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      ナイタイ(1332.0m)

ナイタイ高原牧場から見るナイタイ山(頂上は左奥)

/25000地形図  「勢多山」

13時を過ぎてなんとか頂上に到着する
除雪はナイタイ高原牧場の入口までである
稜線まで上がって一休み
昼を過ぎても、ナイタイ山がなお遠い

日本一の広さを誇るナイタイ高原牧場が山麓に広がるナイタイ山は、東大雪の南側に位置する然別湖周辺の一山である。“ナイタイ”とはアイヌ語名で、「奥の深い沢」を意味し、おそらくこの山域の中では最も奥深いナイタイ川周辺のことだろうと思われる。西側に然別湖、東側は十勝平野に山裾を広げ、中腹の広々とした牧場からは十勝平野の北海道らしい雄大な光景を眺めることが出来る。

今回、牧場内のレストハウス(標高約800m)までの除雪と下山後のジンギスカンを期待して出かけて行ったが、除雪は牧場の入口までしかされておらず、入口のゲートも閉まっていた。後日、インターネットで調べたところ、4月下旬から10月下旬までが一般に開放されている期間だそうである。山に入るにあたって、さすがに立入禁止と表示のある牧場のゲートを潜るのは気が退けるため、道道85号(鹿追〜糠平線)へ続く三の沢沿いの林道からナイタイ川沿いの内待竹山林道へ入り、592m標高点から尾根上を辿るルートへ変更する。最低限の下調べを怠った結果である。

内待竹山林道はアップダウンの少ない気持の良い林道である。林道入口には熊出没注意の立看板があるが、山中で見た動物の足跡のほとんどはエゾシカと野ウサギなどの小動物のものである。エサが極端に不足するこの時期は笹の葉や樹木の表皮までもが食い尽くされている。この程度の食物摂取で、深雪を力強く縦横無尽にラッセルしているエゾシカのパワーにはいつも驚かされる。我々人間はカロリーのある美味しいものを日常的に食べているが、ラッセルとなると直ぐに音をあげてしまうことが多い。野生動物の生きることへの執念というか、力強さには全く脱帽である。

592m標高点は分岐となっていて、ここから頂上の北東へ伸びる尾根の末端に取付く。取付きは急傾斜だが、尾根上へ入ると概ね緩斜面である。少し進むと林道へ続く作業道が現れ、その後も次々と集材路を横切る。コンタ790m付近は土場のようになっているが、おそらくどこかに両側の林道からこの尾根上へ直接上がってくる作業道があるはずである。

頂上からの眺望は十勝平野が広がる 南側にはナイタイ高原牧場が見える
ナイタイ高原牧場を下るが、雪質はモナカ状である 牧場入口の除雪終点までは遠い

同じような状況は1187m標高点付近まで続くが、背後の十勝平野は大きく広がり、高度が上がっていることを実感する。ナイタイ高原牧場のある南側の尾根は白く輝き、うるさい潅木のない斜面は何とも魅力的に見える。1187m標高点を過ぎた辺りで、ナイタイ山と手前のコンタ1200mの小ピークが見えてくる。小ピークの北側を巻けば最後の急登となるが、時計は既に13時近くとなっており、疲労感も手伝ってか登頂は実際以上に厳しく感じられる。入山時、この時期のタイムリミットは遅くとも13時と決めていたが、頂上が近くなるほどその時間も少しずつ延長されてゆくから恐ろしいものである。コンタ1200mをかわすと、いよいよ頂上台地への約70mの急斜面である。ここは慎重に大きくジグを切る。台地上へ上がってしまえば、ほとんど頂上までの登りはない。13時30分、何とか頂上へ到着する。南東側の視界は思っていた以上に利くが、北西側は完全に樹木に覆われ、全く視界が利かない。同じような趣向の登山者が他にもいるのか、木々には幾つかピンクテープが結ばれている。あまり入山者のないこの山に、登頂した人達の誇らしさや満足感が伝わってくるようである。

下りは往路を引き返すには時間的に少々厳しく感じられるため、ナイタイ高原牧場へ下ることにする。下山開始は14時に近く、使える時間は最大限3時間である。下りでは2つの小ピークを巻くようなルートを考えるが、焦りのためか地形図上では明確に表現されていないコブを1091mの小ピークと読み違える。以後 “ボタンの掛け違い”となってしまい予定とは反対側を巻くことになる。間違いに気づき斜面のトラバースで予定のルートへ戻ることにするが、当然標高も違っているため、標高を落とせないトラバースとなる。南面のため、雪面だけが固くなるモナカ状の最も滑りづらい雪質である。この雪面に積雪でもあれば、間違いなく表層雪崩の巣となることだろう。

ところでナイタイ高原牧場であるが、昨今BSEや鳥インフルエンザが世情を騒がせている折でもあり、無断での立入は少々憚られた。しかし、日没までの持ち時間は少なく、緊急避難ということで通過させてもらうことにする。下山後、牧場の職員と思われる人物が様子を見に来たが、日没迫る時間帯でもあり、我々の服装を見て登山者と理解したのか、何も聞かずに立ち去って行った。

 冬山登山の基本である早め早めの行動の重要さを、行程面だけでなく精神的な面からも強く感じる山行であった。 (2004.2.1)

【参考コースタイム】 ナイタイ高原牧場入口(除雪終点) 7:55 → 750m標高点(尾根取付) 9:35 → ナイタイ山頂上 13:25 、〃発 13:40 → ナイタイ高原牧場 15:05 → ナイタイ高原牧場入口(除雪終点) 16:20

メンバー saijyoチロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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