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      内岳(902.2m)

 

道南はこのサイトを開設して以来、あまり足を踏み入れることのなかった山域である。夏のイメージとしてはヒグマによる事故が多発する山域、冬は一山狙いのみで車を運転して行くには、つい億劫になってしまう距離というのがその大きな理由であった。抜群の行動力で道内全山制覇(700m超)を狙うKo玉氏が函館に転勤になったことで、昨年同様に今年の正月山行は道南と、夏の早いうちから決まっていた。紋内岳はそんなきっかけでもなければ、決して登ることのなかった山である。昨年の正月山行で登った横山の南側に夏山のガイドブックにも登場する特徴的な小鉾岳があり、紋内岳はさらにその南側に位置している。

JR野田追駅横から道道573号線に入り、今回は正月ということもあって、皆で途中の桜野温泉に一泊する。道南にはこういったこじんまりとした温泉宿が実に多いが、静かにのんびりと正月を過ごすには絶好のスポットといえそうだ。起点は袋小路のようなこの道道の除雪終点で、そこから数キロほど歩かなければ山へは取り付けない。付近には岡山県営の桜野牧場が広がっているが、県内の酪農家の経営安定のため、岡山県が遠い北海道に作った牧場で、長年に渡って畜産技術を培ってきたそうである。

除雪終点のゲートからスキーを付けて歩いていると、小鉾山の左側遠くに目指す紋内岳が見えてくる。久々の連荘での計画のためか、カメラを取り出して写真を撮る余裕などなく、皆の後を追っかけるのがやっとといった感じである。シーズン最初のスキー登山ということもあり、何となく気持が引けてしまっているのかもしれない。今回、デジカメが電池切れになり一枚の写真も載せることが出来なかったが、いつもであれば換え電池は必ず用意し、さらには寒冷対策としてデジカメにはカイロを貼り付けておくくらいの周到な準備はしているところである。

何となく億劫な気持で歩いて行くうちに、徐々に目指す取付き地点が近づいてくる。取付きには桜野5号橋という橋が架かり、細い尾根の末端となっている。スキーにしようか、スノーシューにしようか、パーティはそんな空気であるが、とりあえずは木の少ない山とのことで、スキーを履いたまま登ってみることにする。細い尾根が台地状の広い尾根へと続き、広い尾根へ出るためには急登が待っているといった地形である。途中、植林によるトドマツ林があり、どこかに作業道、もしくは作業道跡が必ずあるはずとの話になる。昼でも薄暗い密度の濃いトドマツ林を抜けると、予測通り作業道終点が現れる。作業道を使えば簡単にここまでの到着は可能のようであるが、事前に林道地図でも入手しておかなければ、アプローチとしての林道利用は至難の業といえる。

作業道終点からは両側に立派なトドマツが林立する、まるで神社の参道のような歩道がしばらく続き、徐々に広く緩い斜面へと変わって行く。前方に一段高い台地状の尾根が現れ、その奥には目指す紋内岳頂上が現れる。いかにも厳冬期といった様相で、雪雲に霞んだその姿を見ているだけでも頂上の寒々しさが伝わって来そうでである。少々遠いようにも感じられるが、頂上付近の木々は意外に大きく見え、距離的にはそれほどでもないようだ。さすがに疲れ果てたのか、思ったように足が前へ出て行かない。この程度の冬山であれば、すべて自分でラッセルするくらいの気構えがあって然るべきだが、とても先頭を歩き続けるだけの自信はない。昨日の毛無山の後だから、疲れていて当然との思いが心に微妙なブレーキをかけているのかもしれない。

天候は好天予報に反して下降気味である。一段高い尾根へは左側から巻くようにルートが取られ、さらに高い740mポコヘと続いている。このポコを途中から巻いて直接コルに向かい、次の800mポコは足を取られながらもトラバース気味に進んで行く。尾根が細いこともあり、最後のコルへの急下降手前でスキーをデポすることになる。あとはいつものツボ足にて…と思っていたが、付近は意外な深雪で、予想以上に埋まってしまう。チロロ2さんから借りてきたスノーシューをザックに仕舞い込んでいることもあり、興味も加わり、これを使ってみることにする。この道具を使っての頂上直下の登高は全く予測していなかったが、履いてみるとスキーよりも遥かに軽く、しかも沈まないという利便性の高い道具であった。舳先がスキーのように曲がってはいるが、深雪斜面ではキックステップのように突き刺さり、階段状にも登ることができる。流行というものに対しては潜在的に嫌悪感を感じるが、食わず嫌いと言ってしまえばその通りなのかもしれない。流行っているだけの理由はあるものと、つくづく感心させられる。

頂上直下で再び気力切れとなる。さすがに、エネルギー不足によるものと判断し、菓子パン2つと残っていたチョコレート数個を口の中に押し込む。自己暗示によるものかもしれないが、何となく「さあ、登るぞ」と思えてくるから不思議である。頂上は正に厳冬期で、少ない積雪にも関わらず、道南のこの時期で…と思えるくらいの大きな雪庇が続いている。デジカメが死んでいることだけが何とも心残りである。一進一退といった天候の中、期待していた眺望は雪雲のために何も見えない。しかしながら、計画が無事に達成できたという安堵感だけでなく、充実できたことが素直に嬉しい紋内岳登頂である。

 下りはいつものツアー感覚が一気に戻ってくる。笹が飛び出しているために何度か転ぶが、この時期としては仕方のないところである。デジカメの不手際のみならず、すねが痛くなったり、靴ずれに悩まされたりで、あげくは借りてきたテルモスを休憩地点に置いてくるなど、何ひとつピリッとしないツアー山行であったが、半年間の錆びを落すには十分過ぎる7時間50分の山旅であった。(2008.1.3)

「一人歩きの北海道山紀行」sakagさんの山行記

【参考コースタイム】 除雪終点 P 6:50 → 桜野5号橋 8:00 → 頂上直下コル 11:00 紋内岳頂上 11:45 、〃発 11:50 → 頂上直下コル 12:10 →  桜野5号橋 13:55 除雪終点 P 14:55 (登山道ルート;上り4時間55分、下り3時間;sakagさんのコースタイムを参考)

  【メンバーsakagu@函館さん、Saさん、ko玉さん、saijyo

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