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      三笠(593.7m)

地形図に山名が載っている三笠山

 1/25000地形図春別」

五の沢との分岐で施錠されている
路面はセメント状の泥で汚れている
稜線へは急な斜面を一登り

三笠市内には三笠山(観音山)という桜の名所がある。山とは言っても100m程度の丘に過ぎないが、奈良県の三笠山によく似ていることからこの名になったようである。1903年に幌内村、幾春別村、市来知村の一部が合併して三笠山村となり、その後、三笠山の「山」が取れて現在の「三笠」が誕生したそうだ。いずれにせよ、地名発祥の地という由緒ある山である。市内にはこの三笠山の他に、もう一つの三笠山がある。あまり一般的に有名ではないが、こちらは地形図上にも立派に山名が載っている。市街地の北側、美唄市との境界線上に位置し、山容の特徴として、三笠側は市街地から近いが急峻で、美唄側は緩やかだが奥深い。境山を訪れた4年前、対岸の山上に山肌を剥き出しにしながら延びている道路を見つけ、驚かされた記憶がある。後で調べたところ、この三笠山付近であることが判り、一度は踏んでみたいピークとなっていた。せっかくの休日をフルに使って出かけるには少々物足りないが、何かの山行が中止になったときの代替案としては格好の一山であった。今回、予定していた寿都・天狗岳が雨模様との予報で、この虎の子を使うことにする。

位置をずらすと境山が望まれる(手前は石炭の露天掘り現場)
位置をずらすと境山が見える (手前は石炭の露天掘り現場)

入山口は道々116号線沿いにある市立博物館の向い側、レストラン・ドミニカの小さな看板を目印に進む。そのまま進んでしまうと奔別側沿いの林道となってしまうが、奔別橋の手前で五の沢へと向う。この林道、入口では目立たぬが、進むにつれて立派になってくる。舗装工程の一歩手前といった感じで、五の沢との分岐で施錠されている。ゲート手前に車を置き、広い道路をテクテク歩くことにする。開放感のある広さは良いとして、雪解け水が道路いっぱいの泥を溶かした汚い路面には閉口させられる。正直なところ、ストックを地面に付けるのも遠慮したい感じである。ウイークデーにはダンプカーが頻繁に往来しているのか、粒の細かいセメント状の泥で、一度付着した泥は落すにもかなり苦労させられそうだ。しかし、辺りの雰囲気は休工日とあって、静かな春山の雰囲気そのものである。この道路、何の目的で造られているのかはよく判らないが、桂沢ダムの嵩上げ工事と共に進められている「三笠ぽんべつダム」建設との関連性をまず考える。だが、美唄との分水嶺に近いところまで登っていることもあり、ひょっとしたら美唄へ抜ける道路かもしれない。何れにせよ「道路特定財源」が取沙汰されている今の御時世、必要性はどの程度のものかとつい考えさせられる。後でさらに詳しく調べたところ、結局、石炭の露天掘りの現場へ向う道路であることが判った。石炭の層へ辿りつくまでには相当な土砂を取り除かなければならないようで、今のままの原油高が続いた場合、近い将来には山の形も変わってしまいそうだ。

コンタ360m付近で三笠山へ一番近いヘアピンカーブとなる。直接取付くには地形が険しすぎるため、少し進んだ沢地形から、まずは稜線を目指すことにする。ワカンを付け、急斜面にキックステップを刻む。道路から一歩入った途端、エゾシカの足跡が点々と続くいつもの春山が戻って来る。工事関係者のものなのか、ピンクテープが彼方此方に見られる。それにしても、春山の澄んだ空気、また朝方の冷え込みによる樹氷からの水滴が何とも心地よい。稜線はすぐそこであるが、傾斜はなかなかのものである。泥だらけの道路を眼下に眺めながら、頭上の澄んだ青空を目指し一歩一歩登って行く。最後は急な尾根筋を登り詰めて広々としたコルに到着する。美唄側は遠くに真白い平野が広がっている。付近は適度な疎林となっていて、テントを張ってビールでも飲み交わすには最高のロケーションである。何れ、仕事を退職して時間でも出来たなら、のんびりと山中一泊での三笠山も良いかもしれない。ここから頂上までは、1kmほどの稜線歩きとなる。

三笠山頂上は広く、疎林の中である 頂上手前のコブからヘアピンカーブを見る

稜線上は広く、アップダウンも少ない。時折、ワカンごと積雪に埋まりながらも快適に歩を進める。出来るだけコブを巻きながら進むが、スキーではないので帰路を考えての無理なトラバースは必要なさそうだ。少し進むと、左手に目指す三笠山が一段小高く見えてくる。遠く感じるが、硬雪の雪面歩きはさほど苦になるものではない。幾つかのアップダウンを繰り返し、最後のコルからは頂上手前のコブへの少し長い登りとなる。途中、下降ルートにはどうかと、このコブからヘアピンカーブまでの小尾根を観察、気持の中ではゴーサインである。コブから頂上までは約100m、緩い斜面を歩いて、疎林に囲まれた広い頂上となる。樹林に邪魔されて期待していたほどの展望は得られないが、位置をずらせば奔別岳や境山くらいは確認できる。どこにでもある頂上と言ってしまえばそれまでであるが、少なくても由緒ある三笠山よりは山らしく、こちらは知られざるピーク「三笠山」なんだというだけで、十分過ぎる満足感を感じる。

 下りはヘアピンカーブ手前の平らになったコンタを目指し、一気に小尾根の急斜面を下る。往路のトレースをおとなしく引き返すのが冬山のセオリであるが、雪面の締まり具合を考えれば、やはりこの手で下ることが山行の締め括りとして相応しいだろう。途中、小沢が入り込んでいることもあって、かなり急な下降となり、小沢から平らな地形までは逆に登り返しとなる。最後は意外にあっけなくどろどろの道路へ飛び出すが、泥道を歩きながらもいつもの薮山山行と少しも変わらぬ充実感を得ることができた。(2008.3.16)

【参考コースタイム】 五の沢出合ゲート P 8:20 稜線への取付き 9:15 → 三笠山頂上 10:15、〃発 11:10 → ヘアピンカーブ 11:55 五の沢出合ゲート P 12:30  (登山道ルート;上り1時間55分、下り1時間20分)

  【メンバーsaijyo、チロロ2

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