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   猫山(553.0m)

猫の頭のような 猫山

1/25000地形図 「遠音別岳」「根室峰浜」

海岸側の広い作業現場に車を止める
尾根筋を忠実に進む
簡易スノーシュー  こんなのでも沈まないから凄い!

 道内には「牛」や「熊」といった北海道を象徴する動物の漢字が山名として使われている例は多いが、さすがに「猫」ともなればこの猫山だけである。Web上をのぞいて見ると、由来についてはアイヌ語説もあるようだが、頂上の両側には耳のような岩峰があり、猫の頭のような丸い頂上を見れば、どう見ても山容からの命名と思われる。古い火山とのことだが、自然の造形とは実に面白いものを造り出すものだ。標高はたかだか553m、しかも猫山とあっては、少々なめてかかっていた。しかし、猫にはその丸くて小さなイメージとは裏腹で、意外に凶暴な一面があり、正にこの猫山にも難儀させられる結果となった。

矢印が私が勝手に登ったルンゼ  ・・・反省

 当初、頭で描いていたルートとしては9年前のラサウヌプリの入山口である。ここからは猫山から西側に延びる尾根があり、容易にピークを踏むことができると読んでいた。ただ1つ、私の思慮が欠けていたのは、正月のこの時期に林道が除雪されているはずなどなかったということである。結局、国道側に何かの作業現場があり、正月早々から工事などやっているわけがないので、そこに車を置かせてもらってのスタートである。スタート地点を確認したところ、茶志別川とポン陸志別川に挟まれた広々とした尾根上で、260mポコと300mポコを越えて、430mコルから南側の稜線に乗るルートとなる。

 足回りの選択に迷うが、結局はスキーにする。メンバーはスノーシュー、ワカンとそれぞれだが、明瞭な尾根筋が現れるまでには距離がある。重機の置かれた作業現場からは尾根筋を意識しつつ明瞭な尾根筋の末端へと進路を取る。送電線を通過して進んで行くうちに260mポコへと続く尾根末端となる。雪面は硬く、雪面からは笹も出ている状態ではスキーを付けたところで良い事はなさそうである。山遊人さんとチロロ3さんはスキーを止めて、ワカンに履き替える。私はスキーのみだったので、ここからはツボで行かなければならない。最後尾を歩いていたチロロ2さんの後ろに回る。5人が踏み固めた足跡でも、ツボともなればところによっては膝くらいまで埋まってしまうから敵わない。

 遅れ気味の私とチロロ2さんだが、先行しているメンバーがその都度ごと我々を待っていてくれた。私としては単にスノーシューをあまり好まないとの理由で置いて来てしまったが、後悔しても後の祭り、今後は少しでもこの道具に熟れるようにしたい。先行しているmarboさんが、トドマツの枝を払って簡易スノーシューを作成して待っていてくれた。枝を針金で止めたのみの素朴な代物だが、これが雪面に対してはかなり効果的だったから驚きである。山遊人さん始め、パーティの面々には入念に取付てもらったが、100mも進まぬうちに折れてしまった。装着する位置、ヘッドの仕上げ等… 少々改善の余地はあるが、それさえクリアできれば、非常時においての活用は十分に可能である。

いよいよ頂上! 猫山頂上にて ・・・遠かった

  メンバーの足を引っ張ってしまったこともあって、430mコルの手前で正午となってしまった。気持的には焦りを感じる。地形図上では等高線となっていた猫山への登り、見れば見事な岩壁となっていて、とても一筋縄では行きそうにない。「これは… 難儀するぞ ひょっとしたら無理かもしれない」そんな思いでコルに到着する。先行するメンバーは既に手前の斜面に入っている。取付くまでは良かったが、岩壁の基部付近で停滞している様子。私も急斜面へと入る。かなりの急傾斜だが正面のルンゼ2本のうち、左側は潅木がつながっていて無理すれば抜けられそうな気がする。一歩一歩ステップを刻み、ルンゼの直下へと進む。 よし、行ける! 左側の岩壁基部の端では先行メンバーがルート工作をしているようだ。

 意を決してルンゼに取付く。予定通り潅木をつかみながら、キックステップで可能な限り足下の確保に努める。頼みの潅木も冬枯れしていては後の祭り、体重を分散しつつ次の支点へと前進する。だが、次の潅木までの距離が予想したよりも遠い。途中、潅木のないところでは岩を掴むが、溶岩性のためかガバがあって助けられる。斜面が緩くなりルンゼの通過を無事完了、さすがにほっと一息。私としては、メンバーは既に別ルートから上がっているものと思い込んでいたが、予想していた別ルートからはなかなか現れない。ひょっとして、このまま現れなかったらどうしよう… メンバーが登ってこなければお助け紐しか持っていない私としては、ここをクライムダウンで下らなければならなくなる。呼びかけたが返答はなく、正直なところ少々心細い気分となる。

下りはパーティが設置したフィックスロープをたよりに下る  ( こちらもあまり登りたくない)

  と、その時、予想もしていなかった反対側の急斜面にIkkoさんを先頭にメンバーが現れた。この斜面へのトラバースと急斜面を登るため、ロープをフィックスしてのルート工作に時間を要していたようだ。ルンゼの下まで行って、行けると踏んだ私の読みは間違ってはいなかった。だが、行動については大きな失敗だった。パーティがバラバラになったこと、クライムダウンが微妙なルートにロープも持たずに登ってしまったこと等である。

真っ暗な中、無事帰着

全員がこの難所をクリアした時点で時間は既に14時近く、この陽の短い時期としては一般的に行動時間の限界は既に過ぎていた。しかし、後のことを考えたところでしょうがない。まずは頂上である。猫の頭にあたる緩い雪面を登り詰めて少し進んだところで頂上到着となる。間違いなく下山完了は日没後となるだろうが、難所の通過さえ終えていれば我々の力量としては何も問題はない。

頂上から、知床の主稜線は木々が邪魔して今いち良くない。だが、海側については海峡を挟んで国後島の白い山々が見える。全道全山登頂まであと十数山のKo玉氏、いきなり北方領土が返還されたらどうするだろう? ここでも彼の話題となるから彼は余程の人気者ということだ。もちろん、この猫山にも彼の足跡は残っている。メンバー全員が猫の手を真似て記念撮影。チロロ3さんはハート型のど派手なサングラスで余裕たっぷり。私としては頂上ビールなど不謹慎だから止めようかとも考えていたが、marboさんら「せっかくだ! 飲もう!」との心強い意見。やった! だが、核心部を下降してからとの他のメンバーの声にそうすることにした。

 かなり遅れ気味の私とチロロ2さん、薄暮の中、辛うじてスキーを回収する。黄昏は既に過ぎ、後は月明かりを頼りに深い森林の中に歩みを進める。一足速いIkkoさんは遠くで車のヘッドライトを点灯してくれている様子。だが、下山後に聞けば、他のメンバーはだれもそうしてはいなかったとのこと。まあ、他のメンバーからすれば心配する範疇ではないとの判断だろう。確かに、一度は疑った登頂への満足感には月明りが似合い過ぎ、私もついそれに浸りながら歩いていたのは事実であった。(2015.1.2)

猫山の写真(Ikkoさん提供)へ

参考コースタイム】 作業場 P 9:20  480mコル 12:20  猫山頂上 13:50、〃 発 14:00 → 480mコル 15:00  作業場 P 17:10    (登り 4時間30分、下り 3時間10分)

メンバー】marboさん、山遊人さん、Ikkoさん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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