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    宮之浦岳(1935.0m) ・・・ 宮之浦岳コース〜縄文杉〜白谷雲水峡

  屋久島の日本百名山  

 

坊主岩付近から宮之浦岳(右)を望む
 

   

    

淀川小屋

北海道以外の山へ登るのはこの屋久島・宮之浦岳が始めてだった。新千歳〜大阪伊丹〜屋久島と飛行機を乗り継ぎ、屋久島到着は既に昼過ぎ、今夜の宿は登山口から約40分で到着できる淀川小屋である。付近には清流が流れており、水の確保には困らない。6月下旬ということもあって、暑くて寝苦しいだろうとシュラフカバーのみとしたが、結果的には少し寒いくらいで、持って行った冬用の下着やフリースを着込むことになる。

  

淀川の清流に掛かる登山道用の立派な橋

翌日、淀川小屋を出発してすぐに淀川に掛かる立派な橋を渡る。登山口から淀川小屋もそうだったが、どこか庭園の中にでも居るかのような立派さである。良くも悪くも北海道の山では考えられないほどの整備がなされている。

  

登山道は階段登りの連続

登山道なので必然的に登りの連続である。しかし、ここの場合はそのほとんどに階段が設置されており、登山者は階段の歩幅に合わせて登らなければならず、これもまた辛いものがある。

  

トーフ岩を頭に載せた高盤岳

しばらく登ると、頂上に巨岩を乗せた高盤岳が見えてくる。屋久島には同様の巨岩が多い。この山と黒味岳は見晴らしも良く、日帰り層には人気があるとのこと。

      

小花之江河は庭園のようなところ

花之江河から高盤岳を望む

小花之江河と花之江河、日本最南端の高層湿原とのことだが、さすがに植物を観察する時間がないのが残念なところ。ここは江戸時代末期から景勝地となっていたらしい(薩摩藩「三国名勝図会」)。ここから先、花崗岩のナメ床の流れの上に木道や階段が築かれたりしていて別の意味で面白い。この先からは総じて階段、木道の類は少なくなり、普通の登山道らしくなる。予算の問題かも?

  

投石山付近から見た往路

投石山近くの展望の良い大岩に休憩ポイントが設置されている(投石平)。この辺りから目指す宮之浦岳の山容が見えてくるが、その他にも山塊を形作っている数々の山々を望むことができ、つい登高欲がそそられる。できれば近い将来、これらの山々を登りに再訪したいものだ。なお、この付近での道迷いが多いとのこと。

  

いよいよ宮之浦岳が近づく

植生が大きく変わってヤクザサとシャクナゲが多くなる。北海道の根曲がり竹とは違って、背も低く素直な感じである。この頃から風雨が強まってくるが、雷鳴がないのが救いといえる。私は雨具のズボンを長靴の上に被せているので、足を全く濡らさずに行動できるのが良かった。北海道ではザックカバーを使ったことが無かったが、さすがにここでは必需品。空港でザックを預けた際に大きなビニール袋に入れてくれたが、Ko玉氏の助言でそれをもらってきたのが幸いした。

 

一等三角点「宮之浦岳」と金麦

登り詰めると頂上まで30mの標識、最後は意外にあっけない頂上到着となる。宮之浦岳は私にとって“内地の最初のピーク”で、高さこそ2000mをきっているが高度感は抜群で、大満足の一山といえる。強風とはいえ、気温は低くは無いないので快適。持参の金麦を一等三角点「宮之浦岳」に立てての記念の一枚。私にとって目的達成の瞬間だった。

 

宮之浦岳頂上からの展望(左から安房岳、投石岳、黒味岳)

頂上からは途中で見てきた山々が確認できる。どの山も巨岩を頂上に乗せている。この山域は花崗岩から成っていて花崗岩の持つ方状節理、たまねぎ状風化、表層節理などの要因によって巨岩、奇石が数多く見られるとのこと。今日の宿は新高塚小屋、先はまだまだ長いので、後ろ髪を引かれる思いで頂上を後にする。

 

平石付近から宮之浦岳を振り返る

頂上にヤクシカが居たらしいが、下りで彼?に追いつく。先を進むと逃げては行くが、横に避けてはくれず、困ってしまう。結局、笹薮へ入った瞬間にすぐ横を通過したが、北海道のエゾシカと違って警戒心があまりないようだ。このヤクシカだが、ニホンジカの固有亜種とのことで、成獣でもエゾシカのバンビほどの大きさしかない。下りは速く、平石付近までは見通しが良く快適に下ることができた。この頃から西の空に青空が見え始める。

 

北海道では見られないヒメシャラの大木

新高塚小屋への下り、見たことのない赤褐色のつるつるした樹皮を持つ樹木が数多く見られた。後で調べたところではヒメシャラ(姫沙羅)という日本特産種の樹木らしい。椿のような白い花が咲くとのこと。

 

新高塚小屋付近は整備されている

新高塚小屋付近に現れたヤクシカ

新高塚小屋の周りは広いデッキが整備されており、環境的には素晴らしい。飲み水を汲むことが出来るので快適である。到着後は晴れ間が広がり、濡れたものを少しだが乾かすことができた。夕方、三頭のヤクシカが付近のコケ類?を食べに訪れる。小屋の玄関の戸が外れやすく、けっこう苦労させられる。おそらく外したままにした登山者がいたのかもしれない。他の登山者は1人。縄文杉コースから登って来たそうだが、時間切れで宮之浦岳を見ることが出来なかったとのこと。夜中に寝ていると、ヤクシマヒメネズミが横でガサガサ。慌てて食料のナイロン袋をザックの中にしまった。玄関の戸はやはりこまめに閉める必要がある。そのままトイレに立つと満天の星。明日午前中は晴れ予想とのことで期待が膨らむ。気温は意外に低く、少し寒い感じ。

 

広いデッキに設置された縄文杉の案内板

下のデッキから見た縄文杉

一番近い地点から見た縄文杉

予想とは違って新高塚小屋を出る時には曇り空。歩いているうちに雨も降り出す。縄文杉までが意外と遠い。途中、高塚小屋を通過するが、ここまででも遠く感じられた。立派なデッキが現れるといよいよ縄文杉である。推定4000年以上の樹齢と言われているこの巨木は圧巻だ。保護のために十数メートルと離れて見なければならないが、大きさが違う。ここから先、続々と登山者が現れる。

  

名勝 ウイルソン株

縄文杉からは地元のガイドに案内された登山者? が続々と登って来る。中には雨天にも関わらずセブンイレブンで売っているような500円の雨具を身に着けての参加者も・・・ 履いてきた靴が壊れたとの訴えがあり、絆創膏で補修することにした。ここまでは10kmほど歩かなければならず、一般的に“観光”の範疇ではない。しかも大雨が降っている。自分が観光客だったら間違いなく止めるだろう。多くの団体さんとすれ違って行くうちに、大きな切り株が現れる。ウイルソン株である。豊臣秀吉の命によって切られたそうだが、こんな山奥からこの巨木をよく近畿地方まで運んだものだと思う。アメリカの植物学者アーネスト・ヘンリー・ウィルソンによって紹介されたのでこの名となったらしい。

   

木道が敷かれたトロッコ軌道は延々と続く

ウイルソン株を下るとトロッコ軌道となる。日本に残されている唯一の森林鉄道とのことだが、それを知らなかった私は気動車が現れてびっくりした。荒川登山口まで続くとのこと。実際に歩いた印象としては遠いの一語に尽きる。途中、白谷雲水峡への分岐を見落としたと思ったが、実際は想像したよりも遠かった。

 

白谷雲水峡入口の滝は増水していて大迫力

一度、森林軌道をそのまま進もうと考えただけに辻峠への登りが辛かった。雨も本降り、峠までが意外に遠い。他に登山者など居ない感じだが、後ろから1人だけ現れて、我々を抜いて行った。そうこうしているうちに庇となる大岩が現れて一息、そこからは再び観光客が多くなる。こんな雨降りにも関わらず、よく登って来るものと呆れてしまった。辻峠からは白谷雲水峡である。宮崎駿の「もののけ姫」の舞台となったところで、見所がいろいろあるようだが、カメラを出すのも面倒、撮ったのは最後の「飛龍落とし」のみだった。まあ、そのうちまた来ればよい。

梅雨の時期に計画された今回の宮之浦岳だったが、雨は降ってもうまい具合にその隙をつくことが出来た。一日どちらかにずれていれば豪雨に当たっていたことだろう。幸運にも恵まれた山行だったと思う。(2016.6.25〜28)

参考コースタイム】6/25 淀川登山口 P 17:00 → 淀川小屋 17:40  6/26 淀川小屋 8:00 花之江河 9:55 宮之浦岳頂上 13:05、〃発 13:10 新高塚小屋 16:00  6/27 新高塚小屋 6:50 縄文杉 7:50 ウイルソン株 9:25 白谷雲水峡 P 13:20   

メンバー】Ko玉氏、よねちゃん、saijyo

 

 

  

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