<戻る

      華山(1758.5m)

北大雪で人気の武華山

1/25000地形図利岳」

“休むライオン”のようなライオン岩
強風の中、頂上を目指すが、天候は急速に回復
大雪国道から入って、直ぐのところに車を停める
林道途中に見られる、イトムカ鉱山のトロッコの橋梁跡
分岐手前のナメ滝

武利と武華は北大雪を代表する山で、登山道が整備されていることもあり、夏は多くの登山者で賑わう。両山は縦走されることが多いが、一時期、縦走路を藪が覆った時期もある。今から2030年ほど前のことで、私もニセイチャロマップ川から武利岳へ登り、藪が被って踏み跡程度しかない縦走路を通って武華岳へ登った記憶がある。現在は登山ブームのあおりからか、縦走路も車幅くらいになっているとのことで、その時々の登山事情と道幅は比例している感じがある。高さに勝る武利岳が主で武華山は従の印象を受けるが、山容の魅力で言えば決して武華も武利には劣ってはいない。留辺蕊町誌によると山名の「ム」は塞ぐ、「カ」は越える方法であり、温泉が付近にあることによってなかなか氷結しない川が語源のようであるが、私の理解力では今ひとつ判らない。

今回は石北峠から主稜線をトレースして武華山を目指すKo玉さん・クリキさんのパーティとの集中登山で、我々は登山道コースから残雪期の武華山を目指す。林道の雪が消えないこの時期、武華山登山口までの約4kmは歩かなければならない。途中、水銀の採掘量・東洋一を誇ったイトムカ鉱山の施設跡と思われる遺構を随所に見る。後で判ったが、イトムカ川へ降りる955m標高点付近沿線は採鉱現場に近く、以前に元山と呼ばれる街があったそうで、往時には5000人もの人々が暮らしていたとのこと。学校や郵便局、消防団などもあり賑わっていたそうである。鉱山を経営していた野村鉱業は昭和47年に採掘を中止、翌年には野村興産鰍ニいう新会社を設立、主に水銀などの産業廃棄物を処理する企業へと変わる。山歩きをしているとただの林道と思えるところに、昔は町があったという話しをよく耳にするが、ここも同様である。時代の移り変わりとはこんなものなのかもしれない。

登山口からライオン岩コースと尾根コースの分岐までは明瞭であるが、登山道は積雪で斜面と一体化しているため、斜面のトラバース状態の歩行がしばらく続く。分岐手前で融雪のために増水した大きなナメ滝が現れる。夏にはこのコースの見所の一つとなっていることだろう。分岐からの登山道は全く判らないので、地形図を見ながらのルートファインディングとなる。ライオン岩への尾根上はところどころ急峻で、岸壁のルンゼ状に残る雪渓をキックステップで登る。もう少し雪面が硬ければアイゼンも必要となろう。北海道の南岸を低気圧が通過中で、それへ向ってのオホーツク海からの吹き込みで尾根上は地吹雪状態となっている。午後からは回復するとの予報だが、オーバーヤッケにオーバーズボンといった厳冬期同様の服装でさえ寒さを感じる。日の長いこの時期、ここは少し天候の回復を待った方が良さそうだ。石北峠からのKo玉さんとクリキさんのパーティもこの突風には難儀していることだろう。

3040分も待ったであろうか、断続的に吹き荒れる突風も心なしか弱まったと思われた時、様子見と思われるウグイスの遠慮がちな一鳴が…鳥のさえずりは天候回復への予兆とはよく言われるが、彼らの本能は空気の微妙な変化を正確に読み取っているのかもしれない。対自然といった状況で我々としては彼らの行動からそれを読み取るより術がないようだが、嬉しい予兆であることには間違いない。ふと、話し声が聞こえたようにも感じるが、すぐに風音に消されてしまう。再び、今度は確かに聞こえたように思えたため、こちらから呼んでみると「おおーい」との返事、Ko玉さんとクリキさんである。我々が停滞している間、彼らはライオン岩を目指し黙々と歩いていたようである。

武華山頂上に到着 稜線上のハイマツはエビの尻尾状態

 

吹き止まぬ風の中、我々もすぐに尾根上へ戻り、ライオン岩を目指す。小岩峰を急斜面のトラバースで巻くと、ちょうど“ライオン”の足下で休む彼らが見える。石北峠からの長い稜線上、取り付きから3040分は藪と倒木に悩まされたとのこと。それ以降は雪渓が現れ、岸壁越えは急斜面の雪渓を利用、快調なスピードで到着したそうである。突風も地形的な違いらか、そうでもなかったようだ。とはいえ、彼らの体力・経験あってのことで、石北峠から1パーティとして行動していたなら、我々が間違いなく彼らの足を引っ張っていたことだろう。

ライオン岩からは4人パーティとなり、約1km北方の武華岳頂上を目指す。稜線上からは風向きが西風へと変わり、ガスが猛烈な勢いで我々のいる稜線上で舞い上がり、東側の谷中へと流れ込んでは消えて行く。空のあちこちで青空が覗き始め、天候の回復は間違いないところだ。こんな時こそとばかりにカメラを取り出すが、ふいに風対策を怠ったためザックが斜面に転がって行く。あわてて止めて事なきを得るが、風の強い稜線上では身の周りのもの全てに神経を注ぐ習慣を身に付けておかなければならないようだ。目指す頂上はガスの合間から現れては消える。そのうち風下の東側には青空が広がり、武華山頂上はしっかりと、確かに姿を現す。頂上までは一直線に稜線が伸びている。登頂が危ぶまれていただけに、喜びはひとしおであった。(2007.5.20)

【参考コースタイム】 国道39号線 640 武華山登山口 8:00 途中40分停滞 ライオン岩 1130 → 武華山頂上 12:05、〃発 12:15 別・尾根ルートを下山 武華山登山口 13:50 国道39号線 1455 (登山道ルート;上り4時間45分、下り2時間40分)

  【メンバー登山道ルート/ saijyo、チロロ2  主稜線ルート/ Ko玉さん、クリキさん

<最初へ戻る