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        1493m峰「中(1493m・EIZI@名寄さんのGPSで測定)

    御茶々岳(コンタ1330m)

小天狗から望む夕張中岳

/25000地形図「芦別岳」「布部岳」

1202m標高点を越えると中天狗が見える
18線沢は一番奥の砂防ダムまで車を乗り入れることができる
18線沢はまだ雪渓で埋まっている
芦別岳と夫婦岩

  後芦別山群と呼ばれている山々には、北から中天狗、小天狗、1493m峰「中岳」、1457m峰「シューパロ岳」、1415m峰と鋭角的な山が続く。この外にも鋭角的なピークが点在していて魅力的な山域を形成しているが、奥深いこともあって簡単には人を迎え入れないため、かなりマニアックな山域となっている。主稜線は北の峰から夕張岳へと続くが、この後芦別山群は主稜線上からの西に向かう支稜線上にあり、それぞれのピークは繋がっていない。

 1493m峰通称「中岳」は名前からは考えられない、鋭角的な姿の山である。中天狗や富良野西岳からは端正な美しい姿で望むことができる。夏期の登山ルートとしては惣芦別川沿いの林道からのアプローチが考えられるが、崕山の入山規制によって、林道に立ち入ることすら難しくなった。残るルートとして、この芦別岳方面からの尾根伝いのルートがあるが、完璧な積雪期であれば斜面はちょっとしたミスも重大事故につながりかねないほどの傾斜があり、簡単には近づけない。今回のように雪面が安定し、ハイ松や笹も姿を現す5月中〜下旬頃が一番の狙い目である。

 主稜線(芦別岳〜御茶々岳)までは18線沢を使うことにする。芦別岳旧道からのアプローチは、ユーフレ小屋までの旧道のアップダウンが激しく、ユウフレ川の水量が多いこともあり、時間がかかりそうで効率が悪い。その点、18線の沢からのルートは小沢であるため、雪渓を利用して快適に高度を稼ぐことができる。

中岳への登頂ルート

 18線奥のため池の横から林道は続く。一番奥の砂防ダムが平成15年竣工となっていて、付近は整備されている。雪渓がなければ、この砂防ダムがあるコンタ450m付近まで車を乗り入れることができる。この付近の18線川の水量はけっこうあり、左岸から右岸への渡渉を心配するが、左岸沿いに付けられている作業道跡は意外に伸びていて、490m二股では本流である右股にかかる古い橋を渡って、そのまま予定ルートである左股へ向かっている。しばらくは尾根を進み、右岸の小沢に雪渓が出てきたところで、雪渓上にルートを変える。この時期の雪面は気温の上昇により、落とし穴のように不安定であるため、意識的に斜面にルートを取るようにする。標高を上げて行くと背景には水田が広がり、大麓山やトウヤウスベ山、また下ホロカメットク山の美しい姿も見えてくる。途中で小沢は左股の沢に合流するが、さすがにこの標高まで登るとまだまだ春山の様相であり、水流は分厚い雪渓の下である。

 コンタ950mまで上がると左手に急峻な山容の槇柏山が迫り、雪渓は一時平らになる。さらに約30分も進むと、槇柏山と御茶々岳を結ぶ稜線上を通過する。ここからは御茶々岳の南面を起き上がった笹薮を避けながらトラバース気味に進み、主稜線上・1202m標高点のあるコルに到着する。付近からは芦別岳や夫婦岩の迫力ある姿が迫ってくる。進行方向には中岳が鋭角的な姿を現す。中岳までの斜面のトラバースは先導するEIZI@名寄さんの踏跡通りに進む。同じ方向のトラバースは延々と続き、さすがに疲れてしまったため、1309m標高点のある小ピーク手前で稜線上へ上がることにする。これが失敗で、小ピークへ上がると反対側の斜面はとんでもない急傾斜で下っていて、結局斜面のトラバースに戻ることになる。後で気がついたが、あまいものこさんのHPで書かれているように、コンタ1130m〜1150mの平坦な地形からコンタ1340mの小ピークを巻いて、1346m標高点のある小ピークを目指すのが一番楽なようであった。結局、一番悪いルート取りをしてしまい、余計な時間と労力を費やしてしまう。

 1346m標高点手前のピーク付近で先導するEIZI@名寄さんを見つける。中岳手前のコンタ1320mコルから中岳へ取付くところである。あまいものこさんの記録にある、一ヶ所上へ繋がっている雪渓からのアタックのようである。そこを抜けると藪漕ぎとなり、次の雪渓@から進路を左方向へ取り、頂上の肩Bを目指すようである。

中岳頂上に到着

 我々も恐る恐る中岳への登りに入る。雪渓から笹薮に入り、藪漕ぎで抜けると雪渓@である。ここからAにかけてはあまいものこさんの記録では、“途中で転ぶと宙を飛ぶことになる”と書かれているところで、斜面の下は10〜20mくらいの崖となっている。今回は左側の笹薮が起き上がっているので、何となく安心感がある。もう少し時期が早く、雪面だけの状況であればかなり怖いかもしれない。Aを過ぎてBまでは再び藪に突入するが視界が利かないため、かえって傾斜も気にならず、ただ登るのみである。Bから頂上まではハイ松の強烈な藪漕ぎである。ただ、頂上は間近に見えていて大いに期待が膨らむためか、あまり苦にはならない。頂上は緩やかな双耳峰となっている。待望の頂上は展望抜群であり、期待以上である。普段あまり目にすることのない、シューパロ岳や中天狗、小天狗などの山々を間近で望むことができる。旭川地方気象台の予報に反し、まるで今日の中岳山行のために取っておいたような素晴らしい晴天である。

中岳頂上からの南側の眺望

 下山時の雪渓の下降を心配したが、起き上がった笹薮がある安心感からか、踵をしっかり踏み込み、キックステップで軽快に下山することができる。とは言え、@で足を滑らせた場合はやはり、空中を飛ぶことになるだろう。1320mコルからは往路をトラバース気味に進み、途中からはコンタ1130m〜1150mの平らになった地形を目指す。平地では気楽に距離を伸ばすことができ、1202mコルまでに多少の登り返しはあるが、スピーディに到着することができた。    頂上からの眺め 2012年へ

 

《御茶々岳へ》

中岳からの帰り、御茶々岳を目指して進む 北から回り込むと御茶々岳の頂上が見える

 コルでメンバーと別れ、御茶々岳を目指す。北海道らしからぬ山名と、好展望が予想されるその位置から、以前から気になっていたピークである。見たところ雪渓が張付いているのは、主稜線上の右側の沢形と槇柏山との稜線上だけのようで、二つの雪渓が頂上部で繋がっているかどうかは判らない。主稜線から離れ、沢形の雪渓に取付く。けっこうな傾斜であるが、腐ってきた雪面はキックステップがしっかり利いて安定している。ただ、起き上がった笹薮との接点では不安定であり、笹にぶら下がるつもりでいち早く笹につかまる。頂上部までの急斜面を慎重に登ると平坦な広い雪面に飛び出す。頂上までの間には笹薮やハイ松が起き上がって自然のバリケードが築かれているため、そのまま雪面上を進み、比較的雪渓が残っているであろう北東面まで大きく回り込むことにする。予測した通り、雪渓は北面の大きな沢形まで続いていて、既に笹薮が起き上がって藪に覆われている頂上が見えてくる。最後は藪漕ぎで御茶々岳に頂上に到着するが、10m程度の藪漕ぎである。頂上からは、なんといっても芦別岳の鋭角的な姿に圧倒される。やはり北海道の“槍”と呼ばれるに相応しい山である。間近には山部周辺の既に緑色に変わった平地が広がっていて、里から近い山であることを実感する。下りは頂上の横から槇柏山へ続く稜線上の雪渓を下る。この雪渓の途中はかなりの傾斜があり、笹薮へ逃げながらの下降である。

 この時期は藪と雪渓、双方を臨機応変に利用することにより、より効率のよい山歩きが楽しめる。日の長さもあり、他の時期ではちょっと難しいと思われる山行計画も意外に容易に実行に移せる時である。(2004.05.23)    

EIZI@名寄さんの1493m「中岳」の山行記へ

【参考コースタイム・後発】 車止め(砂防ダム) 5:00 → 490m二股 5:10 → 950m平地 7:10、〃発 7:25 → 1202mコル 8:00 → 1320mコル 9:50 → 中岳頂上 11:10、〃発 12:05 →  1320mコル 12:35 → 1202mコル 13:50 → 御茶々岳頂上 14:30、〃発 14:35 → 車止め(砂防ダム) 16:35

メンバー先発 EIZI@名寄さん、チロロ3(旧姓naga) 後発 saijyo、チロロ2

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