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   七飯岳(779.2m)

城岱牧場展望台から望む七飯岳

1/25000地形図 「大沼公園」

途中からは登山道らしくなる
スカイラインの脇に車を止める
黒い大きな牛が「何だろう?」 と、こちらを見ていた
途中から見た北斗市方面  当別丸山が遠くに見える

  七飯岳といえばsakag氏(一人歩きの北海道山紀行)の地元の山で、氏の山行記にはちょくちょく登場する山である。私の妻が長年勤めた職場を退職、在職中は仕事の関係上、あまり札幌から遠く離れることが出来なかったこともあって、とりあえずは、ここのところ私が度々訪れていた函館へ誘ってみた。この件を講演会で札幌を訪れていたsakag氏に話してみたところ、函館市内の案内を買って出てくれた。山はsakag氏にお任せ、その中で選んでくれたのが今回の七飯岳である。初心者状態に近い私の妻が、果たしてこの山に登れるのだろうか、そんな不安を抱えながらの出発となる。

  七飯本町ICにてsakag氏と待ち合わせ、一路城岱スカイラインを登山口へと向かう。このスカイラインは大沼地区までつながっており、駒ケ岳の噴火に備えての避難ルートともなっているそうだ。途中の牧場展望台からは眼下に函館平野が大きく広がり、半島部基部の主だった山々も望むことができる。この展望台から少し戻ったところが今回の登山口である。七飯岳には石切場尾根コースと城岱スカイラインコースがあって、前者は長いが登山ルートとしては人気があるようだ。今回は初心者が登るとあって、sakag氏も久しく登っていないスカイラインからのコースに付き合ってくれた。函館への途中、八雲付近では激しく降っていた雨も大沼を過ぎたあたりからすっかり上がり、登山には打って付けの、暑くもなく寒くもない天候となる。

 入山口にはゲートがあって立入り禁止の看板が掲げられているが、登山者が登山のみの目的で道路を歩く分には何ら問題はない。立入りしていけないのは牧場の柵を越えた先である。作業用の道路は牧場内に続いており、緑鮮やかな牧草地と周囲に広がる展望が実に美しい。スタートからこんな調子なので、山登りとしての辛さなどまるで感じない。一般的な登山のイメージとは少し違うかもしれないが、数ある北海道の山では、こんなスタイルの山登りがあっても良いのではないだろうか。ここのところ道南への山行が多かったこともあって、馴染となった山々が挨拶程度に顔を出している。また、眼下に広がる風景では、やはり来年開通予定の北海道新幹線の軌道が目を引く。新函館vs北斗函館の駅名争奪戦も新函館北斗で決着、やっと名が付いた駅舎がその姿を現し、この地域全体の活況な様子がうかがえる。  

 この山に広がる牧場は大正時代から始まったらしく、町営として利用されて来たとのこと。高原の澄んだ空気と雰囲気はどこか道北あたりに在りそうな景観で、それが道南・函館平野の上に展開されているのだから、その光景の素晴らしさは言うに及ばず、である。我々が通過すると散らばっていた牛たちが物珍しそうに集まってきて、柵の向こうからこちらを窺っている。牛というのは草食の人懐っこい動物だが、たくさんの目が無言でこちらをじっと見ていると、なぜか後ろめたさを感じてしまうから、まだまだ私も善人ということなのだろうか。

ベニバナイチヤクソウが美しい 石切場尾根コースからの詰めで現れる岩峰
七飯岳頂上にて 岩峰の基部にはエゾカンゾウが見られた

    道路は牧場を離れて峠に差し掛かり、その手前から樹林帯の中へと続く歩道に入る。最初のカーブ付近からは駒ヶ岳の秀峰が見える予定だったが、残念なことにすっぽり雨雲の中、見えるのは大沼の湖面のみである。未だこの付近より北側は雨雲の中にあるようだ。歩道は斜面を横切りながら続き、途中で牧場からの踏み跡と交差している。この踏み跡を辿るのが距離的にも近いようで、そこから少し登ったところが展望の良い七飯岳の頂上であった。頂上の横には立派な小屋が建っているが、Ssakag氏によれば、牧場関係の建物だろうとのこと。避難小屋であれば一休みしたいところだ。以前はここにNHKの施設が建っていたようだが、今はそれも隣のピークへと移動したようで、この山の景観にとってはラッキーだったと言える。

  今日の私は運転手なので、残念だが、持って来た頂上ビールは妻に渡す。ふと見れば、欠けてはいるが二等三角点「七飯」が埋まっていた。であればと、いつものように金麦とのコラボ写真を…と思ったが、金麦の口は既に開いていた。これを上手く撮ったところで空き缶写真としか見えないだろう。拘っているわけではないが、三角点と金麦の写真はシリーズものにしようと思っていただけに残念だった。代わりではないが、三人で記念の登頂写真、これも希少性の高い一枚である。

 sakag氏の案内で、石切場尾根コースの詰めとなる岩場を見に行くことにする。頂上からは5分程度のところだが、確かにこちらのコースから登っていればそれなりに登頂気分が味わえるのかもしれない。岩場は迫力があって、その基部にはエゾカンゾウが群生している。付近はこの山でも高山的な雰囲気を感じさせてくれるところのようで、場所によってはハイマツも見られるとのこと。気候的にはそれなりの厳しさがあるということである。まだまだ登っていない函館周辺の山は多く、今後の道南山行へのさらなる期待を感じさせてくれる一山となった。(2014.6.16)   ■ sakag氏 癌春(がんばる)日記

参考コースタイム】  スカイライン入山口 P 9:55 → 七飯岳頂上 11:00、〃 発 11:40 →  スカイライン入山口 P 12:20 (登山時間 登り1時間5分、下り40分)  

メンバーsakag氏、saijyo夫婦          

【レトロを追って】

 七飯岳の下山後、生粋の函館っ子であるsakag氏が函館を案内してくれた。ネットの山ファンであれば垂涎の函館ツアーである。氏は社会科の先生をされていたこともあって、私としては学生時代に戻った気分で元町付近を巡ってみた。還暦が目前となった自分にとっての観光への期待となれば、どうしても私の育った時代よりも少し前くらいの、親から聞かされていた古き良き時代へと焦点が合ってしまう。一昨年以来、十数回の道南遠征を重ねて来たが、函館市内へ入るのは今回が始めて、そんな中、私の知らない多くのノスタルジックな世界がこの街には残されていた。その一つが最初初に訪れた老舗の来々軒である。入口がとにかく地味で、とても一般的には入店しようなどとは思えない雰囲気となっている。“のれん”すらもないのだ。ところが、中へと入って見ると大正〜昭和初期のレトロな世界がそのままで、出てきた函館塩ラーメンは古き函館を象徴するかのような逸品だった。私の年代では、こんなことがちょっとした感動となり、何となく得をした気分にさせてくれるものである。

 

       

見てのとおりの実に地味な入口

 

〒040-0053 北海道函館市末広町16−3

0138-22-2803

これぞ逸品 「函館塩ラーメン」

 店内にはレトロな世界が広がっていた

  

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