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      (982.9m) ・・・余市岳の派生尾根上の山

南岳頂上付近は樹林帯

  /25000地形図「余市岳」「無意根山」

コンタ610m付近に掛かる橋は渡れない
細くなったナメから無事渡渉
豊羽鉱山ゲート前に車を停める
途中、朽ちてきた鉱山の施設
この雪崩斜面を通過しなければならない
白井川本流の向こうには豊羽鉱山が見える

  札幌の最高峰である余市岳の派生尾根上には毒矢峰と南岳といった、地形図上では「山」の扱いとなった二つのピークがある。尾根上の単なる標高点と言ってしまえばそれまでであるが、私にとって登っていない札幌近郊のピークが少なくなってしまった現在、未知といえば大げさだが、貴重な存在であった。何度か計画したが、できれば春先の条件が良い時期に…との思いから、なかなか実行されることはなかった。今回はピークハンター・Ko玉氏との打ち合わせの中、皮肉なことに少雪である今シーズンの、しかも冬至のこの日に南岳を目指すことになる。名前の由来は判らないが、単に一等三角点「余市岳」の南側に位置する、点名「嶽南」によるものと思われる。

 南岳への入口となる豊羽鉱山は2006年3月に閉山となる。施設は現在も残っていて、一帯は部外者立入り禁止となっている。関係者等には申し訳ないが、今回は敷地内の道路を無許可で通過させてもらう。白井川本流沿いの点線で表された歩道は現在も存在しているが、かなり荒れた感じとなっている。特に、途中二ヶ所ほどであるが、斜面を横切るいわゆる雪崩斜面は、降雪後の通過は絶対に避けたいところだ。今回は十分な積雪ではないが、それでも雪のブロックが転がった形跡を多数確認する。白井川本流へは結構な高度感があり、このブロックの直撃でも受けようものならひとたまりもないだろう。

 コンタ610m二股に掛かる橋で進路を絶たれる。老朽化したこの橋は橋脚と錆びた主桁を残すのみで、十メートル以上はありそうな川面までの落差を考えると、これを通過する選択肢はありえない。沢底まで下って行き、渡渡できそうな地点を探すことにする。暖冬とはいってもこの時期に足を濡らすことは許されず、多少川幅があっても浅くなった地点はないものかと上流へと向う。一ヶ所、小さなナメ床を発見する。ラッキーなことに川幅も狭く、プラブーツでの渡渉も難なくクリアすることができる。川岸の急斜面をキックターンで登りきると対岸の林道へ飛び出す。この林道上には樹木が繁っていて、少なくても4〜5年は使われてはいないようだ。きっと途中の何処かで崩壊し、車が入れなくなり、そのまま荒廃してしまったのだろう。

 スキーで順調に標高を上げるが、すぐに潅木帯となり、あとはスノーシューやワカンの出番となる。もう少し積雪があれば、頂上までスキーが使えるところだが、今年は温暖化が進んでいるのか、本格的なスキーシーズンはもう少し先のようである。ワカンはキックステップが必要な春先の急斜面には優れているが、新雪のこの時期には簡単に沈み込んでしまうため、あまり効果的な道具とはいえない。スノーシューか、太いミニスキーのようなものの方が、沈みにくい分だけ有利である。先導するスノーシューの二人を尻目に、ワカンの私は騙しだましといった感じで、恐る恐る雪面を確かめるが、時々膝上まで沈んでしまい、脱出に難儀する。支稜線上からは、深く切れ落ちた白井川本流の先に、出発地点の豊羽鉱山が薄っすらと見える。

あと少しで頂上に到着 南岳頂上にて

 GPSで頂上までの距離を確かめると約200mほど先となっている。ふと見ると、先頭を行くKo玉氏はGPSが差し示す方向とは違った方向へと進んで行く。「Ko玉さん!ストップ…」、Ko玉氏を呼び止めるが、この方向で間違ってはいない!と、GPSによる私の言葉など、まるで聞く耳は持たないようである。しかし、アナログな地形図モードに立ち返ってルートを確認してみると、確かにKo玉氏の進む方向に間違いはない。結局、頂上へは180mの地点まで近づくが、そこより先では徐々に目的地への距離が増え始める。しかし、地形図と進路は一致している。自分の入力ミスだと納得するが、後で確かめたところ、復旧不能な故障であった。GPSは参考程度に…というのが一般的な見解だが、これは確かで、抜群に便利な機械であることには違いないが、こんな故障もあるということだけは考えておく必要がありそうだ。

GPSが指し示す地点を背に、さらに標高を上げると、前方に稜線と思われる高みが現れる。だれが見ても頂上である。尾根の途中といった感じではあるが、付近の最高地点であることは確かである。樹木の高いところには標識も付けられている。展望も何も無い単なる樹林帯の中で、三角点が埋められていることを除き、どこといった特徴はない。それでも正確なピーク登頂に拘るKo玉氏、三角点が雪の下ではいつもより念入りに地形図と現地を照合している。

 山というには今ひとつの頂上であったが、登る過程はいつもの山行であり、中途半端な時期のこの積雪状態を考えれば、まずまず充実することの出来る一日であった。(2008.12.21)

【参考コースタイム】豊羽鉱山・ゲート前 8:00 → 610m二股 8:50 →  南岳頂上 11:35、〃発 11:50 → 610m二股 13:15 →  豊羽鉱山・ゲート前 14:10  (登り 3時間35分、下り 2時間20分)

メンバー】 Ko玉氏、saijyo、チロロ2

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