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      西クマネシリ岳(1635m)

十勝三股から見る西クマネシリ岳

1/25000地形図十勝三股」

登山道へ飛び出すと、目の前に頂上岩峰が現れる
10時発ではさすがにこの山も遠い・・・ピリベツ岳
西クマネシリ岳登山道・入口
荒れた沢中の踏跡であるが、以前は車で走った
集材路跡を利用した登山道
樹林帯の中の薮へ突入するが、薮漕ぎ入門といったところだ

十勝三股から見る西クマネシリ岳とピリベツ岳は通称:オッパイ山と呼ばれ、その特異な山容で我々登山者を驚かせる。この山域には両山のほか、クマネシリ岳と南クマネシリ岳があり、何れも頂上付近は険しく、独特な山塊となっている。私がこの山域に足を踏み入れたのは23年前で、ピリベツ岳との1415mコルへ向う小沢からのチャレンジであった。最初にピリベツ岳に登ってから西クマネシリ岳へと向い、何となく続く踏跡を辿って両ピークを踏んでいる。この当時、「北海道の山と谷」・昭和52年初版 (北海道撮影社)に載っていた登山道は既に廃道状態で、帰路、西クマネシリ岳から標高を落して行くうちに完全に消えてしまった。途中からは薮漕ぎで、林間に微かに見える林道を目指して一気に下った記憶がある。その後の登山ブームの影響か、再び登山道は復活し、現在はピリベツ岳への縦走路もあるようだ。この時の山行で未だにはっきり覚えていることといえば、1415mコル付近がアイヌネギ畑となっていて、周辺がやたらとネギ臭かったということくらいである。

今回、ガイドブックに載っていることは知っていたので、少なくとも最小限の標識くらいは設置されているものと考え、何の下調べもせずに西クマネシリ岳へと向った。シンノスケ3ノ沢の林道を入って行くと車が一台停まっており、単独行の若者が帰り支度をしている。我々が到着した時点で既に頂上を踏んで下山してきたそうで、集材路が入込んでいて判りづらいとのアドバイスをもらう。以前はオッパイ山のコルへ向う小沢の出合付近まで車を乗り入れており、なぜかこの時点ではここがその時と同じスタート地点であると思い込んでいた。

沢に沿って踏み跡が続き、ピンクテープが点々と結び付けられている。ルートからは外れていないようなので、そのまま進んで行く。多少、荒れた感じであるが、沢沿いの道はちょっとした大雨にも壊れやすく、どこの山もだいたい同じような状況となっている。不明瞭な踏跡の終点は土場となっていて、見づらいが方向を示す標識もある。土場からは古い集材路跡を利用しての登山道となる。途中、別の集材路跡も入っていて、確かに登山口で出会った若者が言っていたように判りづらい。上へ向かう方向へ進んで行けば尾根上の踏跡へ出るものと考え、とりあえずはあまり考えずに進んで行く。正面に小高く西クマネシリの岩峰が望まれ、左側へ回り込むように登って行くと古い木材の切り出し場と思われる、少し広くなったところに出る。そこを通過、さらに斜度が増して気が付いたが、踏跡もピンクテープも何も見当たらない。わずかに残る雪渓をつなぎながら、あとは樹林の中の低い笹薮漕ぎで稜線を目指す。それにしても雪渓のどこにも出発地点で出会った若者の足跡など見当たらない。ひょっとして、実は途中で止めていたのではないだろうかと、ついつい考えてしまう。

稜線上に出てみるが、以前に下降したはずの古い登山道などどこにもない。結局、西クマネシリ岳の岩峰を目指しての薮漕ぎとなる。以前同様、この山を目指す登山者などあまりいないのかもしれないと勝手に結論付けるが、こういう時はとかく自分の都合がよいように考えがちである。雪が消えて間もないこともあり、薮漕ぎそのものは入門程度のものであるが、帰路の樹林帯付近だけは間違わないように注意しなければならない。そうこう考えているうちに、前方にハイマツ帯が現れる。一漕ぎすれば、頂上岩峰へ取り付けると思って近づいて行くと、いきなり登山道が現れた…? やはり途中でピンクテープを見失っていたようであるが、まずは渡りに船である。

岩峰へは、しっかりとルートが付けられている。けっこう高度感があり、融通の利かないプラブーツで登るには少々慎重さが必要だ。一箇所、左側がスッパリ切れ落ちているところに古いテープシュリンゲが掛けられているが、何年冬を越してきたものなのかも判らず、安易に加重することは避けたいところである。また、融けかかった雪渓の最後の部分は氷となっていて、これも滑りやすく要注意である。それなりに高度感を楽しみながら登って行くうちに、展望抜群の西クマネシリ岳頂上となる。晴天予想に反し薄曇り状態で、楽しみにしていた東大雪のウペペサンケ〜石狩連峰へかけてのスカイラインは薄っすらとしか見えない。高度感がある頂上だけに立体感も抜群で、隣のピリベツ岳までがなんとも遠く、険しいものに感じられる。かなり遅れて出発したこともあり、今日は無理せずにここまでとした方がよさそうだ。

以前にこれを見たとき、拳骨のような山に見えたクマネシリ岳 山域中で一番格好が良い南クマネシリ岳・・・頂上から

帰路は躊躇なく登山道を下ることにする。もちろん、間違えた地点を確認することが目的である。登山道はハイマツ帯から南へと続き、急な尾根筋上を忠実に下って行く。23年前に下った踏跡も、ひょっとしてここだったのではないだろうかと感じられる。途中からは沢筋へと下り、木材の古い切り出し場の手前で、登りで使った集材路へと通じていた。登山道・入口を示すピンクテープを見落としていたようで、若者が言っていたのはズバリこの付近のことだったようだ。結果的には、人の話を半分しか聞かなかったことで、余計な薮漕ぎを強いられてしまったようである。

後で地形図を見ると、登山道はかなり正確に描かれていることに気付く。考えてみれば、今回は夏道登山というモードで動いていたためか、行動中は全く地形図を見ていなかった。23年前の山行は、西クマネシリ岳からそのまま現在の登山道を下って行き、さらに残っていた踏跡を辿って、完全に消えてしまった辺りで車を停めた土場へ薮漕ぎで下ったというのが真相のようだ。この尾根上の登山道は現在、完全に廃道となっている。また、土場へ続く林道も当時はまだ新しく、車の走行も十分に可能であったが、現在は完全に消失してしまい、代わって不明瞭な沢沿いの登山道のみである。使われなくなった道というものは実にあっけなく消えてしまうものである。細かなメンテが欠けた山行もまた然りといったところであろうか。(2008.5.3)

廃屋同然の避難小屋

【避難小屋】

 登山口から土場への途中、古い小さな小屋が現れる。こんなところに小屋があっただろうか? ついつい考えさせられる。中を覗いてみると薪ストーブもあり、避難小屋としてはまずまずであるが、荒れ放題といった感じで今はだれも利用していないようだ。以前に営林署で使っていたらしいが、このまま朽ちさせてしまうにはもったいない気がする。少々手を加えれば、西クマ・ピリベツへの良い拠点となるかもしれない。以前からヒグマが多いとされるこの山域、山行中にはその痕跡を全く見なかったが、仮にそれなりのヒグマに追われた場合、この小屋へ逃げ込んだところで簡単に壊されてしまうだろう。そんな頼りなさを感じる避難小屋であった。

【参考コースタイム】 登山口 P 10:00 土場 10:40 → 西クマネシリ岳頂上 12:55、〃発 13:15 登山口 15:05  (登山時間;登り2時間55分、下り1時間50分)

メンバーsaijyoチロロ2

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