで臨んだ今年の丸山であった。目立った山ではないが、久々のアイゼン歩行と信頼できるメンバー等、さらなる高みへの憧れをかきたててくれる年頭の一山となった。(2013.1.2)

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【参考コースタイム】 (1/1) 大函 P 14:00 テン場 15:10  (1/2) テン場 6:50 → 丸山南尾根取付 7:401468m標高点 10:05丸山頂上 11:10、〃発 11:25 丸山南尾根取付 14:00テン場 14:55大函 P 16:00   (登り5時間30分、下り約3時間、以上大函基点)   

メンバーYoshidaさん、EIZI@名寄さん、山遊人さん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)16:15 山の手温泉(入浴)

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