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   中尾山(1473.8m)  ・・・Ko玉氏、ついに500m以上全山踏破

見えた! 中尾山ピーク

 

1/25000地形図 トムラウシ山

増水気味の辺別川からスタート (左;ko玉氏 右;marboさん)

  盟友・Ko玉氏が北海道の500m以上全山登頂の最後の一つとしたのが、この中尾山だった。有名なクワウンナイ川の左岸側に位置する奥まった山で、今回はトムラウシ山への最短ルートとして人気の高い扇沼山への林道からのアプローチである。この林道、貸し出すカギの数が限られているそうで、入林はなかなか難しいと聞く。集まったメンバーは総勢13名、全員がKo玉氏のこれまでの山の数々を手伝ってきた面々である。前夜の雨で少し増水気味の辺別川の渡渉からこの世紀の山行はスタートする。

上流に入ってもなかなかの水量

 ベテラン揃いのメンバーだが、油断すれば流されそうな渡渉をクリアし、中尾山西面を直登する中尾沢へと入る。おそらく普段であれば小沢程度の流れと思われるこの沢も、それなりの迫力で我々を迎い入れた。小滝程度のものでもなかなかの迫力となっているから楽しくなる。9月ともなれば濡れるとやはり心地よいとは言えない。両岸はそこそこに歩くスペースもあり、あまり流れに入ることなく950m二股となる。先頭を歩く私とmarboさんは後続を待つ。記録のある左へ行くのか、未知の右へ行くのかKo玉氏に尋ねたところ、安全牌の右からとのこと。さすがにここでは慎重になるだろう。

 規模は小さいがナメが現れる。増水気味のためか何とも美しく、ついつい気分も高揚気味。その後もナメや小滝は現れるが、ほとんど登高に支障はない。逸るKo玉氏と、ここのところ検査の数値が劇的に改善したmarboさんがパーティ本体を大きく引き離して先頭グループを形成。途中、大休止で皆が集まっても彼らの姿は見られない。気持だけは既に頂上に到着しているのだろう。一方、「写真甲子園」のIkkoさんとその弟子である私は逆に本隊から引き離されて最後尾。「師匠の背中に教われ」とはよく言われているが、Ikkoさんがデジカメを取り出す度毎に私もカメラを取り出してみた。だが、師匠の狙いがどこなのかが今いちよく判らない。まだまだ未熟者ということか・・・ こんなことをやっていては遅くて当たり前。

小規模だがナメか゜出現 やった〜!

 徐々に沢の傾斜が増してくる。どこかで滝の出現があっても不思議ではない雰囲気である。そうこうしているうちに水量がぐんと減少、気が付けば流れは消えて沢形のみ。背後には平野が見える。それなりに標高を上げたようだ。先頭のKo玉氏がなぜか籔に突入 ?・・・ふと見れば平行して沢形がまだ続いている。逸ったか? 最後尾としてはKo玉氏の進む通りについて行くより仕方がない。そのうち再び沢形へと戻ったのだから、きっと正気に返ったのだろう。偉業を成し遂げる寸前の人間の心理は凡人にはとても理解できないものがある。

 パーティの大方はフェルト底で、土の急斜面を進んで行くには辛いものがある。ましてや、先行者が滑った地面は確実に後続者も滑る。徐々に籔が濃くなって傾斜が緩む。腕の力で目一杯笹を掴み、もがきながらも前進あるのみ。先頭が稜線上に出たとの良報。だが、進めど進めど籔ばかり。パーティ全体がかなり細長くなっているようだ。しばし籔と格闘、最後の笹薮をこいで私も稜線上へ。見えた! Ko玉氏に残された500m以上最後のピークである。今日の主役はニタニタしながら最後尾へとやって来た。彼なりに精一杯自分を落ち着かせているのだろう。こうなれば頂上の準備が整うまでは私が彼をなだめすかす役か・・・

やったね! Ko玉さん

 稜線上はぐんと歩きやすくなる。ほぼ全員が頂上へと消えて、いよいよだ。来た、来た、来た〜! 走馬灯、走馬灯、こんな場面に使うのかな・・・? 残り10mほどのバージンロード。これを神妙に登りきるKo玉氏、仲間が作るアーチを潜って、三等三角点「中尾山」にしっかりタッチ(10:32)。正に歓喜の瞬間だった。パーティ全員の拍手の中、Ko玉氏の目頭が潤む様子を確かに私は見たが、それ以上は見ないことにした。こんな場面での感動のおすそ分けなど、もらったところでかなわない。

 500m以上の全山登頂とひと言で言うのは簡単で、世間の大多数の人間には、この快挙もスタンプラリーの山バージョンくらいにしか映らないだろう。だが今後、同じ目標を掲げる人間が現れ、それに本気になって挑戦しようと考えた場合、進む道程がいかに厳しく困難であるかを身にしみて感じることになる。たとえどんなに数多くの山に登り続けていても、一山でも欠けてしまっては全山とは言わない。自衛隊基地、立入り規制の活火山、私有地、離島など、もちろん「仕方がない」など通用しないのがこの「全山」という超シビアな世界。前人未到とはそういうことである。未知なる領域が消えてしまい“冒険”という夢が消えたといわれている21世紀にあって、地味ではあるが実に凄い記録の誕生である。Ko玉氏、あっぱれ!・・・しゃくだが、いつもであればこき下ろし役の私でさえ心底そう思えてしまった。(2015.9.5) つづき

参考コースタイム】 駐車地点 7時20分 → 900m二股 8時55分 → 中尾山頂上 10時32分、〃 発 11時45分 → 840m二股 13時53分 → 駐車地点 14時24分 (登り3時間12分、下り 2時間39分) 

メンバー】Ko玉さん、sakagさん、Taoさん、yoshioさん、山ちゃん、Aketaさん、Sakakさん、fgimotoさん、Yabuさん、mocoさん、Ikkoさん、marboさん、saijyo 

  

山行写真 Ikkoさん提供

 

     

 

     

 

     

 

     

 

     

 

 

 

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