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   西暑寒別(1413m) 中ノ沢岳(1189m) 

/25000地形図  「暑寒別岳」「雄 冬」

林道入口に車を停める
取り付きから200mも登ると緩く広い斜面となる
途中から見る中ノ沢岳は重厚な感じさえする
中ノ沢岳頂上にて
通称「大がんけ」
西暑寒の尾根上のコブにすぎない中ノ沢岳だが、存在感抜群である
増毛側から見る西暑寒別岳は本峰とは双耳峰のようである

西暑寒別岳は暑寒別岳から西に延びる尾根上の小ピークにすぎない山であり、中ノ沢岳はさらにその支尾根のコブに過ぎないが、増毛方面から見ると両山とも暑寒連峰の一山としての存在感をしっかりと感じさせる山である。暑寒別岳との間には有に数十メートルはありそうな岩稜が行く手を塞ぎ、容易には両山の行き来を許さない。そんなことがかえって西暑寒別岳の“立派に一山”としての地位を保っているのかもしれない。標高こそ1413mと本峰には80mほど譲るが、中ノ沢岳方向から望むこの山には暑寒別岳にも勝るとも劣らない迫力がある。

《中ノ沢岳へ》

今回の取り付き地点は暑寒荘の約3q手前の暑寒別川沿いの林道入口である。ポンショカンベツ川の水量は雪解け水のために増水しており、スタート時点から登山靴を濡らすわけには行かず、多少距離があってもここの橋からのルートを選択する。取り付きからは標高差200mほどの急斜面の登りとなるが、ここを登りきるとあとは広い平らな斜面である。疎林の尾根を登るにつれ、白く輝く増毛・天狗岳や雄冬山が見え隠れし、登山というよりは歩くスキーのようなゆったりとした楽しさを味わえる登りである。約2時間で、暑寒荘くらいまでは来たようだが、同荘との標高差は200mほどである。

735m標高点付近はコンタには現れない丘となっていて、気付かぬまま巻かないで登ってしまう。さらに緩い斜面を一登りすると前方には中ノ沢岳(通称)が大きな姿を現す。決して締まった山容とは言えないが、この角度から見ると重厚な感じであり、迫力さえ感じられる。最後の登りでも特に急な斜面はなく、徐々に標高を上げて中ノ沢岳の頂上部へ飛び出す。最高地点の1189m標高点は小さなコブを二つほど越えた3つ目で、小岩が雪面上に顔を出ている。今まで見えなかった南側の群別岳や奥徳富岳(尾白利加岳)の鋭鋒が姿を現す。この双耳峰を裏から見ると、鋭鋒としては名高い群別岳よりも奥徳富岳の方に分があるような印象を受ける。  

《中ノ沢岳〜西暑寒別岳》 

中ノ沢岳を後にして西暑寒別岳への稜線を辿るが、中ノ沢岳からの下りが地形図上では山行中一番の難所と予想していた場所である。斜面を滑り降りさらに進むと、予想していた通り前方がいきなり岩稜となり、それ以上は進むことができなくなる。少し戻ったところから雪庇のない右側の斜面に入り、若干下ってからトラバースして岩稜の先へ回り込むことにする。とはいえ、木々のないこの斜面での転倒は許されず、ここは慎重にスキーを滑らせなければならない。再び尾根上へ出ると、あとは問題となるところはない。以前、浜益御殿から雄冬山へ向う途中に暑寒別川上流にそそり立つ見事な岩峰を見て憧れを抱いたが、その岩峰がここからは尾根続きで望まれる。後日、このサイトの掲示板にAさんからの書き込みがあり、「大ガンケ」と呼ばれていたことを思い出す。これに登頂するにはアプローチを含めけっこう厳しそうであり、しっかりとした計画と準備が必要となろう。

暑寒別岳と行く手を阻む岩稜 西暑寒別岳を後にする
振り返ると暑寒別岳と西暑寒別岳が美しい 足跡の大きさは16cm、かなりの大物である

西暑寒別岳とのコルへは広い傾斜のある斜面を快適に滑り下る。コルからの登りは標高差約300mの広々とした大斜面であるが、見かけほどの傾斜はない。あせらず一歩一歩高度を稼いで行くしかないと自分に言い聞かせながらゆっくりと登ってゆく。頭上の低い岩稜を回り込んでやっと頂上への稜線上へ飛び出す。稜線上には数日前のものと思われるトレースがある。暑寒荘付近へ伸びる痩せ尾根を使って登ってきたようだ。下山は最後の川の渡渉で多少足を濡らしても、この尾根を下るのが一番効率が良さそうだ。緩く広い稜線を辿り西暑寒別岳頂上(1413m標高点)を通過、さらに頂上部の若干高そうな稜線上を端まで進む。途中の標高は、2〜3mは高そうだ。先ほど通過した中ノ沢岳は単なる尾根の突起にしか映らない。山というのは見る位置によって大きく姿を変えるものである。古いトレースはそのまま暑寒別岳へ向っているようである。問題の岩稜はおそらく右側の雪面から上部へ抜けたと思われる。スキーを外し、キックステップで慎重に登れば、意外に簡単に抜けられるのかもしれない。我々は頂上へ戻り祝杯である。  

《下山〜ヒグマとの遭遇》 

下山はルートを変え、先の古いトレースを辿ることにする。コンタ1350m付近の尾根分岐はトレースに助けられ見落とすことなく通過するが、傾斜があるために横滑りで下る。急斜面と緩斜面の繰返しであり、816m標高点付近ではかなり痩せてくる。ブッシュも顔を出しているため、左側の斜面を巻くことにする。コンタ650m付近の急斜面手前で一息ついていたとき、前方70〜80m先の尾根上に丸々と太ったヒグマが左側の斜面から飛び出してくる。もう一息下降する距離を伸ばしていたなら、出会い頭のご対面となっていたかもしれない。私の存在に気付かないのか尾根上を登ってきたため、あわててストックを叩く。それに気付いたヒグマは雪庇の側の尾根を飛び越え、右側のポンショカン川側へと駆け下って行った。なんとも素早い動きであり、有に7〜8mの距離を飛び越えたそのパワーは私の想像を遥かに超えていた。同行のKo玉氏を待ってから降りて行って足跡の大きさを測ったところ16cmであり、推定体重200〜300sの大物であった。

「この付近を下降すればスノーブリッヂを渡れるかもしれない」とKo玉氏がヒグマの足跡を追ってポンショカン川へ下降するよう勧めるが、クマ慣れした同氏とは違い、私としてはたとえ足を濡らしてでも尾根末端まで下降したい気分である。今年のこの山域の積雪は例年よりも多かったのか、結果的には尾根末端付近であっても足を濡らすことなく渡渉することができた。あとは暑寒荘への平地約500mを歩くのみである。(2006.4.30)

【参考コースタイム】暑寒別川林道入口P 5:20 → 中ノ沢岳頂上 9:30、〃発 9:40 → 西暑寒別岳頂上 11:55、〃発 12:10 → コンタ680m ヒグマと遭遇 13:35 → 暑寒荘 14:35

メンバーsaijyo、Ko玉氏

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