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 西ヌプカウシヌプリ(1251m)

十勝平野からはどこからでも見える西ヌプかウシヌプリ

/25000地形図「東ヌプカウシヌプリ」「然別湖」

1205mピーク周辺に群生するミヤマリンドウ
良く見るとゴーロの上部にピンクテープが見える
わずかであるが、駐車スペースが設けられている
青空に向かって斜面を登る
1205m標高点のあるピークはもうひと登り

 ヌプカウシヌプリとは「草原にいつもいる山(更科源蔵解)」で、十勝平野に裾野をひく存在感たっぷりの東西ツインになった二つの山である。南北のペトウトル山、名前は違うが西クマネシリとピリベツ岳、徳瞬瞥岳とホロホロ山など、ツインになった山は多いが、一方を登った場合、もう一方にも登らなければその山を終えた気がしないというのは山に登る者の性である。これはどんなに簡単な山にでさえ言えることだ。以前、この西ヌプカウシヌプリは積雪期に一度登っているので私としては既にこの二山は終わっている。だが、当サイトの山行一覧を見る度に東ヌプカウシヌプリがあるのに西がないのは片手落ちで、アバウトな性格の私でさえすっきりしないものを感じていた。札幌近郊の山であれば空いた時間を見計らって、さっと出かけるところだが、十勝ともなるとそう簡単に行くこともできない。夏休みが一週間ほど取れたこともあって、こういった宿題を一気に片付けるべく、この山に登ることにした。

 10年以上も前になるが、最初の時は白樺峠からスキーを付けて登った。かなりラッセルがきつかったが何とか急斜面にジグを切って登りきった記憶がある。その後、4年前の正月に同じ斜面にチャレンジしたが、積雪と藪漕ぎのミックスとなり、敢無く敗退した。低い樹木の上に積もった雪をラッセルして登るのだから上手く行くはずもないし、登りきったところで下りはどうやって下るのか、考えもつかなかった。地形図を見れば「千畳崩」とあり、それなりに嫌らしいところということだろう。この山の夏尾根登山道は比較的傾斜の緩い南斜面に付けられており、頂上までは概ね一直線である。登山口は白樺峠への緩いカーブの途中にあり、数台分の駐車スペースが設けられているので助かる。ひょっとして、駐車スペースは一杯になっているのではないかと気になっていたが、到着してみると車は一台も止まっておらず、夏休みの時期とは言ってもやはり平日である。

 登山道はしっかり明瞭と思いきや、登山口の看板のみが立派であった。薄暗いエゾマツの針葉樹林帯に続く登山道は南ぺトウトル山の登山道のように笹が被っていて、日常的に刈り分けるような管理はされていないようだ。もっとも、ダニだけは気になるがこの方が野趣溢れた登山が味わえて良いような気もする。登山口からしばらくはハギの花が見られ、そろそろ秋の始まりか… といった気分にさせられる。低い笹の中の登山道は一転白樺林となって、その後は白樺の疎林と笹原のみの急斜面となる。笹の緑と樺の白さ、そして空の青さが実に美しい。ここのところの不安定な天候、雷雨の日が多かったこともあって、久々の晴天に気持が高揚しないはずがない。右手には東ヌプカウシヌプリの大きな姿、そして背後の十勝平野は標高を上げる毎に大きく広がって行く。

 1205m標高点のあるピークが近づくと傾斜が緩み、草原の中の一本道となる。ピーク付近は広いお花畑となっていて気持を和らげてくれる。特に目立った花としてはミヤマリンドウが挙げられる。どこといって珍しい花ではないが、やはり野山で見る姿は見事で、生き生きと咲いている。お花畑を通過すると再び薄暗い樹林帯となり、コルへと標高を下げて行く。下りきったところからはいきなり視界が開け、突然 目前に見事なゴーロ帯が現れた。よくあるような岩に書かれたペンキなどは見られず、一瞬戸惑うが、よくよく目を凝らして見ると、上部にピンクテープが数多く取り付けられているのが判る。視界が良い時であれば問題ないが、ガスって視界が利かない時などは注意が必要かもしれない。例え道を見失ったとしても、藪を濃ぐ覚悟があれば無事に頂上まで飛び出すことも可能であろうが、出来れば登山道のあるこんな山でのそんな野暮ったいことは避けたいものだ。

頂上標識は少しずれた場所に設置されている 頂上から見る然別湖とナイタイ山

 ピンクテープを目標にゴーロ帯を登り切ると再び樹林の中へと突入、いよいよ頂上のエリアとなる。登山道も一部不明瞭、道を見失った場合には面倒でも見失った地点まで戻るのが得策だろう。我々もこの日の下りで一度見失っているが、すぐに戻っている。地形を見ずに登山道のみを辿る登山は本来であれば不本意なところだが、こんなところで藪を漕いだところで何の足しにもならない。何となく頂上到着かと思って見てみると、「西ヌプカウシヌプリ頂上」と書かれた標識はその少し先に見えた。高さから言えば最高地点は少し手前のこの辺りかと思われるが、展望を考えて頂上標識を少し先の然別湖が見える地点にずらしたような気がする。三角点があるわけではないので、この方が良いと判断されたのだろう。

 頂上からは然別湖の全体像と、その向こうには懐かしいナイタイ山を望むことが出来るが、視界は一方向で、しかも樹林が邪魔してすっきりとはしない。むしろ展望だけであれば、1205mのピークの方が十勝平野を望むことが出来て気持が良い。やはり東大雪の入口の山という位置的条件を考えれば、展望の広がりは平野側に分があるようだ。ともあれ、西ヌプカウシヌプリは無事終了、残るは西クマネシリの相方であるピリベツ岳のみである。ここはかなり以前に一度踏んではいるが、今後の日程を見つつこの山も何とかしなければならない。そんな思いが強く残るこの日の山行となった。(2013.8.26)

参考コースタイム】 登山1305 1205m標高点ピーク 14:20 西ヌプカウシヌプリ頂上 14:50、〃 発 15:00 → 1205m標高点ピーク 15:25 → 登山1555  (登り 1 時間45分、下り 1時間5分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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