那英山(819.2m)
1/25000地形図「野花南」「上富良野」
道道の分岐に車を置く |
奈英山へ向う |
奈英山の取付き付近から見る芦別岳付近 |
那英山は国道38号線沿いの芦別市と上富良野町や美瑛町付近の上川盆地に挟まれた幌内山地に位置する、1000mにも満たない低山である。付近には真っ白な十勝連峰の連なりや芦別岳はじめその周辺の険しい山々を間近に控え、これらの山と比較して高さも山容も見劣りすることは否めないが、逆を考えれば山岳景観を楽しむには格好の展望台であることには間違いない。
標高差約100mの斜面は最高の滑りが楽しめそうだ | この雪庇の上が奈英山頂上である |
縦走途中に見るオプタテシケ山 | 奈英山頂上から十勝岳付近を望む |
最近、この山へ入る営業登山もあると聞くが、富良野周辺のパウダースノーとこの地域の知名度、さらには手頃さなどを考えれば、十分に頷ける気がする。地元の山岳会では定番の山となっているそうで、この山へ続く尾根のほとんどがトレース済みとのことである。西側は険しく尾根も細いが、東側は比較的斜面も緩くルートとしてはこちらの方が容易である。
工事中であった道道581号(留辺蘂上富良野線)から奈江を経て富良野へ向う道路が開通し、今回は那英山から南の中山を廻り、NTTの「高峰」施設の管理用道路から奈江に下る予定で計画する。車を一台、下山予定地点に置き、道道分岐から美瑛町と上富良野町の境界線上にルートを取ることにする。TVドラマ「北の国から」で脚光を浴びる富良野周辺の自然を写真に収めようと、撮影目当ての車が通り抜けて行く。快晴であるため放射冷却でかなり冷え込み、木々は見事な樹氷となっていて、どの光景1コマを取っても写真家顔負けの素晴らしい作品が出来そうである。十勝連峰から大雪山にかけての山々の連なりをバックに、取付き付近の広々とした雪面を上がって行くが、山に登らずスノーハイキングだけで一日過ごしても十分に楽しめることだろう。
コンタ430m付近から尾根の登りに入る。付近は鬱蒼とした針葉樹林帯で、人里から近いにも関わらず、深山の趣きである。急斜面に一汗かくと尾根は広く平らになり、コンタ560m付近で頂上へ続く左側の尾根に入る。広いコルからさらに一登りすると視界が開け、正面に那英山の東斜面が見えてくる。標高差約100mの急登である。大きくジグを切って標高を稼ぐが、樹林のない斜面では雪崩が怖く、右側の樹林帯へ逃げることにする。この斜面はこの山で最も十勝連峰の眺めが良いところで、積雪さえ安定していれば山スキーヤー冥利に尽きる最高の滑降が楽しめそうなポイントでもある。
急斜面を登りつめると尾根が細くなり、正面に雪庇が近づくと頂上である。頂上からは平野を挟んで連なる、大雪山、トムラウシ山、十勝連峰、大麓山など、白い峰々の輝きが実に美しく見事である。少し離れて見える天塩岳も印象的であり、上川盆地の北から南まで全てを見渡すことができる。ただし、残念なことに西側は樹林帯となっていて、楽しみにしていた尻岸馬内や野花南岳、また同じ幌内山地の瑠辺蘂山などは見ることができない。北西風を避けて、雪庇の下へ降りて休憩とする。
中山は稜線上のコブに過ぎない |
下山は南の中山へ向けて稜線上を進む。この稜線上は内陸部の低山であるにも関わらず、意外に雪庇が発達している。隣の尻岸馬内山の稜線上でも同様であったが、北西風の影響を受けやすいのかもしれない。硬雪と吹き溜まりが交互に現れ歩きづらいが、基本的には風上側を歩くことにする。斜面が緩いので、風下側の雪庇の下を歩くのも方法であるが、木々の密度が若干濃くてうるさそうである。中山は山というよりは尾根上のコブに過ぎない。西側から尾根が一本入っていて、辛うじて中山付近であることが確認できる。さらに南下し、639m標高点まで進むと高峰(626m)の特徴的な姿が近づき、手前にはNTTのアンテナも間近に見える。ここで左寄りに針路を取り、やっとシールを外しての下降である。
稜線上ではシールに雪がくっ付きはじめたため、雪質の変化が気になっていたが、予想に反して粉雪の深雪であり、木々の間を快適に標高を落として行く。途中、大きなエゾシカが2頭、我々に気づき一目散に逃げているところであった。深雪の中での重い体では思ったようには進めないのか、直ぐに追いつきそうになり、スピードを緩めて彼らを先に行かせることにする。相手が野生動物であっても深雪であればスキーの方が断然速いようである。シカに気を取られたためではないが少し早い地点で下ってしまったため、コンタ480mの丘を目前にして登り返しとなる。標高差10〜20m程度の登りであるが、最後となれば少々きつく感じるものである。越えて直ぐに予定の道路が現れ、この緩斜面を下降して予定通り奈江の駐車地点に到着する。
【参考コースタイム】道道581号・奈江分岐 8:45 → コンタ560m・尾根分岐 9:50 → 那英山頂上 10:45、〃発 11:10 → 中山 12:30 → 639m標高点 13:30 → 奈江・駐車地点 14:20
【メンバー】 Ogino氏、saijyo、チロロ2